本・書籍
2020/2/18 21:45

美しい街並×猫――癒され率120%の1冊『世界の美しい街の美しいネコ 完全版』

疲れていたり、ストレスを感じた日の締めくくりには、愛らしい動物たちの動画を見たり、写真を眺めることにしている。すると自然に心が落ち着いてきて、ゆっくりと眠れるようになるのだ。無垢な動物たちの姿には癒されるし、それが美しい景色の中にあれば、なおいい。

 

そんな私が今、いちばん気に入っている写真集が『世界の美しい街の美しいネコ 完全版』(小林希・著/エクスナレッジ・刊)だ。旅と猫をテーマに撮影、執筆を続けている小林さんは、日本の離島100島、そして世界60か国を訪ね、そこで暮らす猫たちの姿をカメラに収めている。本書はその集大成となる一冊だ。

一人旅の孤独感を癒した猫たち

小林さんは勤めていた出版社を退社し、世界放浪の旅へ出た。

 

一人旅の気楽さや旅先の刺激がある一方、知らない土地にいて拭い去れない孤独感に襲われたとき、心に柔らかな癒しをくれたのは、その街で出会う猫たちでした。(中略)猫好きな旅人の妄想といえばそれまでですが、もし世界で彼らに出会っていなかったとしたら、私は今もなお飽きずに旅を続けているだろうか? と思うと、その答えは限りなく「ノー」に近いのです。

(『世界の美しい街の美しいネコ 完全版』から引用)

 

本書を開くと、彼女のファインダー越しに見えた世界各地の猫が次々と現れる。美しい港町で、絵本から飛び出したような中世の街で、喧騒と活気がみなぎる街で、あるいは、戦果に見舞われた街の跡地で……。ページをめくるたびに、自分がその土地にいて、それで生きる猫に出会ったような気分になれるのだ。

 

 

街別のキャット・データがおもしろい

本書の構成は、

*ヨーロッパ1 スペイン/ポルトガル/フランス/ルクセンブルグ/オランダ/ドイツ

*ヨーロッパ2 イタリア/マルタ/ギリシャ

*ヨーロッパ3 クロアチア/ボスニア・ヘルツェゴビナ/セルビア/コソボ/ルーマニア/ハンガリー/チェコ/リトアニア

*北アフリカ・中東 モロッコ/チュニジア/イスラエル/ヨルダン/トルコ

*中央アメリカ キューバ/プエルトリコ/メキシコ

*南アメリカ ペルー/チリ/アルゼンチン/ウルグアイ/ブラジル

*アジア ベトナム/フィリピン/タイ/マカオ/香港/台湾/ロシア/日本

 

となっていて、それぞれの国、全75の街の猫を見ることができる。注目したいのは小林さんが独自につけた<CAT Data>。遭遇率、なつこい度、堂々度、おっとり率が、それぞれコメントと共に5段階評価されているのがユニークで、旅で出会ったそれぞれの猫たちの性格がとてもよく伝わってくる。

 

では、私が心を奪われた街と猫をいくつかあげてみよう。

 

 

スペイン・巡礼の街で旅人を迎える猫

サンティリャーナ・デル・マルは、スペイン北部でもっとも美しい村と呼ばれているそうだ。キリスト教の三大巡礼地のひとつ、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路にあり、多くの巡礼者が立ち寄るところ。この美しい村の風景に溶け込むキジトラ猫、そして、生まれたばかりのつぶらな瞳でカメラを見つめる3匹の仔猫のアップ写真にはめちゃめちゃ癒される。

 

CAT Date

遭遇率:3 小さな旧市街でたくさんの猫の姿をみる
なつこい度:3 まあまあ人馴れしている程度
堂々度:2 人と目が合うとそわそわする
おっとり率:3 野生的な猫も多い印象

 

 

リトアニア・お洒落な街の美女と猫

本書の表紙を飾っているのが、リトアニアの首都ヴィリニュスにある猫カフェでのベストショット。金髪の美しい女性と美しい白猫が、それぞれマイペースで時間を過ごしている様子がゆったりとしていい雰囲気だ。

 

CAT Date

遭遇率:1.5 猫カフェに行けば確実だが、外ではほぼみかけず
なつこい度:3 人が好きな猫と距離がほしい猫がいる
堂々度:5 基本的には人にはまったく動じず
おっとり率:4 人を気にせずマイペース過ごす

 

 

モロッコ・青色の世界に溶け込む猫たち

モロッコ北西部の「青い街」として名を馳せるシャウエンでは、どこを切り取っても青い視界の中に猫が映り込むという。猫が主役の街なのだ。

 

CAT Date

遭遇率:5 道を歩けばどこにでも猫がいる
なつこい度:3 人馴れしているが、とくに甘えてこない
堂々度:4 警戒心がない猫が多い印象
おっとり率:4 各々マイペースに好き勝手している

 

 

キューバ・浜辺のカリビアン猫たち

キューバは360度カリブ海に囲まれた島国で、パラデロはなかでも最も美しいといわれる観光地。ここで撮影された”膝のりカリビアン猫”は猫好きにはたまらないワンショットに違いない。そのときの小林さんの体験を引用してみよう。

 

海のほうから、猫がやってきた。人の少ない浜辺を慣れたようにいそいそと動きまわり、ついには浜辺に座っていた私の膝の上に乗ってきた。湿った砂の上よりは、居心地がいいのだろう。しばらく一緒に水平線を見続けた。

(『世界の美しい街の美しいネコ 完全版』から引用)

 

CAT Date

遭遇率:3 海辺や街中の民家でみかける
なつこい度:4.5 まったく怖がる様子がない
堂々度:4.5 どこにいても堂々とした態度
おっとり率:3 マイペースだけど、ちょこまか動く

 

 

日本・瀬戸内海に浮かぶ猫の島で

世界各地を旅した小林さんは、それまでは平凡に思っていた母国の魅力がはっきりと分かるようになったそうだ。和の猫が、いちばん「福」を招いてくれるような気がするとも。本書での日本代表は、瀬戸内海に浮かぶ男木島の猫たちだ。

 

CAT Date

遭遇率:1 数年前に全頭避妊、去勢されてから数が減った
なつこい度:3 人がくると多くの猫が近寄ってくる
堂々度:3 多少人間に対する警戒心もあるが、怖がらない
おっとり率:4.5 マイペースでのびのびしている

 

癒し度の高い猫写真が満載の本書は、猫好きの方ばかりでなく、旅好きの方にもおすすめだ。

 

 

【書籍紹介】

世界の美しい街の美しいネコ 完全版

著者:小林 希
発行:エクスナレッジ

美しい街で暮らす美しいネコを求めて…著者がカメラを片手にヨーロッパ、アフリカ、アジア、中米、南米の絶景エリアをめぐりました。旅をしてしみじみ感じた街別のネコとの出会いやすさ、ネコの性格などをまとめたチャートも付いています。

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