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ヘッドホン
2018/2/20 19:00

【速報レビュー】ソニーの超定番ヘッドホンがリニューアル! 「MDR-1AM2」をウォークマンとXperiaで試してみた

ソニーからハイレゾ対応のポータブルヘッドホン「MDR-1AM2」が3月10日に発売されます。実売予想価格は3万円前後。カラーはブラックとシルバーの2色が用意されます。

 

今回は2012年に誕生した大ヒットモデル「MDR-1R」の系譜に連なるこの銘機の実力を、2回のレポートに渡って様々な角度から紹介したいと思います。第1回目のレポートでは、MDR-1AM2とハイレゾ対応のポータブルオーディオプレーヤー“ウォークマン”「NW-ZX300」や「Xperia XZ1」につないで実力を検証してみました。

↑ソニーのハイレゾ対応ポータブルヘッドホン最新モデル「MDR-1AM2」。2014年発売のMDR-1Aから約3年半ぶりのアップデートを遂げた
↑ソニーのハイレゾ対応ポータブルヘッドホン最新モデル「MDR-1AM2」。2014年発売のMDR-1Aから約3年半ぶりのアップデートを遂げた

 

定番ヘッドホンがリニューアル

ソニーはノイズキャンセリング対応のBluetoothワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM2」や、ホームリスニングをメインに想定したフラグシップ“Signature”シリーズ「MDR-Z1R」など、ハイレゾ対応のヘッドホンに多彩なラインナップを揃えています。今年の3月に発売されるMDR-1AM2はポータブルオーディオプレーヤーやスマホと組み合わせればアウトドアでの音楽リスニングに活躍するだけでなく、室内でのオーディオ・ビジュアルコンテンツの鑑賞にも最適なオールラウンダー。ハイレゾ対応のプレミアムモデルながら、本体が軽量・コンパクトなので“ポータブルヘッドホン”と呼んでも差し支えないモデルです。

 

本機の原型となるハイレゾ対応ポータブルヘッドホンのMDR-1Rは、まだポータブルオーディオでハイレゾを聴くための製品やコンテンツが現在ほど充実していなかった2012年10月に発売されました。価格は30975円(税込)。“3万円のヘッドホン”と聞くと、ちょっと高いなと感じる方もいるかもしれませんが、ハイレゾというキーワードにピンと来る人がまだ少なかった頃にも関わらずMDR-1Rは今も銘機として語り継がれるほどのヒットモデルになりました。理由は色々と考えられると思いますが、敢えて大きな3つの要因を挙げるとすれば「音質」「機能性」「ポータビリティ」が優れていたことではないでしょうか。そのMDR-1RのDNAが、最新モデルのMDR-1AM2にどのような形で受け継がれているのでしょうか。

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↑MDR-1R

 

バランス接続でいい音を満喫

「音質」の核心を支えるのはMDR-1Aから引き続き採用する40mm口径のHDドライバーユニットです。ドーム型のLCP(液晶ポリマー)振動板にアルミニウム薄膜をコーティングして、全帯域に渡るフラットなバランスを実現しています。再生周波数帯域はMDR-1Aから変わらず3Hz~100kHzをカバーしていますが、ボーカルの明瞭度が上がるように振動板のドーム部の剛性を高めています。

↑ハウジングの上部側面に通気孔を設けて、鋭く正確なリズム音を再現するビートレスポンスコントロールは歴代モデルから継承する高音質再生のための技術だ
↑ハウジングの上部側面に通気孔を設けて、鋭く正確なリズム音を再現するビートレスポンスコントロールは歴代モデルから継承する高音質再生のための技術だ

 

ドライバーユニットを覆うグリルには数学の「フィボナッチ数列」という数の並び方から導き出したという、ひまわりの花のようなデザインを採用しています。編み目のサイズを均等にすることで、空気の伝搬がより滑らかになる効果が得られるというもので、フラグシップヘッドホンの「MDR-Z1R」にも採用されています。

↑イヤーカップの中をのぞき込むと花のような模様の「フィボナッチパターン」を採用するグリルが見える
↑イヤーカップの中をのぞき込むと花のような模様の「フィボナッチパターン」を採用するグリルが見える

 

MDR-1Aと同じくオーディオプレーヤーやアンプとのバランス接続にも対応しています。多くのポータブルオーディオプレーヤーや、いまや音楽プレーヤーとしてもお馴染みのスマホには「アンバランス接続」に対応する一般的な端子が搭載されています。プラス極にアンプ(正相)からの音声信号、マイナス極にグランド/アースをそれぞれ伝送して、ヘッドホンの左右ドライバーユニットを合計2台のアンプ回路で動かす仕組みになっています。

 

対する「バランス接続」の場合は左右のグランド側にも逆相のアンプが接続されます。つまり片側のドライバーユニットを2台ずつ、左右で合計4台のアンプ回路を使って鳴らすという仕組みになっています。バランス接続の場合は個々のアンプにかかる負担が減るので、さらに余裕を持ってドライバーユニットを動かせるようになります。入力されたオーディオ信号に対する反応はより鋭く、正確さを増してくることは音を聴いても明らかなはず。グランド/アースを共有するアンバランス接続の場合と違って、左右チャンネル間の信号干渉が生まれないため、ステレオイメージの鮮度も高くキープされます。

 

アンバランス接続は多くの場合が3.5mmのステレオミニ端子を使いますが、バランス接続には色々な方法があります。いま最も広く普及しているのは「2.5mm/4極」の細めの端子ですが、最近ではソニーのウォークマンやヘッドホン・イヤホンの上位モデルを中心に通称“ペンタコン”と呼ばれる、端子が太く安定性に優れていて、音質面でも優位と言われる4.4mm/5極の端子によるバランス接続に対応する機器も増えてきました。

 

ケーブル交換で自分好みの音にカスタマイズができる

MDR-1AM2は、本体左側から片出しのケーブルが着脱交換できる「機能性」にも優れたヘッドホンです。本体パッケージには1.2mのアンバランス接続用ケーブルのほか、同じ長さの4.4mm/5極端子のバランス接続用ケーブルが同梱されています。ヘッドホン側の端子は3.5mm/4極のミニプラグ。ソニー純正のアクセサリーとして販売されている、米キンバーケーブルと共同開発した8芯編み構造のケーブル「MUC-S12SB1」などこだわりのアクセサリーと交換しながら、自分の好みに合わせて音をカスタマイズしていく深い楽しみも得られます。

↑ヘッドホンには2種類のケーブルが付属する。左側が4.4mm/5極のバランスケーブルの端子
↑ヘッドホンには2種類のケーブルが付属する。左側が4.4mm/5極のバランスケーブルの端子

 

「ポータビリティ」についても、MDR-1Aからさらに進化しています。ケーブルを含まないヘッドホン本体だけの質量を比較すると、MDR-1Aは約225g、MDR-1AM2は約187gと38gも軽くなっています。その違いは手に持つとすぐにわかるほど明らか。ヘッドバンドのアームは素材をステンレスから軽量・高剛性なアルミに変更。部材の内側をくり抜いて空洞にする“肉抜き”処理も要所に織り交ぜて、ドライバーユニットもボイスコイルやポールピース、マグネットなど細かな部品を徹底的に軽量化しました。この軽さはふだんから長時間音楽を聴く人には大きな魅力に感じられるでしょう。

 

外観はカラーリングを落ち着きのあるマットなシングルトーンに統一。今回は「シルバー」のカラーバリエーションの実機を借りてみました。ヘッドバンドやイヤーパッドの外皮をブラウンからグレーに変更して、付属ケーブルの色も本体に合わせたクールなルックスに仕上げています。ブラックとともにウォークマン「NW-XZ300」と色を合わせたそうです。筆者はMDR-1Aのオーディオ製品らしいトラディショナルな外観と比べて、ずいぶん若返りした印象を受けました。ただ、ルックスは重厚感のあるMDR-1Aの方が好きだという人がいても不思議はないと思います。

↑こちらはシルバーモデル。カラーリングは明るいトーンのシルバーとライトグレーをコンビにした
↑こちらはシルバーモデル。カラーリングは明るいトーンのシルバーとライトグレーをコンビにした

 

↑イヤーカップの色合いはマットに仕上げた。イヤーパッドとの接続部分にきらりと輝くクロームフィニッシュのパーツをレイアウトしている
↑イヤーカップの色合いはマットに仕上げた。イヤーパッドとの接続部分にきらりと輝くクロームフィニッシュのパーツをレイアウトしている

 

ウォークマンとXperiaを組み合わせて音を聴いてみた

MDR-1AM2のサウンドを、まずはウォークマン「NW-ZX300」と組み合わせて、アンバランス接続とバランス接続の音を聴き比べてみました。楽曲は川本真琴のアルバム「ふとしたことです」から、『1/2』(ハイレゾ 96kHz/24bit)を選んでいます。

↑ウォークマン「NW-ZX300」のシルバーと色合いを統一している
↑ウォークマン「NW-ZX300」のシルバーと色合いを統一している

 

アンバランス接続でも中高域の透明感や、特にボーカルの鮮度の高さは抜群によいヘッドホンであることが実感できます。低域はだぶつかず、スピード感も鮮やか。細かなリズム音まで立体感に富んでいて、息を呑むほど広い音場が展開します。音のない無音の一拍ずつから、演奏者の緊張感が肌に伝わってくるようです。

 

バランス接続のケーブルに変えてみます。NW-ZX300は本体トップの位置にアンバランスとバランス接続の端子を1基ずつ搭載していますが、それぞれに対応するケーブルをつなぐだけで面倒な本体設定も要らず、手軽にバランス接続の音が楽しめるプレーヤーです。

↑NW-ZX300は本体のトップにアンバランスとバランス接続用のジャックを搭載している
↑NW-ZX300は本体のトップにアンバランスとバランス接続用のジャックを搭載している

 

バランス接続のサウンドはやはり芯が強くコシもしなやか。底力の違いを感じさせます。ピアノの演奏にいっそう熱がこもってきました。ウッドベースの低音はベルベットのように柔らかくてふくよか。エレキの乾いた旋律の余韻が気持ち良くいつまでも耳に残ります。そしてこれがフィボナッチグリルの効果なのか、アンバランス接続の時よりもボーカルの立体感がさらに一歩前に浮き出てきました。ハイトーンは抜けが爽やかで、余計な雑味を感じさせません。演奏者の息づかいまで間近に感じられるようになりました。もしこのプレーヤーとヘッドホンの組み合わせを手もとに揃えることができれば、バランス接続をメインで使うことをおすすめします。

 

最後にAndroidスマホの「Xperia XZ1」につないで、先ほどと同じ楽曲を聴いてみました。スマホと組み合わせて聴くMDR-1AM2のサウンドも歯切れ良く滲みなし。ボーカルのビブラートや息づかいの繊細な表情を浮き彫りにします。筆者の印象では、Xperiaシリーズのハイレゾ対応機は繊細なニュアンスの表現は得意ながら、出音のパワー感が足りないところがあるので、特に屋外で音楽を聴くと物足りなさを感じてしまうことがありました。MDR-1AM2との組み合わせで聴くと、スマホのボリュームをむやみに上げなくても、音楽のディティールが自然と見えてきました。イヤーパッドによる密閉感と遮音性能がとても高いことも奏功しているようです。

↑Xperia XZ1との組み合わせでも音質を検証した。アンバランス接続用のケーブルはシングルボタンのリモコン付き
↑Xperia XZ1との組み合わせでも音質を検証した。アンバランス接続用のケーブルはシングルボタンのリモコン付き

 

なお本体に付属する3.5mm/4極のケーブルはシングルボタンのリモコン付き。Andoridスマホ、iPhoneともにレスポンスの良いリモコン操作と、クリアな音声通話ができます。もしリモコンなしの3.5mmステレオミニケーブルの方がベターということならば、ソニー純正のアクセサリーとして発売されているケーブル「MUC-S12SM1」も使えます。MDR-1A専用の交換アクセサリーはMDR-1AM2と互換性が確保されているので安心です。

 

ハイレゾじゃなくてもいい音が実感できる

最新モデルのMDR-1AM2は、SpotifyやApple Musicなどの定額制音楽配信の音源や、CDからリッピングしたお気に入りの楽曲も活き活きとした音で鳴らしてくれるヘッドホンです。いま手もとにハイレゾ作品は持っていないという方でも、本機の魅力は十分すぎるほど感じられるはず。遮音性能がとても高いので、アクティブノイズキャンセリングヘッドホンは苦手という方にもアウトドアで使い倒せるヘッドホンとしておすすめです。音楽の再生環境にはこだわりたいという方はとにかくぜひ一度は聴いてみて欲しいと思います。

 

協力:楽天市場