先日発表されたニコンとキヤノンのフルサイズミラーレスが注目されていますが、本記事ではそのライバルといえる3製品をピックアップ。画質や操作性などを比較検証してみました(星1~5の5段階で評価)。
●【比較作例の撮影条件】蛍光灯照明の室内にて、撮影モード絞り優先オート、絞りF8、感度ISO1600、ホワイトバランスオートに統一して撮影しました
※キヤノン&ニコンのフルサイズミラーレスカメラについてはコチラの記事(https://getnavi.jp/av-2/303506/)をご覧ください
【ジャッジした人】
カメラマン・永山昌克さん
写真スタジオを経てフリーに転身。写真や動画撮影のほか、カメラ誌やWeb媒体での執筆も多数行っています。
AFや連写が強化された動体に強いモデルが続々登場
最近のミラーレスカメラ市場では、高価なハイエンド製品が各社から続々と登場し、プロや写真愛好家から熱い注目を集めています。なかでもニコンとキヤノンの初フルサイズミラーレスは、新マウントの採用ということもあり注目度が高いです。
「両社の製品ともアダプターを介して従来レンズが使えるので、既存一眼ユーザーの買い替えや買い増しも相当数あるでしょう」と語るのはカメラマンの永山さん。「ただ当面は、専用レンズの少なさや価格の高さがネックになります」ともいいます。
交換レンズの充実度では、最も早くからフルサイズミラーレス分野に参入したソニー製品が有利。「ソニーEマウントは純正だけでなくサードパーティレンズの数も豊富です。しかもα7Ⅲは、すでにシリーズ3世代目で、性能面でも高い完成度が際立っています」
一方、フルサイズ以外では、富士フイルムX-T3やパナソニックG9 PROなどがニコンやキヤノンのライバルだ。「最近のハイクラスミラーレスはAFと連写の性能が優秀。両機ともプロの道具に十分なり得る」とのことです。
【その1】
センサー&エンジン一新で動体撮影や暗所シーンにも強くなった高機能モデル
富士フイルム
X-T3
実売価格25万3260円(レンズキット)
2016年に発売されたX-T2の後継機。基本デザインを継承しつつ、新世代のセンサーとプロセッサーを搭載し、画質やAF、連写などの性能などを大幅に強化。4K/60pのSDカード記録に対応するなど動画機能も充実しました。【撮像素子:APS-C】【連写:秒約11コマ】【常用最高:ISO12800】【ボディ質量:約539g】
SPEC●有効画素数:2610万画素●レンズマウント:Xマウント●モニター:3.0型約104万ドット、3方向チルト式、タッチ対応●EVF:約369万ドット●サイズ:W132.5×H92.8×D58.8㎜
<チェック!>
画質:☆×4
わずかにノイズは見られるが美しい質感描写とクリアな発色
拡大すると細部にざらつきが見られるものの、ディテール描写力は高く、人形の質感を的確に再現。発色はクリアで見栄えがいいです。
操作性:☆×4
アナログダイヤルで直感的に操作可能
シャッター速度と絞り、感度、露出補正をそれぞれ専用のダイヤルやリングで設定する昔ながらの操作系を採用。好き嫌いが分かれます。
独自機能:☆×4
新機能でシャッターチャンスを逃さない
クロップを活用し画面外を表示しながら撮影できるスポーツファインダーモードが◎。半押しから記録を始めるプリ撮影機能も搭載しています。
AF性能:☆×4
動きモノにも確実に追従する
像面位相差AFの領域拡大やアルゴリズムの改良などによって、動体捕捉や暗所でのAF性能が大きく向上。スポーツ撮影にも好適です。
使い勝手:☆×4
アナログ操作は慣れれば快適
グリップは小さく、大きな望遠ズーム装着時はやや物足りなさが残ります。各種ダイヤルやリングの使い勝手は、慣れるほど快適に感じます。
【その2】
超高速連写や人体認識AFハイレゾモードなど盛りだくさんの機能が魅力
パナソニック
G9 PRO
実売価格26万2590円(レンズキット)
静止画のフラッグシップと位置付けられたモデル。センサーは2033万画素で、ボディ内手ブレ補正は効果6.5段分、AF速度は約0.04秒を実現。電子シャッター時連写はAF追従で20コマ/秒、AF固定で60コマ/秒と驚異的です。【撮像素子:4/3型】【連写:秒約12コマ】常用最高:ISO25600】【ボディ質量:約658g】
SPEC●有効画素数:2033万画素●レンズマウント:マイクロフォーサーズ●モニター:3.0型約104万ドット、バリアングル式、タッチ対応●EVF:約368万ドット●サイズ:W136.9×H97.3×D91.6㎜
<チェック!>
画質:☆×3
発色と解像感は良好だが高感度画質は他機にやや劣る
汚く感じるほどではないものの、3台のなかでは最もノイズが多い。シャープネスは強めで、発色は誇張を抑えたナチュラルな傾向です。
操作性:☆×5
柔軟なカスタマイズが可能
露出補正や感度、ホワイトバランス、ドライブモードにはそれぞれ専用のボタンやダイヤルを用意。カスタマイズ可能なボタンも多いです。
独自機能:☆×5
超高解像ハイレゾモード搭載が◎
8カットを合成して超高解像な画像を生成するハイレゾモードを搭載。4K/6Kフォトや4Kフォーカス合成などの独自機能も豊富です。
AF性能:☆×4
横や後姿でも人物に合焦できる
コントラスト検出方式ながら軽快に作動するAF性能を実感。瞳認識AFに加え、顔が正面を向いていない人体も認識できるのは画期的。
使い勝手:☆×5
大型で持ちやすいグリップが快適
しっくりと手になじむ大型グリップを装備。出し入れがスムーズに行えるバリアングル液晶や、高精細で見やすいEVFも快適です。
【その3】
フルサイズながら小型で高速と高画質を兼ね備えたα7シリーズのスタンダード機
ソニー
α7Ⅲ
実売価格26万9870円(レンズキット)
フルサイズミラーレスα7シリーズのなかでも、第3世代のスタンダード機にあたるモデル。第2世代と同等の小型軽量ボディを維持しながら連写やAF、バッテリー持久力が大きく進化。タッチ操作やサイレント撮影にも対応しました。【撮像素子:フルサイズ】【連写:秒約10コマ】【常用最高:ISO51200】【ボディ質量:約650g】
SPEC●有効画素数:2420万画素●レンズマウント:Eマウント●モニター:3.0型約92万ドット、チルト式、タッチ対応●EVF:約236万ドット●サイズ:W126.9×H95.6×D73.7㎜
<チェック!>
画質:☆×5
ノイズレスな高感度画質とディテール描写力は一段上
シャープネスの高さは、他の2台よりもワンランク上。高感度ノイズやノイズ低減処理による解像低下もほぼありません。発色はやや赤め。
操作性:☆×3
カスタムボタンは不足気味
C1〜C4ボタンなどカスタマイズ可能なボタンはあるものの、機能の多さに対して不十分。メニューは従来機よりは使い勝手が向上しました。
独自機能:☆×3
電子式の高速シャッターは非搭載
サイレント撮影機能はありますが、高速シャッター用の電子シャッター機能は非搭載。フォーカスシフトやタイムラプスも備えていません。
AF性能:☆×4
正確な瞳AFと快適な動体追尾が◎
コントラストAFと像面位相差AFのハイブリッド式による快適なAFを実感。ポートレートに適した瞳AFは正確で、実用性は十分にあります。
使い勝手:☆×3
グリップ感よりも携帯性を優先
フルサイズ機のなかでは携帯性に優れますが、グリップは小さめで小指が余りがち。背面ダイヤルが不用意に回りやすい点も気になります。