文房具
2017/2/27 19:00

これさえ使えば脱・“字が汚い族”! 文房具の達人が指南する「悪筆の理由」と必携の美文字グッズたち

“字が汚い人”と一口に言うが、実はそれぞれ悪筆の原因やタイプが違ったりする。

 

例えば、もともと字が汚いことをコンプレックスに感じている人は、それを隠したがる傾向がある。そういう繊細なタイプの人は、悪筆を隠すためにわざと早書きをする。これだけ早書きをすれば字が汚くてもしょうがない、という自分(と周囲)へのエクスキューズなのである。しかし、もちろん早書きのせいで悪筆はより汚くなり、本人はさらにそれを隠そうとしてまた雑に書く。悪筆スパイラルだ。

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また、“頭が良すぎて字が汚い”という人もいる。脳の思考スピードが速すぎるため、手がそれに追いつこうとして殴り書きになったり、崩れた字になってしまうのだ。いわゆる“手が追いついてない”状態である。

 

テレビでもお馴染み塾講師の林 修氏によると、「東京大学合格者のうち、トップグループは悪筆で、二番手グループは字がきれい」という傾向が見られるそうだが、おそらく彼らも脳と手の速度が噛み合ってないのだろう。

 

さて、ここまででひとつ、悪筆の大きな原因が見出せたことにお気づきだろうか。それは「筆記スピード」である。頭がよい人も繊細な人も、どちらも早書きが原因で字が汚くなっているのだ。

 

ということは、解決方法は簡単……というか当たり前の話で、字が汚い人はゆっくり丁寧に書くことを意識すればいいのだ。脳の速度に手が追いつかない人は、逆に筆記速度をわざと落とすことで、先に行き過ぎた思考が少しバックして戻ってくる時間が稼げる。シャイな人も、恥ずかしさをちょっと堪えて丁寧に書けば、普段よりはずっとマシな字になるはずだ。

↑大事なのは、とにかく意識して筆記スピードを落とすこと
↑大事なのは、とにかく意識して筆記スピードを落とすこと

 

その場合、一般的に「書きやすいペン」として評価の高いヌルヌル系低粘度油性インクのボールペンはNG。なめらか過ぎて意図せず早書きになってしまうし、ペン先のコントロールが効きにくいので丁寧に書きにくい。あれは字がきれいな人が使ってこそ価値があるタイプのペンなのだ。

 

じゃあ、我らのような“字が汚い族”はどういうペンを使えばマシな字が書けるのか? もちろん世の中には、ゆっくり丁寧に書くことに適したボールペンというのが存在するのだ。例えば、このあたりなんてどうだろうか。

 

適度にカリカリ! 自由に曲がる! 止まる!!

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三菱鉛筆 シグノRT-1/0.5mm、0.38mm、0.28mm(写真は0.38mm) 各162円

筆者がここ数年、汚い字がマシになるペンとして愛用しているのが三菱鉛筆のゲルインクボールペン「シグノ RT-1」だ。

 

ボール径のラインナップは0.5mm、0.38mm、0.28mmと極細方向に振られており、シリーズ通して程よくカリカリとした筆記感がある。そして、この適度なカリカリとした抵抗となめらかなゲルインキの組み合わせが、“丁寧に書く”ための筆記速度に向いているのだ。

↑わざとではなく、筆者は低粘度油性ボールペンを使うと本当にこんな感じの字になる。(比較用)
↑わざとではなく、筆者は低粘度油性ボールペンを使うと本当にこんな感じの字になる(比較用)
↑シグノRT-1を使用した筆記。少なくとも、ちゃんと読める字にはなっている
↑シグノRT-1を使用した筆記。少なくとも、ちゃんと読める字にはなっている

 

RT-1の特筆すべきポイントは、チップ先端(ペン先とボールの接点)の角を落としたエッジレスチップ。このチップにより、ペンを寝かせ気味にして書いても、紙に引っかかったガリッという不快な手触りと線のカスレが軽減される。実際にはごく微妙な差なのだが、しばらく使っているうちに「あっ、なんかいつものペンより動かせる範囲が広い!」と感じる瞬間がくるはずだ。

↑ペン先の拡大。比較すると、RT-1はボールとチップ先端の境目に段差がなく、なめらかになっているのがわかる
↑ペン先の拡大。比較すると、RT-1はボールとチップ先端の境目に段差がなく、なめらかになっているのがわかる

 

この自由度の高さ=ペン先のコントロール性の高さであり、車を例に挙げると「思った通りに曲がり、思った通りに止まる」といった感じ。1ランク上のタイヤを履いたのに近い操作性なのだ。思った通りにペン先が動くということは、きれいな字をイメージしながら丁寧に書けば、ある程度はマシな字が書けるということ(一気に美文字になるとはさすがに断言できないが……)。

 

また、先端近くまで一体となったラバーグリップは、ペン先を大きく動かしても指がずれにくく、しっかりホールドできるようになっている。これもペンのコントロール性に一役買っているようだ。まさしく、“字が汚い族”必携の一本といえるだろう。

 

いいとこ取りチップで極細でも快適な書き味

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パイロット Juice up/0.4mm、0.3mm(写真は0.3mm) 各216円

RT-1と同じく特殊なチップを備えているのが、パイロットの最新ゲルインクボールペン「ジュースアップ」だ。ボール径は0.4mm、0.3mmとこちらも極細寄り。そして、ウワサの特殊なチップというのが、従来のチップ2つのいいところを併せ持つシナジーチップである。

 

一般的なボールペンのペン先と言えば、インクの出が良く筆圧をかけても壊れにくい三角錐型コーンチップと、針のようなパイプ型で細い字を書きやすいパイプチップの2種類。シナジーチップは、その二つのメリットを併せ持つように作られている。

↑特殊な形状のシナジーチップ。確かに、コーンチップとパイプチップが合体した感じだ
↑特殊な形状のシナジーチップ。確かに、コーンチップとパイプチップが合体した感じ

 

実際に見てみると、確かに軸から途中までがコーン型で、先端だけが細いパイプになっている。この「ペン先悪魔合体」によって、細くても頑丈(従来パイプチップの2倍の強度)でインクも良く出る、理想的なペン先となったのだ。

 

従来、0.3mmともなると「細い」というより「鋭い」と感じるほどのもので、紙との抵抗も相当なものになる。ところが、シナジーチップはパイプの先端を丸めてあるため、RT-1と同様に不快な引っかかりが減っている。細くて程よくカリカリだけどなめらか、という丁寧筆記に最適なバランスで、これなら気持ち良くゆっくりと書き流さずに字が書けるはずだ。

↑これが0.3mmとは信じられない、気持ち良いなめらかさ
↑これが0.3mmとは信じられない、気持ち良いなめらかさ

 

ただ、インク流量の多さでなめらかさを出しているせいか、0.4mmタイプは紙によっては水性インキのようなにじみを感じることがある(0.3mmタイプはあまりにじまない)。もちろん、その分だけ書き味はスルッとなめらか寄りになっているので、買う時は必ず0.3mmと0.4mmを試し書きして、自分の好みを確認した方が良いだろう。

 

ペンじゃないけど一本は持っておきたい美文字筆ペン

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パイロット 筆まかせ/細字・極細(写真は極細) 各216円

ボールペンではないが日常的な筆記に使っても便利、かつ丁寧筆記に向いているのがここ数年でラインナップが増えた極細・硬筆タイプの筆ペン。なかでも、筆記感が硬くて普段使いしやすい点でオススメなのがパイロット「筆まかせ 極細」だ。

 

筆ペンといってもチップは樹脂でできており、どちらかというとサインペンに近い筆記感がある。とはいえ、筆ペンなりのトメ・ハネ・ハライがきちんとできる“しなり”はあるので、丁寧に書けばそれなりに読みやすい字になってくれる。

↑しなりのある樹脂製チップ。極細でも筆圧をかけると筆ペンらしい字が書ける
↑しなりのある樹脂製チップ。極細でも筆圧をかけると筆ペンらしい字が書ける

 

筆記感は樹脂チップ独特のキュキュッとしたひっかかりがあり、なめらかにさらさら書くよりも、一画ずつ確かめるように書いていくのに向いているようだ。

↑筆よりもチップにコシがあるため、筆ペンに慣れていない人でも使いやすい
↑筆よりもチップにコシがあるため、筆ペンに慣れていない人でも使いやすい

 

突然にハガキの宛名書きをすることになったり書名を求められたときにも使えるので、“字が汚い族”の筆箱にも1本ぐらい入れておくと良いかも知れない。