今年の春までTBSラジオで放送されていた『伊集院光とらじおと』。朝によく聞いていたのですが、その中でも大好きだったコーナーが、木曜日にやっていた「伊集院光とらじおと放哉と山頭火と」という自由律俳句を紹介するコーナーです。
リスナーさんから寄せられた575にとらわれず、季語もないフリースタイルな句を、パーソナリティたちが想像を膨らませて語り合うもので、聞きながら笑ったり、突っ込んだりしていました(笑)。番組が終わってしまったのは残念ですが、新しい趣味を教えてくれて感謝しかないコーナーになりました。
今回はそんなラジオコーナーを書籍化した『次の角を曲がったら話そう』(伊集院光・監修/小学館・刊)をご紹介。自由律俳句を知らない人でも楽しめる一冊です。
実は本のタイトルから「自由律俳句」
タイトル『次の角を曲がったら話そう』も、リスナーさんの自由律俳句です。
病気かな? 別れ話かな?とネガティブなことを話そうと決心しているようにも感じられるし、逆にプロポーズかな? 宝くじが当たった話とか? と、ポジティブなことのようにも思えます。
また、性別も年代も、どんな気持ちで送ったかは紹介されず、ただラジオネームのみ。読み手に解釈が委ねられているので、正解がないんですよね。たった数文字の言葉から想像を膨らましていくのが、自由律俳句の楽しみ。作り方も解釈の仕方も自由なんだなぁ〜なんて感じます。この本を監修した、伊集院さんも「はじめに」でこんなことを書いていました。
ぜひ、お試しいただきたい読み方としては、まずは句を読んで、頭の中に自由な発想をさんざん浮かべてから、僕らのやりとりを読んで「同じ、同じ!」と思ったり「なんだよ、伊集院! 全然違うよ」と思ったりしていただきたい。なんなら紙面に感想を直接メモするのもいいでしょう。
(『次の角を曲がったら話そう』より引用)
『次の角を曲がったら話そう』では、ラジオで紹介された155句と、一部の句にはパーソナリティたちのコメントも記載されています。句も自由なら楽しみ方も自由! 俳句や川柳など、触れたことがない人でも楽しく読める構成になっていますよ。
たった数文字にドラマがいっぱい
ここからは、私の独断と偏見で好きな句をいくつか紹介させていただきます。どんな風景を思い浮かぶか、想像しながらよんでみてくださいね。
◎ 『も』と打つだけで『申し訳ありません』/カナサギ(福井県)
◎ いつか行くつもりだった店なのに/わいおか(千葉県)
◎ なかったはずの片栗粉/ピピ(広島県)
◎ 妻の靴を捨てに行く/かいそ(新潟県)
◎ カップ麺を良い箸で食べる/アイドルと同じ名前(大阪府)
(『次の角を曲がったら話そう』より引用)
哀愁があったり、喜びがあったり、笑ったり、共感したり、たった数文字の中にもドラマが詰まっていますよね。また、以前は「いい句だな〜」と感じていても、久々に読み返すと「なんでここに付箋したの?」と思うものもあります。自分の意識や気分次第で読み方が変わってくるんですよね。
ちなみに、コーナータイトルにある「放哉」と「山頭火」ですが、自由律俳句で有名な俳人の名前です。放哉こと尾崎放哉は、『咳をしても一人』という句を残しています。また山頭火こと種田山頭火は、『まつすぐな道でさみしい』や『どうしようもないわたしが歩いてゐる』という句で有名です。
『次の角を曲がったら話そう』を読んでいくと、もっと色々な句も読みたくなります。時代をさかのぼってみたり、最近の書籍を読んでみたり、SNSで探してみたり、自分のお気に入りを見つけたくなりますよ。
自分も作ってみたくなるのも、自由律俳句のいいところ
俳句や川柳は、ルールなどが難しい世界に感じてしまうのですが、自由律俳句は、ルールゼロ! 好きに思ったことを表現できるので、読んでいるうちに「私も作ってみたい」なんて気持ちさせてくれます。
朝早く起きられた時は、近所のパン屋さんに買い物に行くのですが、その道すがら自由律俳句を考えています。思い浮かんだ言葉をスマホにメモして、読み返すと日記よりも情景が思い浮かんでなかなか粋なもんです。新しい趣味としてもいいですし、日記がわりにつけるのも楽しいですよ。
『次の角を曲がったら話そう』は、自由律俳句の入門書としておすすめですが、すでに俳句や短歌、川柳などをやってきた方にも一度触れてみてほしい世界です。思ったことをそのまま言葉にする、表現も解釈も自由な世界を楽しんでみてくださいね!
【書籍紹介】
次の角を曲がったら話そう
監修:伊集院光
発行:小学館
TBSラジオ「伊集院光とらじおと」の人気コーナー「伊集院光とらじおと放哉と山頭火と」が待望の書籍化! 5年間のオンエアから珠玉の155句を厳選。