今年も今日と明日で終わり。外に出る機会があまりないので、例年以上にテレビを見まくる時間が長くなっている。1年を振り返る情報バラエティ番組から始まってかなりの量のお笑い、そして映画やドラマというラインナップだ。
字幕を見て思うこと
筆者は昔からハリウッド映画やアメリカのドラマが大好きだ。本当の映画好きならフランス映画やインド映画も見るのだろうけれど、昔から惹かれるのはアメリカで製作されたものばかりだ。大きな理由のひとつは言語だと思う。字幕を目で追いながらアメリカ英語が耳から入ってくるというのが筆者にとって一番自然な形なのだ。
そうする過程で「こういう訳し方はないだろ」とか「うまい訳だな」と思うことがある。これは、ことわざ的な言い回しやダジャレみたいなものに特に多い気がする。世代特有のポップカルチャーに関するセリフも難しい。加えて言うなら、ごく普通の日常的な場面に出てくる言い回しや単語なのに、しっくりくる訳文が辞書に載っていないことがある。こうしたシチュエーションの解決策となるかもしれない本を見つけた。
“ややこしい”アメリカ英語の地図となってくれる本
『日常会話なのに辞書にのっていない英語の本』(松本 薫、J・ユンカーマン・著/講談社・刊)の出発点は明瞭だ。
たった1冊の本でややこしいアメリカ英語をすべて紹介できるわけではないが、これからアメリカを訪れる方々が少しでも楽に過ごせることを念じて、私自身の失敗や友人知人の体験をまとめてみた。皆様のご健闘を心からお祈りいたします。
「日常会話なのに辞書にのっていない英語の本」より引用
松本 薫さんは共著者であるアメリカ人男性と日本で知り合い、日本で結婚した。それまで外国で暮らしたことも、留学経験もなかった。英語の知識は、教科書と受験を通して蓄積した“ごく平均的な”日本人だったという。
TOEICの問題集には出てこないかも
まず楽しんでいただきたいのは、巻頭13ページにわたる「この意味で理解するととんでもないことが起こる!!」だ。イラストにあわせて英文と直訳的な日本語が示されている。
「Don’t tell a soul」「魂を語るな」
「This town is dry」「この町は乾いている…!?」
「Soup’s on!」「スープが上にあるよ!」
TOEICや英検の問題集には出てこないかもしれない表現だが、映画やドラマでは確かによく聞く。ごく日常的な響きであることもまちがいない。ちなみにそれぞれ正しい意味を記しておくと、上から「誰にも言うなよ」「この町ではアルコールが販売されていない」「ごはんができたよ」となる。
びっくりするほど多い収録フレーズ数
目次を見てみよう。章ごとのサブタイトルも示しておく。
1 街角でいきなり声をかけられた!
〜これさえ知っていれば、走って逃げなくても大丈夫2 最初のひとことからして、わけがわからない
〜この言葉を知らないと会話が始まらない3 “Yes”なのか”No”なのか、それが問題
〜質問してはみたものの、答えの意図がつかめない4「アハー」だけではない! アメリカ式の相づち集
〜会話をスムーズに進めるための何気ないひとこと5 ほめられているのか、しかられているのか
〜はたまた頼まれているのか、命令されているのか6 聞けば聞くほど話が見えなくなる
〜アメリカ人が人やモノを説明するときの妙な言い方7 壁の花にはなりたくない
〜ディナーやパーティーを2倍楽しむための必須用語8 これでお開き、お疲れさまでした
〜締めくくるための大事なひとこと
53のシチュエーションが8つの章に分けられた構成になっていて、収録フレーズ数は驚異の450オーバー。これだけ多いと「読む」とか「覚える」という感じではない。繰り返し眺めるだけでいいと思う。この本で知るフレーズを脳裏のどこかに残しておいて、映画やドラマを見ている時に出てきたらそのシーンのイメージと共に意味を確認すれば、しっかり刷り込めるだろう。
表記にも独特の工夫
この本でもうひとつ特徴的なのは、例文に“聞こえる通り”の音がカタカナでふってあることだ。たとえばこんな感じ。
Do you have the time? ドゥユーヘァヴざタイむ
カタカナとひらがなを組み合わせ、文字の大きさも変えて示された読み方については巻頭の「この本の便利な特徴」を見ればすぐに理解できる。とても親切な作り。せっかくだから、例文は声に出して読みたい。字面と音をつなげるためのこうした工夫は、かゆい所に手が届く感じがある。
“生きた英語感”満載の語学参考書
アメリカ英語ならではという表現が満載の一冊。生きた英語をうたっているにもかかわらず、読み進めるにつれ違和感が生まれる本もたくさんある。説明が長すぎたり、文章がつまらなかったりするため“生きた英語感”が失われてしまうのだ。しかし本書は違う。ひとつひとつの表現が状況・意味・バリエーションという機能的な流れで紹介される作りになっている。楽しいという要素がなければ、学びは続かない。すぐに手が届くところにいつも置いておきたい一冊。
【書籍紹介】
日常会話なのに辞書にのっていない英語の本
著者: 松本 薫、ジョン・ユンカーマン
発行:講談社
警官に“Pull over three!”と言われて狼狽し、“Do you have the time?”と話しかけられてナンパと思い込み、“Do you have a light?”と聞かれて太陽を見上げてしまった…!アメリカでは、日常英語であるにもかかわらず、意味を誤解して損をしたり、トラブルに巻き込まれる日本人が後を絶たない。実体験をもとに日本人が誤解しやすい日常英語を厳選し、意味と使い方を懇切丁寧に解説。カタカナ読みも付いている、とことん実用的な英語の本。