電気設備やソリューションを開発するパナソニック エレクトリックワークス社は、脱炭素社会の実現に向け、大阪府との連携協定締結を9月26日に発表しました。今回の連携協定は「ZEB(ゼブ)」と呼ばれる建物の省エネルギー化を推進するためのもの。国も推進する施策であるZEBと、連携協定の内容について解説します。
ZEB(ゼブ)とは?
ZEBは、Net Zero Energy Building(ネットゼロエネルギービルディング)の略語で、Zero、Energy、Buildingの頭文字をとったもの。その言葉が示す通り「建物が消費する一次エネルギー実質ゼロ」表す言葉です。一次エネルギーとは、加工されない状態で供給されるエネルギーのこと。
つまり、石油、石炭、原子力、天然ガス、水力、地熱、太陽熱といった、”エネルギーの原料”のことです。なお、私たちが使っている電力などは、一次エネルギーが加工されたのちの姿であり、一次エネルギーではありません。
ZEBでは、空調や換気、照明、給湯、昇降機といった建物に不可欠な電気設備を高効率なものに変えていくことで、建物の消費エネルギーを抑えつつ、太陽光発電などで創出するエネルギーを活用。
ZEBは、こうした「省エネ」と「創エネ」、さらには蓄電池を使った「蓄エネ」の3つを組み合わせ、目的を達成していきます。国もこの取り組みを後押ししており、補助金を出すなどの支援を行っています。
しかし、ZEBの実現には難しい問題があります。それは、省エネ、創エネ、蓄エネを「如何に効率よく」組み合わせるかという点です。ZEBはこの3つのうち、どれかひとつにとことん注力すれば達成できるというような簡単なものではなく、それぞれをバランスよく組み合わせることが必須。そのためのプランニングを行う存在がZEBプランナーです。
ZEBプランナーを名乗るには、一般社団法人 環境共創イニシアチブによる認証が必要。パナソニックの場合、専門的知識を持った社員複数名が、ZEBプランナーとして認定を受け、建物のZEB化に貢献する設備の選定や消費エネルギー削減効果の計算、施工後のアドバイスなどを行っています。
なぜ大阪府×パナソニックなのか?
地球温暖化が急速に進むいま、消費エネルギーの削減やカーボンフリーに向けた施策が世界的に行われています。ZEBもその一環ですが、なぜ大阪府はZEBに注力し、さらにはパナソニックとの協力関係を結ぶまでに至ったのでしょうか。
そこには、大阪府ならではの事情がありました。府の発表によれば、府内の公共設備のCO2排出量のうち、建物由来のものが約4割を占めています。残りの6割は下水道施設由来ですが、こちらの削減はすぐには難しいのだそう。
そこで、建物から出るCO2をまずは削減しようというとになり、ZEBに白羽の矢を立てたというわけです。
しかし、ZEBというのは近年生まれた概念であり、現在ZEB化が行われている建物は基本的に新築です。つまり、既存の建物をZEB化したという事例はほとんどありません。「そもそも、府が持っている建物をZEB化できるのか?」その可能性から調査していかねばならないフェーズだそうです。今回協定を結んだパナソニックは、その調査を担う役割を務めます。
パナソニックとしても、今後ZEB関連の事業を進めていくうえで、既存建築物をZEB化するためのノウハウを蓄積したいという考えがありました。1926年に竣工した大阪府庁をはじめ、歴史のある建造物を多く持つ大阪府。ノウハウを追求するための素材として、それらの建物は同社にとって魅力的だった、というわけです。
ハードルの高い挑戦。新たな技術の誕生に期待
この連携協定は、2022年の3月にパナソニックから大阪府へ提案があり、互いの思惑が一致したことから締結に至ったといいます。現時点では、どの建物をZEB化するかなど決まっていない状態で、これから手探りをはじめていくとのこと。
裏を返せば、既存の建物のZEB化は、それだけハードルの高い挑戦であるともいえます。その挑戦にこれから挑んでいく両者。新たな技術がこの協定から誕生することを期待しましょう。