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自己啓発
2020/5/6 21:45

「キャリアアップ」ではなく「ストーリー」で人生を描く——『好きなことしか本気になれない。』

新型コロナウイルスのパンデミックは、本当に終わりが見えない。この原稿は、緊急事態宣言を5月末までの延長する方針が固まったばかりのタイミングで書いている。

 

 

変わったことと、浮き彫りになったもの

この3か月で世の中のさまざまなことが変わった。まず挙げるべきは、なんといっても他者との物理的接触の激減だ。筆者は、もうひと月以上間電車に乗っていない。会議も打ち合わせもすべてオンラインになった。情報バラエティ番組も、スタジオにいないコメンテーターがモニターに映し出されて進行していく。

 

フリーランス生活が長い筆者の日常に限って言わせていただくなら、それほど劇的な変化はない。ジムに行けなかったり、顔を合わせて行う打ち合わせがなくなったりしているだけだ。

 

でも――いや、だからこそというべきだろう――普通ではない日常の中で、自分が本当に好きなことが浮き彫りになっていく感覚が日々強くなっている。YouTubeで海外インストラクターのビデオを探してジャンルが異なるエクササイズを試し、仕事に関してはこれまでチャレンジしたことがなかった分野の企画書を書き、ブログのエントリーのため必死にネタを探している。

 

 

仕事に関してだけではないサバイバルスキル

そういう心理状態の中で見つけた『好きなことしか本気になれない。』(南 章行・著/ディスカヴァー・トゥエンティワン・刊)には「人生100年時代のサバイバル仕事術」というサブタイトルが付けられている。「はじめに」に、次のような文章を見つけた。

 

人生100年といわれるこの時代。仕事のキャリアや人生設計など、期待と不安が入り混じる世の中だ。僕は本書を、あなたが自分らしく、力強く、ときにしなやかに生きぬくために、どう考えて、どう判断していくかを、あなたと一緒に考える本にしたいと思っている。

「好きなことしか本気になれない。」より引用

 

この本の初版第1刷発行は2019年8月30日。およそ半年後に全世界を襲うことになるパンデミックの予感さえ生まれていなかった時期だ。上で紹介した文章は、筆者が置かれている現状に完全に合致している。そして本書の内容は、仕事にまつわる要素だけに限らない。

 

 

「たったひとつの正解」がない時代

著者の南さんは、現代を「たったひとつの正解」ですべてを解決できる時代ではないと語る。だから、それを必死に探そうとする行いは、努力として方向性が違うかもしれない。すべきなのは「正解かどうかはわからないけれど、自分はこうすべきだ」という意思決定だ。

 

さほど意思決定が求められなかった時代や、意思決定できない人が永遠にぐるぐるとシミュレーションをしていても許される、恵まれた時代も確かにあった。だが、これから僕たちが生きていく時代、意思決定できない人にはつらい人生が訪れる可能性が急速に高まっている。

「好きなことしか本気になれない。」より引用

 

外出自粛のなか、それほど追い詰められた感覚はないものの、漠然とした不安から解放される瞬間がないまま毎日を過ごしている筆者には、かなりストレートに響く。

 

 

自分のストーリーを紡ぎ出す

銀行からキャリアをスタートして企業買収ファンドで働き、オックスフォード大学でMBA取得。南さんの人生は、傍目から見れば絵に描いたような成功体験の連続に感じられるかもしれない。しかし、表面的な視線からわからないことがあるのは当然だ。自分なりの背景があると南さんは言い切る。人生のコアの部分となったのは、ストーリーという要素だ。

 

そして、かつてないほど未来の見通しが立てにくい不安だらけのこの現代において、「キャリアアップ」ではなく「ストーリー」を生きるというのが、「正解なき世界を生き延びる方法」のもう一つのキーワードだ。

「好きなことしか本気になれない。」より引用

 

だから南さんは言う。大切なのはたったひとつの正解を探そうとすることではなく、自分のストーリーを生きていくことだ、と。

 

 

自分で自分を導いていく

章立てを見てみよう。

 

・人生100年時代、確実に変化すること

・成長は「意思決定の数」に比例する

・セルフリーダーシップで動き続ける―スキルを獲得し、「自分の価値観」を見つける働き方

・自分のストーリーで生きていく―21世紀のキャリア形成について考える

 

この本の核となるコンセプトは「セルフリーダーシップ」と「自分のストーリー」だ。ただし、その定義は読者の数だけあるはずだ。生き方において「たったひとつの正解」などというものが存在しないのと同じだ。「セルフリーダーシップ」と「自分のストーリー」を探っていくヒントとなる60以上の言葉が小見出しとして挙げられている。

 

・80歳まで働ける「個人の力」とは?

・なんとなくでもいいから心と向き合う

・「心が満たされる好きなこと」でしか稼げない

・セルフリーダーシップとはプロセスである

・大切な人に説明できる「ストーリー」を持つ

 

何か、そして誰かに頼ることなく自分で自分を導き、大切な誰かに伝えることができるよう、自分の手で自分のストーリーを紡ぎ出す。傍目には順風満帆な人生を送ってきたように見えるアントレプレナーの自分史として受け入れるか。あるいは自分の人生でも鏡やプリズムとなる可能性があるものとして受け入れるか。アフター・パンデミックの世界で、優れたサバイバルキットとなる期待感に満ちた一冊だ。

 

【書籍紹介】

好きなことしか本気になれない。

著者:南 章行
発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン

キャリアアップよりも大事なのは、自分のストーリーを生きること。“得意を売り買い”テレビCMでおなじみ「ココナラ」創業者、待望の初著作!

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