世界文化遺産に登録されている上野の国立西洋美術館を設計したのは、フランスの建築家ル・コルビュジエとその弟子である日本人建築家の前川國男、板倉準三、吉阪隆正なのはあまりに有名だ。
かつては現代建築を学ぶために日本の建築家たちがフランスに渡ったものだ。そして時は流れ、立場は逆転。今はフランスの若者が日本の建築家のもとへ勉強に来る時代になった。そう、フランスでは日本人建築家ブームが巻き起こっているのだ。
ガラス越しに入る光、ガラスに映る景色
たとえば、ランスにある新ルーヴル美術館、そして現在改修工事中でパリの顔ともなるラ・サマリテーヌの設計を委ねられたのはSANAAで、これは妹島和世氏、西沢立衛氏による日本の建築家ユニットだ。
どちらも外壁には“ガラス”が使われているので、内部には自然光がたっぷりと降り注ぎ、明るくあたたかい。そして外側ではガラスに周囲の歴史的建造物を映り込ませるという手法をとっているため、新しい建物にもかかわらず古い街にも美しく溶け込む。これまでのフランス建築ではなかったこの発想、素材の使い方のセンスが彼の地では高く評価されているのだそうだ。
さらに、パリ西側のセーヌ川に浮かぶ中州に建てられた複合音楽施設ラ・セーヌ・ミュージックを設計したのも日本人の坂茂氏。ここもガラス使いが素晴らしく、太陽光がいっぱい。そして内装には日本人らしく木が多く使われているため、建物内にいるのに森の中にいるようだと言う人もいる。
この他にも、今、パリ改造計画を担っているのは繊細な表現ができる日本人の建築家たちなのだ。
「ウインドウ」は風穴
住まいにおいても“ガラス”はとても重要だ。
家を建てるときはいい窓を選びたいし、また賃貸住宅を借りる際もどんな窓が取り付けられているかを見極める必要がある。
『窓のひみつ』(松野千歌・漫画、橘悠紀・構成/学研プラス・刊)は窓の役割、窓の機能、さらには窓の歴史まで詳しく教えてくれる一冊だ。
昔々、西洋では壁に開けた穴が窓だった。英語の窓「ウインドウ」は風「ウインド」、穴「オウ」が語源。言葉通り、窓は小さく、数も少なかったはずだ。18~19世紀のイギリスではガラス窓が7つ以上ある家は税金を多く取られたそうだ。当時はガラス窓は貴重なもので贅沢品とみなされていたという。それだけ人々の窓への憧れは強かっただろう。西洋では現代のような自然光がたっぷり入る大きな窓は、夢のまた夢だったに違いない。
では、日本では窓はどんな風に進化してきたのだろうか?
障子からガラスへ
日本では木の枠に和紙を貼った障子が窓として使われていた。閉めても光は入り、開ければ風通しもよかった。
素材は同じ木と和紙でも、寺や城には形に凝った“花頭窓”、“円窓”、“連子窓”などがあった。
明治時代になって西洋風の建物が建てられるようになると、木の枠にガラスをはめた窓が作られるようになった。そして昭和の時代になるとフレームに鉄やアルミを使いガラスをはめた窓が登場した。
私の子ども時代というか中学生になる頃まで、わが家の窓は木の枠のガラス窓で、そのガラスも薄っぺらなので石ころが当たるとすぐにパリンと割れてしまうものだった。近所の家はどこも同じような窓だったと記憶している。
石が当たっても割れない厚いガラスのアルミサッシの窓が一般家庭に普及しはじめたのは昭和30年代半ばからだそうだが、たしか昭和40年ごろ親戚が家を新築し「アルミサッシが入った!」と親族一同が大騒ぎしていた。
「いいなぁ、さすがアルミサッシだ」「うちもアルミサッシに変えたい」と親たちは口々に言っていた。
その後、家よリ先に学校の校舎の窓が全部アルミサッシになり、そしてわが家の窓もかなり遅れてやっとアルミサッシになった。
地球にやさしい樹脂の窓
1980年代の後半になると樹脂の窓が登場し、ガラスも2~3枚にしたものが広まってきているそうだ。
夏暑いのも、冬寒いのも、どちらも、熱を伝えにくい窓なら解決するんだよ。(中略)樹脂窓は、熱を伝えにくいんだよね。風を取り入れたり自然の力を生かすことも大事だけど、断熱性の高い窓にすれば、その効果もより高まるんだ。冷暖房も減らせるから、省エネにもつながるんだ。樹脂窓を使う家が増えれば、二酸化炭素を出す量も減る。
(『窓のひみつ』から引用)
樹脂窓は地球温暖化対策に適した、地球と環境にやさしい窓と言えるだろう。
また、窓ガラスも一枚ではなく、二重、三重にするとますます熱は伝わりにくくなる。そしてガラスとガラスのすき間に空気よりももっと熱を伝えにくいアルゴンガスを入れることで断熱性はさらにアップするのだそうだ。
窓のリフォームは半日でできる!
ところで、窓のリフォームとなると大工事になりそうと思ってしまうが、それは昔の話だそう。今の工事はとても手軽でひとつの窓について2時間から半日くらいで出来上がるというから驚きだ。
窓の壁は壊さず、元の窓枠の内側に新しい窓を取り付けるだけなので、大きな音で近所に迷惑をかけることもなく、あっという間にリフォーム完了となるそうだ。
自然光を効率よく取り入れられる新しい窓へのチェンジ、皆さんも考えてみては?
【著書紹介】
窓のひみつ
著者:松野千歌(漫画)、橘悠紀(構成)
出版社:学研プラス
ほとんどの建物に、当たり前のようにある「窓」。だけど、そこには大切な役割があって、住む人の健康や、地球環境問題とも深くかかわっているんだ。この本で、窓の役割や種類、どのようにつくられているかなど、たくさんの窓のひみつを探っていこう!
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