いま、グルメ界では街中華や辺境中華(雲南、山西、新疆ウイグルなどの地方調理)がジワジワ盛り上がっています。それに合わせたいお酒といえば、青島ビールや紹興酒などの中国酒が挙がりますが、「杏露酒」(しんるちゅう)も見逃せません。
杏露酒は甘さがあるので料理との相性はどうかと思いきや、飲み方次第で絶妙な食中酒になるのも魅力。しかも今年は発売50周年ということで新商品が発売され、その発表会で多彩なアレンジを試してきました。歴史や組み合わせの妙、そして新作の特徴もレポートしたいと思います。
日本人に合う中国酒として半世紀前に誕生
50周年を迎えた定番ではあるものの、その来歴について知られていないことも少なくないでしょう。杏露酒は中国からの輸入酒ではなく、“日本人に合う中国酒”というコンセプトで、現在キリングループである永昌源が開発しました。着目したのは、中国の果物を使うこと。
一方、当時はまだ女性が気軽にお酒を飲める時代ではなかったのですが、より幅広く、女性も楽しめるような中国酒の入門になるようにという思いから、あんずが採用されることに。その甘酸っぱい風味を凝縮するとともにはちみつを効かせ、濃密な味に仕上げたのです。
ネーミングの決定にも紆余曲折があったとか。高度経済成長期であった当時はレジャーブームで、海外文化への憧憬も強かったことから横文字が人気でした。アイデアとしては「アプリコット」や「フィズ」といった案もあったそうです。ただ、“他社が絶対マネできない中国酒メーカー”としての矜持から、“あんずのつゆ”を漢字で書いた杏露酒がファイナリストに。この清々しさと「しんるちゅう」という美しい響きに、中味と商品イメージが完全一致したことから最終決定したそうです。