2016年末、ある有名グルメサイトの”今年の一皿”に「パクチー料理」が選ばれたのをご存知でしょうか? 巷では相次いで専門店ができたり、パクチー〇〇(サラダ、盛りetc)なるメニューが登場したりと、パクチーブームが巻き起こっているのです。実際のところ、ご当地料理の多くにパクチーが使われているこの現象を、タイの人はどう思っているのでしょうか? 現地出身のロアンダーラーさんに、日本におけるパクチーやタイ料理の人気について聞いてみました。
ベンチャワン・ロアンダーラーさん
バンコク出身。「ヤムウンセン」という春雨サラダが大好き。
パクチーだけを好んで食べるタイ人はいない!
聞けば、パクチーが日本で脚光を浴びていることについては「ちょっとうれしい」とか。でも、それ以上になぜこれほどまで人気なのか、驚きのほうが大きいとのことです。その理由を、さらに深掘りしてみました。
「私たちにとって、パクチーは昔から自然に食べてきたハーブ。でも、パクチーだけをサラダのように味わったり、量を増やして独特な風味を楽しんだりはしないわ。つまり、特に好んで食べることはないの。日本には専門店があるって聞いたけど、本当にビックリ。パクチーは、日本人にはなじみのあるものではないから逆に新鮮なのかしら」(ロアンダーラーさん)
タイ料理にライムやパクチーがよく使われる理由のひとつは、スパイスや油や砂糖で刺激が強くなりがちな味を中和するためだとロアンダーラーさんは話します。タイでは理にかなった使い方をしているからこそ、日本の盛り上がりの一端には疑問を覚えることもあるそうです。
「たとえばスイーツでも、日本ではパクチーと相性の悪そうな料理に使う店もあると聞いたことがあるわ。パクチー好きのために作られた味付けなのかもしれないけど、それっておいしいのかなぁ」(ロアンダーラーさん)
世界一ウマいと噂のマッサマンカレーはタイ人には不評……
次に気になったのは、パクチー以外の話。なかでも、日本で人気が高いタイ料理といえばグリーンカレーですが、本場タイでもグリーンカレーは定番メニューなのでしょうか。
「確かにグリーンカレーはなじみ深いわ。でも、本場ではカレーという位置付けではなく、あくまでもスープ料理よ。『ゲーン・キャオ・ワーン』が正式名称で、タイ語で汁物、緑、甘いという意味ね。日本では色分けしてグリーン、イエロー、レッドが特に有名だけど本場にはいろんなゲーンがあって、オレンジやゴールドもあるわ」(ロアンダーラーさん)
そして、タイのカレーといえば、2011年に米国サイト「CNNGo」の”世界で最も美味な料理”で1位になったマッサマンカレーも気になります。日本ではカップヌードルに採用されるなどの高い人気を誇っていますが、本場ではどうなのでしょう?
「タイではそれほど人気じゃないわ。理由はいくつかあるんだけど、かなり脂っこいというのが大きいはずよ。また、たくさんの調味料を使って時間をかけて作るのが特徴だから、グリーンカレーほど取り扱われていないというのがあるかも。さらに挙げるとすれば、辛くないことかな」(ロアンダーラーさん)
タイ料理の多くが辛いことからわかるように、タイ人は辛いものが大好き。一方でマッサマンカレーは、ほかのカレーに比べて辛くないためタイではウケが悪いようです。だからこそ、比較的辛さになれていないアメリカ人にはマッサマンカレーがおいしいと評価されたのではないでしょうか。
※この企画は、外国人留学生へのリサーチから得た知見をもとに、海外向けに日本企業のブランディングや商品PRのサポートを行う「LIFE PEPPER」とのコラボによるものです。