2023年10月1日、3年ぶりの酒税法改正でビール飲料、「ビール」「発泡酒」「新ジャンル(第三のビール)」の価格差がいっそう小さくなりました。何がどうなったのかという詳細は先日公開した記事を読んでいただきたいところですが、この記事では大手ビールメーカー各社が同タイミングで新発売する旬な6銘柄を、一挙にテイスティング。ぜひ、購入する際の参考にしてください。
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サントリーの「PSB黒」は香りもコクも十分なウマさ
発売日順に紹介していきましょう。まずは10月3日発売の、サントリー「パーフェクトサントリービール〈黒〉」から。こちらは、2021年4月にデビューした「パーフェクトサントリービール」(しばしばPSBと略されます)の黒ビール版。“日本初の糖質ゼロ黒ビール”をうたう限定品で、黒ビールに期待される飲みごたえを叶えるべく、麦芽とホップの配合や醸造条件にこだわったそうです。
香りは糖質ありの黒ビールそのもの。ロースト麦芽の香ばしさとコク、甘みも十分にあって、糖質ゼロの違和感はありません。ライトテイストではありますが、軽快な味はキレや爽快感につながっていて、PSBのファンなら大歓迎なおいしさだと思います。
なお、通常のPSBはアルコール度数5.5%で黒は5%ですが、同ブランドらしい飲みごたえは共通。黒ビールが好きな人の、新たな選択肢といえるでしょう。
キリン一番搾りの「やわらか仕立て」は麦汁の甘みが豊か
キリンビールの新作は2銘柄あり、まず紹介するのは「キリン一番搾り やわらか仕立て」。おなじみ「キリン一番搾り」のエクステンションとなり、数年前に発売された「一番搾り 小麦のうまみ」を進化させた商品です。
特徴は、原材料の一部に小麦麦芽を使っていること。小麦麦芽は「白ビール」といわれるビアスタイルに頻用されますが、その特徴はやわらかな飲み口や甘み。「キリン一番搾り やわらか仕立て」では一部使用に留まりますが、まろやかさや甘やかなうまみは確かに豊かで、泡もクリーミー。それでいて一番搾りらしさも感じるハイクオリティな仕上がりです。
特に小麦の甘みが相まって、「キリン一番搾り」ブランド最大のウリである麦汁のうまみがたっぷり。それでいて後口は軽やかで、好バランスな飲みやすいビールだといえるでしょう。
アサヒの「ドライクリスタル」は繊細ながら芯のある爽快感
アサヒもビッグネームのエクステンションで真っ向勝負。海外の酒類市場で伸長しているアルコール度数0~3.5%のカテゴリーに着目した、「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」を発売します。
その特徴は、アルコール度数3.5%のライトなボディと、冷涼感に優れたドイツ産ホップ「ポラリス」の一部使用。飲んだ第一印象は、「ゴクゴクッ……プハァッ」がよく似合うシャキシャキの爽快感。繊細な味わいながら、麦のうまみや苦みといった味の芯はあり、欧米やアジア圏の低アルライトビールとの違いも、この“大和魂”にあると感じました。
「アサヒスーパードライ」ブランド特有の辛口な味わいやシャープなキレもあり、食事とも幅広く合いそう。ドライ党の人はぜひお試しを。
「ヱビスオランジェ」は明るい甘みとソフトな酸味が上品
ヱビスはサッポロビールが手掛けるブランドですが、その新しいラインが「CREATIVE BREW」。2023年2月に発売された第1弾の「ヱビス ニューオリジン」に続く「ヱビス オランジェ」が、今秋デビューします。
一番の特徴は、オレンジピールを使っていること。ヱビスはドイツのビール純粋令にある「麦芽、ホップ、水、酵母のみを原料とする」に則るブランドですが、「CREATIVE BREW」では純粋令にとらわれず冒険していくということでしょう。小麦麦芽も使っており、明るい甘みとやわらかな酸味が上品に華やぎます。
オレンジピールはベルギーで有名な白ビールに欠かせない素材ですが、「ヱビス オランジェ」は白ビールとはかなり違う方向性。味わいにもどっしりとしたうまみとコクがふくよかに感じられ、ヱビスらしさもしっかり。この個性は、クラフトビールファンにもオススメです。
サッポロの「ナナマル」はたくましさがある“細マッチョ”な味
次もサッポロの冒険心あふれる新作、「サッポロ生ビール ナナマル」です。特徴は、糖質とプリン体の70%オフ。こういった機能系は発泡酒や新ジャンルでは珍しくなかったのですが、実はビールでは存在しませんでした。ということで本商品は、糖質とプリン体の2つのオフを訴求する日本初のビールです。
味を表現するなら細マッチョ、といったところ。すっきりしていながらもたくましく、うまみやコクもガリガリにそぎ落とされてはいません。苦味、キレ、爽快感もしっかり主張し、飲みごたえも十分です。
ありそうでなかった、オフで提案するビール。選択肢の幅が広がって、消費者にとってはうれしいところです。ぜひ、糖質ゼロのビールとも飲み比べてみてください。
キリンのクラフトビールは絶妙なビター感と温かみのある柑橘感
ラストはキリンが手掛けるクラフトビールブランド「スプリングバレー」の新作「SPRING VALLEY JAPAN ALE<香>」。自社で品種開発した2つの日本産ホップ「MURAKAMI SEVEN」と「IBUKI」を一部使い、柑橘を思わせる爽やかな香りが広がる味に仕上げています。
どっしりとしたコクの先に広がる、甘さを含んだ酸味とやわらかい口当たり。ホップの苦味は爽やかな余韻を生み、柑橘のニュアンスはみかんやオレンジといった温かみのある方向性です。
ホップの生かし方はさすがにクラフトビール。アロマティックな香りに加え、ビターなエッジがしっかりありつつ、やりすぎない絶妙な苦さもいいですね。クラフトビールとしては価格も値ごろであり、入門にもオススメです。
食の秋だからこそ旬なビールを楽しもう
6本の新作ビールを紹介しましたが、どれも似たような味のビールではなく個性がバラバラなのも面白いところです。グルメの秋、ぜひ晩酌やパーティーでご馳走と一緒に、旬のビールを楽しんでください!