日本ではトイレの後や、食事の前には手を洗うのが当たり前の習慣になっているが、広い世界を見ると、手を洗うのがめずらしい国もあり、そのため多くの子どもが病気になり、命を落とすという現状がまだまだある。
『手あらいでつなごう 世界のえがお』(佐藤宏史・文/学研プラス・刊)は石鹸や洗剤を製造する化学メーカーのサラヤが、アフリカのウガンダからはじめた「100万人の手あらいプロジェクト」のルポルタージュだ。子どもでも読みやすく理解しやすい構成になっており、また巻末には手洗いの重要性を知るためも、手のばい菌を調べる自由研究のやり方が紹介されている。
100万人手あらいプロジェクト
今、世界では1日に、約1万6000人もの5才未満の子どもたちがなくなっています。その原いんとなる病気のほとんどが、石けんを使って手をあらえばふせげるかのうせいがあるのです。正しい手あらいでたすかる子どもたちは100万人もいると考えられています。
(『手あらいでつなごう 世界のえがお』から引用)
アフリカのウガンダでは2007年の調査によると、トイレの後に石けんで手を洗う人はなんと100人のうち14人だったのだそうだ。戦争による混乱、水道の不備もあったが、それ以上に、ウガンダの人々は手あらいの大切さを知らなかったのだという。そのために、ばい菌が身体の中に入ってしまい、たくさんの人々が下痢をしたり、息苦しくなるなどの病気にかかっていった。コレラやチフスといった感染症が発症すると、体が弱い子どもたちが命を落としてしまうのだ。
この現状を変えるべく、サラヤが2010年からスタートさせたのが「100万人の手あらいプロジェクト」。対象となる石けんを買うと、その代金の一部が寄付金となりユニセフに渡り、正しい手洗いを広める活動費となるというものだ。
ティッピータップと呼ばれる手あらい場
とはいえ、ウガンダはあまり裕福な国ではないので、水道の完備はなかなか進まない。そこで登場したのが「ティッピータップ」と呼ばれる手洗い場だ。
プラスチックのタンクをかたむければ水がでてくるという、かんたんなしくみの水道です。タンクのとなりには、石けんもあります。(中略)くふうをすればこのようなすてきな手あらい場がかんたんにできるのです。ユニセフとウガンダのボランティアのスタッフたちは、この「ティッピータップ」をたくさんの学校や家やトイレの前にできるようにざい料を用意したり、つくり方を広めていきました。
(『手あらいでつなごう 世界のえがお』から引用)
また、手洗い場の設置と同時に行われたのが、手洗いの重要性を伝える教育。トイレの後や食事の前に石けんを使って手に付いたばい菌を正しく洗い流せば、皆が恐れている病気を防げることを教えていったのだ。特に学校では、わかりやすい教材を配るなどして、子どもたちに手洗い習慣を広めていった。
その効果、下痢や病気で学校を休む子どもたちが減り、子どもたちから親やまわりの大人たちも手洗いに取り組むようになっていったのだそうだ。本書では現地の写真でこの様子をわかりやすく伝えている。
手のばい菌を調べてみよう!
さて、この本では手を洗う場合と洗わない場合では、どんな違いがあるのかを、家庭にあるもので簡単に実験する方法が紹介されている。
用意するもの
- 食パン4まい
- チャック付きポリぶくろ4まい
- ハンドソープ
- キッチンペーパー
- 使いすてビニール手ぶくろ(ビニールぶくろでもいい)
- 電子レンジ
- カメラ
(『手あらいでつなごう 世界のえがお』から引用)
実験方法は、まず、手袋をして食パンを一枚ずつチャック付きのビニール袋に入れ、菌を減らすためにそれぞれ電子レンジで1分加熱する。その後で、パンに4通りの手で触ってみるのだ。外出帰りの汚れた手、水洗いだけをした手、石けんで丁寧にあらった手、もうひとつはまったく触らない状態も試してみる。
これを写真に撮って毎日観察をする。パンの消費期限にもよるが1週間以上すると違いが現れてくるはずだ。手洗いの大切さも再確認してみてはどうだろう?
【書籍紹介】
手あらいでつなごう 世界のえがお
著者:サラヤ株式会社 Taketani(写真)、佐藤宏史(文)
発行:学研プラス
ウガンダで実際に行われた「100万人の手あらいプロジェクト」。巻末にはこのお話を読むとできる、自由研究と読書感想文のやり方つき!
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