「北のガラパゴス」といわれるアラスカの小さな島で、いまある騒動が起きています。それは、1匹のネズミが現れたこと。6月に発見されてから、もう3か月間も島をあげて行方を追っているのです。
人口わずか350人のセントポール島。アラスカの一部ですが、アラスカ州の州都であるアンカレッジからは飛行機で4時間もかかる距離にあり、アラスカとロシアに挟まれた大海原にぽつんと存在する島です。
そんな「北のガラパゴス」で6月、1匹のネズミの姿が確認されました。今でもその捜索を続けているのは、この島にもともとネズミが存在しなかったから。6月に見つかったネズミは、飛行機や船にまぎれて島に運ばれてしまったと考えられます。
なぜネズミ1匹で大騒ぎしているのか? その理由は、たった1匹であっても、これまで生息していない生き物を島に侵入させてしまうと、この島の生態系を大きく変えてしまう可能性があるからです。
例えば、その影響は海鳥に及びます。ネズミが繁殖してその数を増やしていったら、海鳥の卵やヒナ、最悪の場合は成鳥さえ食べられかねません。実際、ネズミが生息していなかった島にネズミが持ち込まれ、海鳥の数が激減した島は世界中にあるのだとか。
ネズミが島中に増えていったら、その駆除には億単位のコストがかかるうえ、一度減ってしまった海鳥の個体数を回復させるには、数年かかるとも言われています。そのため、島中であらゆる罠やが仕掛けられ捕獲大作戦が決行されているのです。
ちなみに、9月上旬に米ニューメキシコ州でも似たような騒動が起きています。このときは、国立公園になっているカールズバッド洞窟で、スナック菓子の持ち込みが禁止されているのに、観光客が持ち込んで食べた袋を洞窟内に捨てたというのです。
米国立公園局は「スナック菓子の小さなかけらであっても、洞窟内の独自の生態系を一変させる可能性がある」と警告。洞窟の表面に落ちた菓子くずやカビの除去に20分をかけて、徹底的に撤去・清掃作業が行われました。
先に紹介したセントポール島では、空港にネズミの侵入対策のための警備システムが備えられていますが、2018年にも1匹のネズミがすり抜けて島に侵入したことがありました。そのときは10か月もの間、罠から逃れ、最終的には死んでいるのが確認されています。今回のネズミも、数が増えてしまう前に、なんとか捕獲され、この生態系に影響が及ばないことを望みたいものです。
【主な参考記事】
New York Post. Tiny Alaskan island in panic over possible rat sighting — which could spark disastrous chain reaction in their ecosystem. September 24 2024
Ther Guardian. US cave system’s bats and insects face existential threat: discarded Cheetos. September 10 2024