NASA(米国航空宇宙局)が本気で考えている、月や火星への移住計画。そこで人はどんな建物に居住するのか? いま進められているのが「キノコでできた家」です。
1ポンド(約0.45kg)の物を月に運ぶためには、100万ドル(約1億5000万円※)がかかると言われています。だからこそ、NASAの移住計画で検討されているのが、「現地にある物を使って」建設する方法。
※1ドル=約146円で換算(2024年10月4日現在)
そこで白羽の矢が立ったのが、キノコです。現地にある物だけで建設するとは言っても、月にある物は水と塵くらい。しかし、キノコのもととなる菌類なら、それだけでも十分に成長するそうです。そこで、月や火星で菌類を育てて、その素材を建材に利用しようと考えているのです。
実際、キノコの菌糸体を培養させて、代替レザーとしてファッションアイテムに活用する事例も生まれています。NASAと契約を締結した企業はキノコの菌糸体を使った取り組みを進めており、ナミビアで菌類をもとにした住宅建設と食料不足問題に対処するプログラムを実施しているのです。
現在、NASAとのプログラムでは、菌類でできたレンガ作りを行っているそう。月や火星の重力は地球よりはるかに小さいため、強度はあまり重要ではないと言います。むしろ建物内部の空気は建物の外側に押し出ようとする力が働くため、その圧力に耐えられる物が必要になるのだとか。そこで、さまざまな菌類や藻類を組み合わせて研究を進めています。
キノコの家のメリットは、地球からロケットを打ち上げて、重量のある建材を月や火星まで運ぶ必要がないことだけでなく、放射線から人を保護する働きや断熱性もあることだと言います。
地球上の実験ではそれなりの成果を見せているという、キノコの菌糸体でつくるレンガ。宇宙でおよそ30日~60日ほどで成長するものと考えられていますが、本当に宇宙空間でその通りに行くのかどうかは不明。予期せぬ課題が生まれる可能性は十分あると言われています。
まだ議論中ではあるものの、もしかしたらキノコの家には、キノコでできたベッドや家具も準備されるかもしれないそうです。
人類の知恵と技術を結集して進められている宇宙のキノコの家。その実現に期待が高まります。
【主な参考記事】
AI Jazeera. Growing mushroom houses on the moon? NASA’s fungus-filled plan. September 29 2024