本・書籍
2023/9/30 6:30

南海キャンディーズのしずちゃんが“ほんわか”と半生を振り返る『5000グラムで生まれた女のちょっと気ままなお話』

コンプレックスをプラスに変える。言葉にすると簡単ですが、なかなかできることではありません。他人から「そんなこと気にしなくていいよ」と言われても、気になっちゃいますからね。南海キャンディーズのしずちゃんは、伸びたくないのに身長が伸びてしまい、思春期のころはコンプレックスを抱えていたそうです。

 

今回ご紹介する『5000グラムで生まれた女のちょっと気ままなお話』(南海キャンディーズしずちゃん・著/ヨシモトブックス・刊)は、しずちゃんが生まれてから今までの半生を振り返る自伝本です。ジェットコースターのような浮き沈みがあるのかなと思いましたが、しずちゃんの半生は湖畔の波のようにゆったり、穏やか。今の時代に必要な考え方がいっぱい詰まっているなぁと感じた一冊でした。

学生時代はアイドルを目指していたしずちゃん

夫婦漫才以外に男女の漫才コンビがほとんどいないなかで、彗星の如く現れた南海キャンディーズ。デビューからわずか1年ほどの2004年、M-1グランプリで準優勝します。それからの活躍は言わずもがなですが、しずちゃんは映画やドラマでの俳優業、さらにはボクシングでオリンピックを目指すなど、芸人の枠を飛び越えて活動されています。

 

そんなしずちゃん、昔からお笑い芸人を目指していたわけではなく、小さいころはアイドルを目指していたのだとか。しかし、小学6年生のころから自分の意思に反して身長がぐんぐん伸びてしまい、同級生男子から「岩石女」と呼ばれてしまいます。

 

そのころから、人前に出て自分を出したい気持ちと、誰にも見られなくない気持ち、矛盾した両方の気持ちを常に抱え始めた。今なら「大きい体を利用して目立とう」と思えるけど、その時はまだ繊細な乙女心を持っていたのよ。

そんな葛藤を続けているうちに、アイドルになりたいという夢はいつの間にか消えた。

(『5000グラムで生まれた女のちょっと気ままなお話』より引用)

 

自分の夢がいつの間にか消えていく感覚、私にもあったなぁ〜としみじみしてしまった一文でした。しずちゃんを通して自分の人生も振り返ることができるので、気が付かないうちに閉じていた心の扉がそっと開かれますよ。

 

しずちゃんは、色々あった青春期を過ぎると半ば思いつきで劇団ひまわりに入ります(笑)。いきなり、どうして? と思うのですが、この入団がきっかけで「人を笑かしたい」という気持ちに気付き、吉本の養成所であるNSCに通っていた中学の同級生に声をかけ、吉本のオーディションライブに参加。そこから芸人生活が始まります。

 

山ちゃんの著書と合わせるとさらに楽しい! 南海キャンディーズ結成秘話

劇団ひまわりから吉本芸人になったしずちゃん。「西中サーキット」という女性コンビでデビューし、少しずつお笑い芸人としての輪郭を作っていきます。残念ながらこのコンビは解散してしまうのですが、その後に出会うのが、山ちゃんこと山里亮太さん。ケーキバイキングに誘われ、南海キャンディーズが結成されます。山ちゃんの著書『天才はあきらめた』の中でもケーキバイキングに誘った様子が描かれているのですが、そのアンサーがしずちゃんの本にも書かれてありました。

 

山ちゃんはこの時、コンビが組める手ごたえを感じていたみたいだけど、何を話したか、あんまり記憶にない。覚えているのは、ケーキをたくさん食べたことと、「鼻の下にめっちゃ汗をかく人やなぁ」と思ったことだけだ……。

(『5000グラムで生まれた女のちょっと気ままなお話』より引用)

 

山ちゃんの努力やしずちゃんへの想いは、『天才はあきらめた』にたっぷり綴られているのですが、しずちゃんのほうは「こんなにあっさりだったの!?」と驚いてしまいました(笑)。この2冊を一緒に読み進めていくと、南海キャンディーズのいい意味での“すれ違い”が明確になります。紆余曲折あって今がある、そんな感覚を味わえますよ。

 

勇気を出して一歩踏みだす生き方

見た目にはおっとりとしているしずちゃんですが、その心の奥には情熱の炎がメラメラと燃えていることが『5000グラムで生まれた女のちょっと気ままなお話』を読むとわかります。けれど、自分の世界を揺るがすような大きなエピソードや出来事があるわけではない。そこがしずちゃんらしくていいな、と読み終わって感じました。しずちゃん自身も、本の最後にこんなことを書いています。

 

私は、「どうなるかわかんないけど、やってみようかな」と勇気を出して一歩踏み出す生き方をずっとしていきたい。面白く生きたいんだと思う。

(『5000グラムで生まれた女のちょっと気ままなお話』より引用)

 

しずちゃんのようにいろんな方面に一歩を踏みだして、チャレンジし続ける生き方ってとっても素敵だなと感じました。いろんな選択肢がある世の中で、どうなるかわからないけどやってみると、その先に新しい自分が見つけられるのではないでしょうか?

 

チャレンジした結果、コンプレックスがどんどん克服され、自分自身を好きになっていくしずちゃんの半生。コンプレックスに悩む人、将来がちょっぴり不安な人、自分のやりたいことが見つからない人、いろんな人が元気になれる、そんな一冊です。

 

【書籍紹介】

5000グラムで生まれた女のちょっと気ままなお話

著:南海キャンディーズ しずちゃん
発行:ヨシモトブックス

漫才したり、ボクシングしたり、お芝居したり、絵を描いたり…たくさん人との出会いに支えられながらチャレンジを続けてきた芸人・しずちゃんがその半生を赤裸々に綴る!

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