【きだてたく文房具レビュー】極薄コートがキモベタベタを寄せ付けないはさみ
はさみでガムテープやセロハンテープを切るとき、その切れたテープの端がはさみの刃先にくっついて、イラッとした記憶はないだろうか? いちいち引っ張って剥がさないといけないので面倒くさいし、剥がそうとした瞬間にテープ同士がくっついてしまうこともあるしで、なかなかに困るのだ。
しかも、それが「テープの粘着材が刃につきにくい」を謳っているフッ素コート刃のはさみだったりしたら、イラ立ちはなおさらだ。「おまえ、くっつかへんのがウリちゃうんか!」と声を荒げたくもなるだろう。
ただ、誤解しないでいただきたい。そのフッ素コートは「テープ類を切っても刃にネチャッとした粘着剤が残りにくいので、切れ味が長持ちしますよ」というものであって、切ったテープが刃にくっつかないことを保証しているのではないのだ。
もちろんそれも、切れ味の持続という意味では充分に効果的なんだけど、でも、なんとなく釈然としない気持ちになるのは分かる。結局くっついてるじゃん!というような話だし。
ところが、最近ちょっとすごいはさみが発売されたのだ。
粘着テープがスルリと切れる脅威の非粘着はさみ
林刃物の「パーフェクトバリア」は、テープが本当に刃にくっつかず、切った瞬間にスルッと取れるのである。
どういう理屈でテープが刃につかないかは後で説明するとして、まずは実際に従来のフッ素コートはさみとパーフェクトバリアで、テープの切り比べをしてみた。結果は下の写真の通り、見事なまでにハッキリと差が出ている。
フッ素コートはさみは、切って刃を開く瞬間にネチャッとした感触があり、案の定ベタベタとテープが刃にまとわりついてしまう。対してパーフェクトバリアは、何の違和感もなくサクッと切れて、スッとテープから刃が離れる。体感として、ガムテープが普通の紙とほとんど変わらないように切れるのだ。
どうしてこんなに差が出るかというと、非粘着コート膜の厚みとコーティングの場所が違うからなのである。
これまでのフッ素コートは、だいたい刃にコーティングされたフッ素の膜の厚みが数十ミクロンほど。対してパーフェクトバリアの特殊コートは、1~3ミクロンと非常に薄くなっている。
粘着を防ぐコート膜は厚い方がいいんじゃない? と思うかもしれない。だが、数十ミクロンもの厚さの膜で刃先まで覆うと切れなくなってしまうのだ。
そこで従来のフッ素コートはさみは、全体にフッ素コーティングを施したあとに、刃先だけそのコート膜を剥がして刃付け(刃の研ぎ出し)を行うことになる。つまり、実はフッ素コートはさみの刃先はコーティングがされていない状態なのである。
一方のパーフェクトバリアはコート膜が薄いので、先に刃付けをしたあとにコーティングしても問題なく切ることができる。刃先まで非粘着のコート膜で覆われたままなので、テープを切ってもくっつかない、という仕組みなのだ。
ただしコート膜が薄いということはそれだけ繊細ということでもあるので、使い方とケアには注意が必要だ。
あまり硬いものを切るのは避けて(これは普通のフッ素コートはさみも同様だけど)、もし汚れがついてもアルコールやシンナーで拭き取るのはNG。メーカーによれば、ガムテープを輪に丸めたもので、刃全体をトントンと軽く叩いて汚れを剥ぎ取ってやるぐらいで、充分なのだそうだ。
さて、はさみで切るときにくっついて面倒といえば、湿布や医療用のサージカルテープも同様だろう。筆者は重度の腰痛持ちなので湿布が手放せないのだが、市販の湿布は大きすぎるので、使用時には半分にカットして使うことが多い。それが、普通のはさみだと刃にベタベタとまとわりついて切りにくいし、剥がそうとしたら薬剤面がくっつきあって湿布をまるまる無駄にすることも……アレ、本当にイライラする。
しかしパーフェクトバリアならあのベタベタ湿布もサクッと切れて、スッと取れるのだ。おおおー、超快適!
実はパーフェクトバリアと同じ製品が、商品名だけ「サージカルテープ・湿布切りはさみ」に変えて医療用はさみとして販売されているぐらいだ。日常的に湿布にお世話になっている人なら、もう絶対に買っとけ! とおすすめしたい。