長年、研究所の施設の中に閉じ込められていたチンパンジーが、屋外に出て初めて空を見上げ、感極まる表情を見せている動画が米国で公開され、話題となっています。このチンパンジーに何があったのでしょうか?
「バニラ」と名付けられた、28歳のチンパンジー。バニラは幼いとき、ニューヨークにある生物研究施設で小さなおりの中で暮らしていました。1995年にはカリフォルニアに移送されましたが、移送先の施設でも屋内のおりの中にいたとのこと。この施設の閉鎖に伴い、最近フロリダに移送され、チンパンジーのグループの一員に加わることになったのです。
そんなバニラがフロリダの新しい家で、初めて外に出てくる様子が動画に収められています。それを見ると、他のチンパンジーと抱き合っていたバニラがふと目線を上げ、空に気づくと、両目でしっかりと空を捉えながら、驚くような表情を見せたのです。一瞬、全ての動きを止めて空に見入る姿は、空の美しさに心を奪われているかのよう。この様子を米国の現地メディアは「畏怖の念を抱いていた」と表現しています。
その後もバニラは歩きながら、何度もチラチラと空を見上げていました。おそらく20年以上もの長い間、人工的なものに囲まれた空間にいたバニラにとって空はとても不思議で、なんとも言えない魅力にあふれていると感じさせるものだったのかもしれません。
米国では2015年にチンパンジーの医学研究が違法になるまで、バニラがいたような研究施設があったそう。それらの施設で飼育されていた何十頭にもなるチンパンジーの新たなすみかを見つけるのは困難で、保護団体などがその支援を行っているとのこと。
バニラの感動した様子を捉えた一方、今回の動画は、人間の研究のために多くの動物が犠牲になってきたことや、それによって動物本来の暮らしや自由を奪っているという悲しい現実を私たちに伝えています。
【主な参考記事】
CBS News. Chimpanzee caged for 28 years “in awe” after seeing sky. June 28 2023
USA Today. A 28-year-old chimpanzee was caged her entire life. Watch her see the sky for first time. June 28 2023