キリンビールがチカラコブで推し進める“クラフトビール”事業。その缶ビール商品の大看板「スプリングバレー」が、新たに「スプリングバレーブルワリー」となり、伝説の第二章が幕を開けた。実は、中味は変えずにパッケージだけ変更したという。その「なぜ?」を探るべく、発表会場へ突入した!
国内クラフトビール市場が成長鈍化……その原因は?
キリンという大手が「クラフトビールやります!」と狼煙(のろし)を上げたのは2014年のこと。東京・代官山の「スプリングバレーブルワリー東京」を旗艦店に掲げ、ビールづくりと仲間づくりを展開。そして2021年には待望の缶製品を発売。今回の発表会は、この缶製品のリブランディングを発表する場であった。

国内におけるクラフトビール販売量は直近10年で4倍に伸長しているが、若干の足踏みも見られる。「国内でのクラフトビール販売量の半数に迫る『スプリングバレー』の果たす役割は大きく、スプリングバレーの伸び悩みが足踏みの一因だと感じています」とは、2024年キリンビールに新設されたクラフトビール事業部のマネージャー、久保育子さんだ。

クラフトビールをメジャー化する挑戦を託されたもう一人は?
クラフトビールとは、作り手の顔が見える“流派”のようなもの。いつでも安定した味わいを手頃に楽しめるレギュラービールに敬意を払いつつ、いつもとちょっと違う味わいを望むファンの“わがまま”(笑)を叶える存在である。
だから“クラフトビールをメジャー化する”というのは、実はかなりの無理難題。そこに風穴を開けようとするのが、“スプリングバレーという挑戦”なのである。
発表会では久保さんがリブランディングの概要を語ったのち、新CMに出演する俳優・坂東龍汰さんが登壇。ヘッドブリュワー(醸造責任者)の辻峻太郎さんとともに、3種のスプリングバレーブルワリーの特徴や注ぎ方、グラス選びの楽しみを軽快なトークで紹介。会場を沸かせた。
特に坂東さんの【うわ、美味しそう~。でも仕事中だから飲んじゃいけないよね。だめだめ自分】という表情がひどく印象的(笑)で、そんな本当のビールファンがスプリングバレーブルワリーのCMに登場するとは、これぞ最高の巡り合わせ!
とはいえ仕事は仕事。大規模なリブランディングを任された久保さんの両肩にかかる責任は大きい。
「2021年の缶製品発売から4年経ちますが、クラフトビール市場の難しさを痛感しています。当初は量販店で一気に展開して、テレビCMを大量投下する“垂直立ち上げ”を狙いました。でも結果として、クラフトビールにはもっと密なコミュニケーションが必要だとわかりました。今回のリブランディング以降は、そこを徹底していきます!」(久保さん)
一部のクラフトマニアからは、この大々的なPR手法に疑問の声もあるだろう。しかし、キリンが本気でクラフトビールに取り組む背景には、「たくさん売って儲けられるから」という打算以上に、ビール=ピルスナーと思ってきたビールファンに、もっと違うビール、もっとユニークなビール、そしてもっと新しいビールがあることを知ってほしい! というキリンビールの“想い”があったはずだ。そのため、大規模な店頭展開やCMを通じてのPRは、実はごく真っ当な選択肢だった。


クラフトビールの真骨頂は?
初代「スプリングバレー」缶発売から4年。そこでつかんだ”何か”を活かした新しい「スプリングバレーブルワリー」が、いま船出した。キャッチフレーズは「しあわせ湧きあがるクラフトビール」。坂東さん出演CMのロケ地はシドニーだが、クラフトビールカルチャー盛んな彼の地で「スプリングバレーブルワリー」を楽しむ面々の笑顔がもう、タマラナイ! クラフトビールというとつい蘊蓄を語りがちだが、もっと楽しく、新しく、そしてTPO(時間・場所・機会)をまるごと味わうのが、クラフトビールのトリセツなのだ!
キリン
SPRING VALLEY BREWERY(スプリングバレーブルワリー)
JAPANエール 香/豊潤ラガー 496/シルクエール 白(左から)
350ml缶 各245円(500ml缶もラインナップする)
「定番の3本に加え、季節ごとの楽しさを新提案する『シーズナルビアコミュニケーション』を夏と冬に実施します。そして4月1日~5月31日まで、代官山の『スプリングバレーブルワリー東京』でビアガーデン『SVBピクニックテラス』を開催しますので、ぜひ足をお運び頂き、クラフトビールの魅力を新発見して下さい!」(久保さん)
ビール大国NIPPONに全力でクラフトビールを定着させようとするキリンビールの至宝「スプリングバレーブルワリー」。「ブランド始動から11年。缶製品発売から4年。今回のリブランディングをあらためての自己紹介の機会として活かしていきます!!」という久保さんの細腕繫盛記に期待、アンド乾杯だ!


なぜ中味を変えなかったのか?
最後にタイトルの「実は……」について。「なぜ中味を変えなかったか?」への回答で、「実は……2024年に出品したビアコンペティションで合計24個、発売以来累計だと60個もの受賞メダルを頂いております。つまり、味についての評価が非常に高いため、敢えての不変なのです」と久保さん。小鼻を膨らませてえっへん、胸を張ったのでした。