日本の産業の中枢を担うものを「産業の米」と呼びます。21世紀の産業の米は、「データ」と言われています。ポイントカード、電子マネー、インターネットのアクセスなどから集めた膨大なデータが、これからの日本の産業の中心となると言われているのです。
では、データ以前の「産業の米」はなんだったのでしょう。それは「半導体」です。
電気を通したり通さなかったりする物質が「半導体」
「半導体」。よく耳にするものですが、いったいどんなものなのでしょうか。簡単に言えば、電気を通す物質である「導体」と、電気を通さない物質である「絶縁体(不導体)」の中間に位置する物体です。
普段は電気を通しませんが、ある条件を満たすと電気を通すようになる物質、それが「半導体」なのです。
では、その半導体はどんなところに使われているのでしょうか。それは、我々の身の回りの至るところに使われています。もっともポピュラーなものとしては「フラッシュメモリ」が挙げられます。
半導体を使った製品が「フラッシュメモリ」
『フラッシュメモリのひみつ』(フラッシュメモリのひみつ制作委員会・原案、絵・とだ勝之、谷澤 皓・構成/学研プラス・刊)は、このフラッシュメモリを、マンガでわかりやすく解説しています。本書によるとフラッシュメモリは以下のように説明されています。
フラッシュメモリは、写真や文字などのデータを記憶できる電子部品です。記憶したデータをカメラのフラッシュ(光)のように「パッ」と一度に消すことができるので、そう名づけられました。メモリは「記憶」という意味です。
(『フラッシュメモリのひみつ』より引用)
たとえば、デジタルカメラなどの記憶媒体として使われているSDカードやmicroSDカード、パソコンの記憶媒体として使われるSSDなどが、フラッシュメモリです。
パソコンのメモリはフラッシュメモリではない
「メモリ」と聞いて、ちょっとパソコンに詳しい人ならば「パソコンのスペックに書いてあるな」と思うかもしれません。しかし、そのメモリとは別物です。
フラッシュメモリに記録したデータは、電源を切っても保持されます。一方、パソコンのメモリ(DRAM)は、電源を切るとデータが消えてしまいます。フラッシュメモリは、パソコンで言うところの「ハードディスク」に相当するものなのです。
ハードディスクに比べ、フラッシュメモリを用いているSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)は、データの書き込みや削除にかかる時間が短く、振動に強い、小型であるというメリットがあるため、近年はHDDに代わりSSDが主流になりつつあります。
フラッシュメモリはさまざまなところで使われている
フラッシュメモリは、パソコンやメモリカード以外にもさまざまなところで使用されています。『フラッシュメモリのひみつ』でざっと例として挙げられているだけでも、これだけあります。
・自動車
・ICレコーダー
・タブレット
・AV機器
・テレビ
・ゲーム機
・カーナビ
・スマートフォン
・ロボット掃除機
というか、何かを記憶しておく電化製品のほとんどに、フラッシュメモリは使われていると思っておけば、ほぼ間違いありません。それだけ、フラッシュメモリは身近なものなのです。
フラッシュメモリは国産の技術
このフラッシュメモリは、実は日本で生まれたものです。
「フラッシュメモリ」は1984年に東芝で発明された。現在普及しているNAND型フラッシュメモリとは違う構造だった。
(『フラッシュメモリのひみつ』より引用)
なんとなく海外で生まれたもののように感じてしまいますが、フラッシュメモリは東芝製だったのです。日本で開発されたものが、今や世界中で使われているというのは、誇らしい気分になります。
ちょっと身の回りを見てください。おそらく、目に入る電化製品のほとんどにフラッシュメモリは使われているはず。指先に乗るくらい小さな部品ですが、それは「脳」と呼ぶにふさわしい、電化製品を司る部分。なくてはならない存在です。
世の中がどんどん便利になった裏側には、日本生まれのフラッシュメモリが活躍していたというのは、日本人としてちょっとうれしいことですね。
そう思うと、身の回りの電化製品が少し輝いて見えるかもしれませんよ。
【書籍紹介】
フラッシュメモリのひみつ
著者:とだ勝之、フラッシュメモリのひみつ制作委員会、谷澤 皓
発行:学研プラス
「フラッシュメモリ」を知っている? スマホなどに入っている、とても小さくて大切なものなんだ。でも、どんなところで、どうやって使われているんだろう? みんなの便利な生活を支える、縁の下の力持ち「フラッシュメモリ」。この本でひみつを探ってみよう!