本・書籍
2019/7/24 21:45

誰もが持ってる「あの1曲」を網羅する――『父から子へ伝える 名ロック100』

1976年から1990年。筆者にとっては、まさにゴールデンエイジと呼ぶにふさわしい幸せな時代だった。今も続く洋楽好きとしての土台がしっかり固められた時期である。

 

筆者にとっての“はじめの1曲”

筆者が洋楽というジャンルで形容しがたい衝撃を受けた1曲は、レッド・ツェッペリンの『天国への階段』だった。以下の話は、音楽を身近に置いておく方法としてスマホへのダウンロードがメインになっている今の人たちには想像しがたいと思う。

 

筆者がステレオとテープレコーダーをケーブルでつなげるという当時は主流の方法で『永遠の詩』というライブアルバムを録音したのは、中学生2年生の秋だった。ただ、この方法では好きな音楽を居間――リビングという言葉はまだ一般化していない――から自分の部屋に移動できるようになったにすぎない。

 

本当の意味で音楽を携帯できるようになったのは1979年の7月。高校2年の夏休み直前だった。ウォークマンの初号機を手に入れて使ったとき、両耳がどこまでも伸びていくような感覚を味わった。最初の1曲として選んだのは、レッド・ツェッペリンの『Rock and Roll』。このあたり、ツェッペリンの影響がかなり強めだ。

 

 

媒体とともに進化していく楽曲

音楽好きの間で、使い勝手抜群の媒体としてテープが大きなシェアを占めていた時代はかなり長く続いたのではないだろうか。その後DAT(デジタルオーディオテープ)やMD(ミニディスク)が生まれたが定着することはなく、手軽なプレイヤーがあったため比較的息が長かったCDを経て、圧倒的な音質のMP3をはじめとする音声ファイルフォーマットが一般的になり、現在に至っている。

 

こうした媒体の変遷は、80年代にヒットした楽曲のコンセプトにそのまま反映されているような気がする。たとえばクイーンの『レディオ ガガ』。たとえばバグルスの『ラジオスターの悲劇』。もちろん、時代の色合いを体現する名曲は80年代に限らない。初めて告った喫茶店でかかっていたあの曲。大学に受かった時脳裏に思い浮かべたあの曲。そして、とにかくひたすら好きなあの曲。

 

人それぞれの「あの曲」をほぼすべて網羅していると思われる本があったら、ちょっと読んでみたくなりませんか?

 

 

徹底的に自分の体験本位のリスト

父から子へ伝える 名ロック100』(立川直樹・著/祥伝社・刊)のスタート地点は、著者立川直樹さんの「思いっきり自分の体験をクロスさせて、名曲をピックアップしたいと考えた」という姿勢だ。INTRODUCTIONに、次のような言葉が記されている。

 

ロックの名曲というのは本当に魔法のような力を持っていて、イマジネーションを途方もなくふくらませてくれてくれたり、ふさぎこんだ気分を晴らしてくれたり、夢の旅に連れて行ってくれたりする。

『父から子へ伝える 名ロック100』より引用

 

筆者の場合、この本のタイトルの“父から子へ”という部分に微妙に反応したのかもしれない。2年前に他界した筆者の父親も洋楽が好きで、作業場として使っていた部屋に置かれた机の上に、いろいろなレコードが積み重ねられていた。

 

当時小学生だった筆者は、レコードの山から偶然引き抜くドアーズとかジャニス・ジョプリンのアルバムを面白半分で聴いていた。父親は超インドア志向の人で、キャッチボールとかはまったくダメなタイプだったが、音楽と映画に関してはきっちりとした球を投げてくれたと思っている。

 

 

5章に分けられた100の名曲

立川さんが選び出した100の楽曲は、次のような章タイトルで分類される。

 

  1. LOVE
  2. JOURNEY
  3. NOSTALGIA
  4. DREAM
  5. HARD BOILED

 

章タイトルがキーワードとなり、それを基に分類されているので、各章で紹介されている楽曲の年代はさまざまだ。たとえば1. LOVEでは『ラヴ・ミー・テンダー』(エルヴィス・プレスリー)から『アイム・ノット・イン・ラヴ』(10cc)、そして『心のラヴ・ソング』(ポール・マッカートニー&ウィングス)や、『ボヘミアン・ラプソディ』(クイーン)などが紹介されている。

 

そしてもちろん、この本を貫いているのは「思いっきり自分の体験をクロスさせて、名曲をピックアップしたいと考えた」姿勢だ。ただ、立川さん自身の体験を数多く綴っていくというフォーマットは、いつの間にか年代記に似たテイストの読み物になる。

 

 

追体験<実体験

そしてこの本は、筆者自身の音楽史と密接にクロスすることも強調しておかなければならない。もちろん、そう感じる人が筆者だけではないことも、蛇足ではあるが強調しておかなければならない。追体験という言い方は違うと思う。

 

この本は、内容に自分の実体験を重ねていくべきものなのだ。その媒体となるのは、“イマジネーションを途方もなくふくらませてくれてくれたり、ふさぎこんだ気分を晴らしてくれたり、夢の旅に連れて行ってくれたりする”ロックの名曲の数々である。

 

折り返しに、森雪之丞さんのこんな言葉がある。

 

この本はつまり、立川さんの愛に溢れた『乱数表』である。『暗号』として選ばれた100曲を聴き合わせれば、ROCKが“定義なき崇高な思想”として君臨した時代の甘美な秘密が解き明かされるのだ。

『父から子へ伝える 名ロック100』より引用

 

 

筆者としては、こういう言い方をさせていただきたい。大好きな曲が流れてきて、それを初めて聴いた時の情景や香りまで思い出す瞬間。誰にとっても等しいはずの、こういうことの大切さを思い出させてくれる1冊だ。

 

【書籍紹介】

父から子へ伝える 名ロック100

著者:立川直樹
発行:祥伝社

ロック誕生52年、以来絶えず時代と伴走してきた名プロデューサーが贈る、究極のロック・ストーリー!この曲を聴け!この一冊を読め!

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