6月19日の大阪城ホール大会で内藤哲也選手に見事勝利を収め、IWGPヘビー級王座の奪還に成功した新日本プロレスのオカダ・カズチカ。「新日本プロレスにカネの雨を降らせる」と語ったことから、「レインメーカー」の異名を持つ選手です。
オカダ選手は新日本プロレスのみならず、プロレス好きの間では知らぬ者がないほどの高い人気を誇っており、現在は、CHAOS(ケイオス)というユニットに所属。新日本の人気選手である棚橋弘至選手とは対立する立場に立っています。今回は、7月18日からスタートする夏の風物詩G1 CLIMAXを目前に控え、シリーズへの意気込み、プロレスへの思いをうかがいました!
プロレスが好きになったのはゲームがきっかけ
――まずは、オカダ選手とはどういう選手か読者に紹介するために、オカダ選手のプロレス史についてうかがっていきます。そもそもプロレスが好きになったきっかけはなんだったんですか?
オカダ 兄が借りてきたゲームがきっかけですね。まずそれにハマって、次にプロレスを見てみようってなったんです。それが13歳ぐらいでした。その後、テレ朝で夜中にやっているのを見つけて、それを録画して見るようになりました。ゲームの場合だとラリアットみたいな技しかないんですけど、テレビで見たジュニアの選手たちが華麗な技を繰り出していて、すごいなと思って。そこからハマっちゃいましたね。「こんなに大きい人がムーンサルト・プレスするんだ!」「こんなプロレスがあったんだ!」「なんて華麗なんだ!」って感動しましたね。
ーーオカダ選手は、中学を卒業してすぐ、闘龍門(メキシコの日本人プロレスラー養成学校)に入門して、メキシコ、アメリカと新日本以外の現場もいろいろと見てきていらっしゃいます。それらと比べて日本のプロレスならではの魅力はどこにあると思われますか。
オカダ どの国のプロレスもすごいとは思うんですけど、すべての要素を統合した戦いをしているところが日本だと思いますね。国が違えばプロレスも卓球とテニスぐらいの違いがあります。でも、いまは日本にいろんな国のレスラーが集まってきていますし、そういう意味で日本のプロレスはどこの国の人にでも対応できる王道なのかなと思いますね。
色々なカラーの選手が見られるのが新日本の魅力
ーー日本にも、新日本以外に数えられないぐらいのたくさんのプロレス団体がありますが、新日本プロレスが持つ魅力はどこにあると思われますか?
オカダ いろいろなスタイルの試合が見られるのが新日本ですね。グラウンドが得意な選手もいれば、空中殺法が得意な選手もいる。悪役もいるし、ベビーフェイスにコミカルな選手と、本当にいろんなカラーの選手がいる。戦い方もそうですし、いろいろなプロレスが見られる団体だなと思いますね。だから、一度見てもらえれば、誰かしら「この人いいな」っていう選手が出てくるんじゃないでしょうか。
ーー子どものファンも増えているみたいですね。ある会場でオカダ選手が入場したとき、大人だらけの会場で小学生の子どもが立ち上がって、レインメーカーのポーズを取ってたいたことがありました。
オカダ 確かに会場にも子どものお客さんが増えましたね。「オカダオカダ」って言われて、ギロッと見ると「オカダさん……」って言い直したりして(笑)。
単純に試合をしていることが楽しい
ーーちなみに、オカダ選手としては、プロレス界を背負っていくというような意識はあるんですか?
オカダ 「俺がなんとかしてやるぜ!」というのはないですね。自分が楽しかったらいいかなと。それが伝わってみんなが楽しんでくれたら、僕ももっと楽しくなって、そしたらプロレスもよくなるでしょ? という感じですね。
ーー具体的にどんなところに楽しさを感じてますか?
オカダ 単純に、試合をしていることが楽しいんですよ。試合して、お客さんにワーワー言ってもらうのも楽しいですし、僕が勝つことで立ち上がっている人とか見ると、「プロレスやっててよかったな」って思いますし。
自分の試合を見て「かっこいいな、オレ」と思うことも
ーーご自身の試合は映像でご覧になるんですか?
オカダ 勝とうが負けようが、自分の試合は見ますね。試合を見て反省をする気はまったくなくて。さっきの子どもの話もそうですけど、お客さんが入場して盛り上がってくれるのもうれしいし、自分が負けて、お客さんが喜ぶ姿を見て、「僕が負けてこんな喜ぶか」みたいに思うこともあります(笑)。でも、僕がそれだけ強いからこそ喜ぶわけじゃないですか。自分の映像を見て、「かっこいいな、オレ」とか思うこともありますから(笑)。そう思って、パッと鏡を見ると全然違う僕が写っていて、なんでこんなに違うんだろうって思いますね(笑)。いまでも休みの日でもゴロゴロしてたら、結局プロレスのDVD見ちゃうんですよ。いろいろな人の試合とか「おもしろいなあ」って見てしまいますし。だから単純にプロレスが好きなんでしょうね。
ーーやるほうも見るほうも、本当にプロレスを楽しんでらっしゃいますね。
オカダ そうですね。なんか、ちょっと恥ずかしいです(笑)。
観客に伝わらない技はしないのがポリシー
ーー自分のプロレスで、お客さんに「ここを注目してほしい」という部分はありますか?
オカダ 僕は基本的にお客さんに伝わらない技はしないというのがポリシー。どれだけ相手が痛くても、地味で「どこが効いてるの?」というような技はやらないようにしている。だから、どんな技でも「オーッ!」と言えるような、かつダメージを与える技を選んでいます。一番わかりやすいのはドロップキックかな。
ーーそういう戦い方をしていこうというのは、いつから意識するようになったんですか?
オカダ やっぱり2012年にアメリカから凱旋帰国をする前後ですね。帰ってきて、オカダはどんな技を出すんだろう? と思われていたときに「こんな技使うんだ!」って驚いてもらいたかった。そのために技を選ぼうと思っていましたね。
ーー完全にお客さん目線のプロレスですよね。
オカダ いまでも自分のプロレスを見ているっていうのは、そういうところがあるのかなと思います。お客さんだったらこういう技が見たいだろう? という感じですね。その点、僕のファイトスタイルは、メキシコのテイストもありますし、アメリカや日本のテイストも入っていてバリエーションに富んでいる。我ながら完璧じゃないかなと思います(笑)。でも、僕だけに限らず、いまはどんなプロレスにも対応できる選手が増えていますよね。そして、そういう人たちしかトップになれないんじゃないかと思います。
ーーオカダ選手もそういう人たちに追いつかれる可能性もあるわけですよね。
オカダ まあ、追いつけるような人材に入ってきて欲しいですよね。身長が高くて、かっこよくて。そんな人が入ってこられるような場所にしたいですよね。「プロレスってあんなに稼げるんだ」「あんなに人気者になれるんだ」という。プロ野球もサッカーもそうですけど、プロレスもそういうものにしたいなという思いはありますね。
世界一過酷なリーグ戦G1 CLIMAXへの思い
さて、7月からG1 CLIMAX26がいよいよ始まりますね。
オカダ 世界一過酷なリーグ戦ですよね。
ーー過去最長だった昨年に続いて、今年も7月18日から8月14日の両国国技館まで19大会ですからね。
オカダ 過酷ですよ。シングル戦とタッグ戦が交互にきますし、リーグ戦はもちろん負けられない戦いですし。全国を回るので、移動距離もありますし、気の抜ける瞬間がないですね。そのぶん、やっている最中は疲れを感じないんですが、終わってからドッと疲れが出るというか。G1を通していい結果を残したいというのはもちろんありますけど、完走できるかというのもありますね。
ーー昨年もケガで途中で欠場する選手もいましたし、あれだけ長いシリーズですと、そういった調整も重要になってきますよね。先日の棚橋弘至選手の取材でお話をうかがったら、G1復帰に向けて調整中で、「昨年に続いて連覇を狙う」とおっしゃってましたが。
オカダ あ、ホントですか。まあ、いまはケガでいないですからねえ。何とでも言っといてもらって、って感じですけど。
自分を見てもらえたらプロレスの楽しさがわかるはず
ーー2012年に凱旋帰国されて、いきなりG1で優勝され、その後は1年おきに勝っているので、この流れでいくと今年はオカダ選手じゃないか、ということになりますが。
オカダ でも、G1を優勝してるのはチャンピオンじゃないときなんですよね。でも、今年はベルトを巻いてのG1。2013年も2015年もそうでしたけど、やっぱり「チャンピオンは狙われる」ということは改めて思いましたね。負けられないというプレッシャーもありますし、G1で初めてプロレスを見る人の前で「チャンピオン負けてんじゃん!」と思われたくないですから。そういう重圧はあります。
――G1の雰囲気はいかがでしょうか?
オカダ いつもと違う雰囲気で、好きですね。みんながそれぞれ優勝者を予想して、会場で熱く応援してくれている。そういうなかで試合が出来る楽しさがあります。あと、全国各地を回るんで、プロレスを観るのが初めての人でも観に来てもらいやすい大会なんじゃないかな。
――それでは、最後に、読者にメッセージを!
オカダ G1もそうですが、テレビやネットで見るだけじゃなく、一度会場に足を運んでもらって雰囲気を楽しんでほしいですね。入場から試合、試合後のマイクまで、僕だけを見てもらえたら「プロレスって楽しいな」と思ってもらえるはず。ぜひ期待してください!
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新日本プロレス http://www.njpw.co.jp/