2000年代、インターネットの掲示板の怪談スレッドが流行りました。「きさらぎ駅」「八尺様」「コトリバコ」「くねくね」……。みなさんも名前くらいは知っているかと思います。私は「八尺様」を読んだときの恐怖をいまでも忘れられません!
また、最近では「イシナガキクエを探しています」(テレビ東京)や、イベント「行方不明展」などモキュメンタリー的なホラーが話題になっていますよね。
今回紹介する『近畿地方のある場所について』(背筋・著/KADOKAWA・刊)は、そんなネット怪談やモキュメンタリーホラーが好きな方にはたまらない作品です。『このホラーがすごい! 2024年版』で1位も獲得しており、怖さは折り紙つき!
行間から漂う不気味な「恐怖」
『近畿地方のある場所について』は、モキュメンタリー的に作られた小説。ただ、小説というよりノンフィクションを読んでいる感覚です。なんの前情報もなく「ちょっと面白いノンフィクションだから」と手渡されたら、うっかり信じてしまう作りになっています(実際に、ノンフィクションだと思っている読者もいるらしい)。
予備知識を入れずに読んだほうが圧倒的に面白い(怖い)ので、内容については語りません。本の構成としては、雑誌の記事や、インターネットの掲示板の書き込み、取材テープの書き起こしなどがランダムに掲載されています。そこに共通しているのは「近畿地方のある場所について」ということだけ。
しかも、文中ではその「近畿地方のある場所」は「●●●●●」とずっと伏せ字になっています。これがまた、妙なリアリティーと不気味さを生んでいます。
それぞれの記事や手記のジャンルは様々で年代もバラバラですが、どの記事も読み終わるごとに、背筋が冷たくなります。瞬間的な恐怖というよりは、いやーな不安感がずっと続く感じ。また、実話怪談集としてだけでなく、「●●●●●」にまつわる大きな謎を解いていく作りにもなっているので、ミステリーとしても楽しめます。
まだまだ酷暑は続きそうですが、じとーっと迫ってくるえも言われぬ不気味さを体感して、この晩夏、恐怖に凍えてみてはいかがでしょう?
【書籍紹介】
近畿地方のある場所について
著者:背筋
刊行:KADOKAWA
近畿地方のある場所にまつわる怪談を集めるうちに、恐ろしい事実が浮かび上がってきました。