【きだてたく文房具レビュー】書類をスッキリしっかり綴じる日陰の文房具
複数ページにわたる書類の束を、バラけないようにまとめるために使う文房具。と聞いてまず想像するものってなんだろうか。
だいたい、まず浮かぶのはステープラー(ホチキス)だろう。枚数が少なければ、針なしタイプのステープラーを選ぶこともあるだろう。あとはクリップとか、もしかしたら、穴を空けて綴り紐で、というオールディーズな人もいるかもしれない。
で、ここまで来てもまだ出てこないのが、ガチャックという選択肢だ。
そもそも、ガチャックという道具を知らない人も多いだろう。OHTO(オート)から発売されている連射式クリップで、なんと1981年から現在まで販売されているロングセラーである。
本体に“ガチャ玉”と呼ばれる金属クリップを装填し、本体先端を紙束の端に押し当ててスライドをガチャッと押し出すと、ガチャ玉が自身の弾性で紙を挟み留めるというシンプルな道具だ。
ステープラーと違って紙に穴も開けず、さらにガチャ玉は外せば何度でも再利用が可能。コピー用紙なら最大で60枚(大ガチャ玉)まで留められるという優れた性能を持っている。
……なのに、マイナー。愛用者はいるにも関わらず、知名度はどうも低い。なぜかというと、「これ、すごく使いやすいよ!」とはどうしてもオススメしにくいポイントがいくつかあったからなのだ。
しかし、なんとつい先日、ガチャック発売以来の大改革とまで思えるリニューアルを果たした、新製品が発売されたのである! これなら「ガチャック、便利だよ!」と胸を張って言えると感じたので、こちらで紹介したい。
そのリニューアルしたガチャックとは、「3WAY ガチャック」。これが従来品の不便さをしっかりクリアしてくれた、まさにオススメのガチャックなのだ。
3タイプのガチャ玉が全部使える!
まず、名前の3WAYとは、3種類のガチャ玉が装填できるということ。
従来のガチャックには、紙を20枚まで留められる小ガチャ玉、40枚用の中ガチャ玉、60枚用の大ガチャ玉があったのだが、それぞれのサイズに専用の射出器が必要だったのである。いつも20枚以下しか紙を留めない、と決まっていれば小ガチャ玉と小ガチャック本体を用意しておけばいいが、たまに30枚ぐらい留める必要が出た時には何の対応もできなかった……(これはステープラーも同様だけれど)。
対して3WAYガチャックは、本体と同時に発売された新しい20枚用の薄玉、40枚用の中玉、60枚用の厚玉の3種類が全部装填可能。枚数が変わったら玉を入れ換えるだけで対応できるようになったのだ。
なにより、この3WAYガチャックと同時に発売となった薄玉・厚玉が、中玉とサイズを揃えてくれたのが非常にありがたい。
筆者が個人的に使用頻度の高かった20枚用の小ガチャ玉は、幅13㎜・厚さ3㎜とかなり小さい。つまむとたまにポロポロと取りこぼして、なかなか面倒だったのだ。
新しい薄玉は幅16㎜と中玉に揃えてくれたおかげで、かなり扱いがしやすくなったのである。特に指先が荒れがちな冬場は、かなりラクだ。
バネ式ローディングで連続使用がラク!
従来ガチャックは、中に装填したガチャ玉を押し出すのに、重力を使用していた。というと聞こえはいいかもしれないが、要するに、使う度に本体を下に向けてガチャ玉を本体先端まで落としてやる必要があったのだ。
これが意外と面倒で、何十部という束を連続して留めようとした時は、本体をずっと下向きにして使うか、一部留めるたびに手首をひねって下に向けて戻す、ということが必要だった。また、たまに玉が落ちてこない時は本体をゆすったり、スライダーを少し動かしたり、といったコツが必要だった。
3WAYガチャックは、装填した玉を後ろからバネで押し進める方式に進化したため、上向きで使っても、常に玉が先端に自動でロードされるようになった。
これが作業のリズムを重力ローディングに狂わされることがなくなり、ものすごく快適なのだ。常にガンガンと玉が出るので、作業効率もかなり高い。これなら、始めて使う人が「ステープラーの代わりにこれで紙を留めて」と渡されても、何の迷いもなく作業ができるはずだ。
装填方法は良くも悪くも
3WAYガチャックは、先の通りバネ式ローディング機構のため、玉の装填が少し面倒になった。
まずボディをガバッと開き、後端にある投入口から玉をすべり込ませていく。必要な分だけ入れたら、ボディを閉じると自動で玉が先端まで送られて、使用可能となるという仕組み。装填できる玉数が8個と少ないガチャックは、ステープラーよりも頻繁に装填作業が発生する。いちいちボディを開いて玉をこめて……というのはちょっと面倒だ。
従来ガチャックはボディの後端にスリットが開いており、ここから玉を押し込んでやるだけ。装填スピードはあきらかにこちらの方が速い。ただ、押し込む時はグッと強めに押す必要があるため、慣れていないとなかなかやりにくい。また小ガチャ玉はスリットが小さいため爪で押し込むことになるのだが、女性など爪を伸ばしている人には難しいだろう。
そういう点では、3WAYの方が全般的に手間は増えたけど、装填作業そのものはやりやすい、ということになるだろうか。後端からガンガン押し込む従来式に馴染んでいる身としては、ボディをいちいち開けるのはちょっと面倒だが、それでもバネ式ローディングのラクさを思えば仕方ないかな、という感じ。
あと一点、厚玉・薄玉とも、大ガチャ玉・小ガチャ玉と比較して紙を留める力がわずかに弱くなっているように感じた。もちろん薄・厚とも必要充分なグリップ力はあるので、使っている最中に紙束からスポッと抜けるようなことはないのだが、そこは少し気になったところだ。
【著者プロフィール】
きだてたく
最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。