日本酒や焼酎づくりで培われた力強くも繊細な味覚設計、丁寧な職人気質、そして日本が原産ボタニカルによる雅やかな香り。これらが国産クラフトジンの魅力だ。数多ある商品のなかから、ジンの達人お二人のおすすめ銘柄を紹介しよう。
なんで「ジン」が流行ってるの? ブームの理由と、いま注目の3ブランドをプロが解説
【私たちがレクチャーします!】
アンドスピリッツ代表・黒田亜衣さん
酒販店兼バーや輸入卸を行う「アンドスピリッツ」を創業。昨年、日本人初となるウイスキーの国際資格「MASTER OF SCOTCH」を取得。
&SPIRITS ヘッドバーテンダー・中島大渡さん
新宿生まれサイパン育ち。新宿ゴールデン街「民藝酒房 SUZUBAR」の店長兼バーテンダーを経て現職に。ラムコンシェルジュ。
【奈良県】古のボタニカルが生み出した、これぞまさに大和スピリッツ!
大和蒸溜所
橘花KIKKA GIN
5500円
奈良の名酒「風の森」で有名な老舗蔵が母体。ベースはライススピリッツで、ジュニパー以外のボタニカルは、古事記に登場し日本原産ながら準絶滅危惧種の大和橘(やまとたちばな)と、奈良の伝統薬草である大和当帰(やまととうき)のみ。
世界を狙える味とボトル 和柑橘ジンの最高峰!
「鮮やかでフレッシュな柑橘香と、爽やかでみずみずしいハーバル感。ボタニカルの香りを最大限に引き出すべく、59%と高アルコールですが飲みやすい、和柑橘ジンの最高峰です。白磁風のボトルも素敵!」(黒田さん)
【東京都】スコットランドのDNAと日本のボタニカルが生み出す至高のハーモニー
ブルーラビットディスティラリー
Signature Gin
5950円
日本在住歴の長いスコットランド人が田園調布で立ち上げたブランドのフラッグシップ。英国の伝統を重んじつつ、日本特有のボタニカルを積極採用しており、ヘザーの花や竹、ゆず、ひのきなどを使用。
酒質のバランスがよく、トラッドながらも日本的
「つくり手のマークさんは、若いときにワイン業界にいてボルドーに住んでいたとか。洋酒の知見も広く、酒質のバランスがかなりいいんです。トラッドかつ、日本的な風味がしっかり溶け込んだ唯一無二の味」(中島さん)
【長野県】レジェンドと若き蒸留士が温泉村の自然のなかで開発
野沢温泉蒸留所
CLASSIC DRY GIN
4850円
「季の美」を手掛けた和製クラフトジンの旗手、元木ヨイチさんと息子のコタロウさんが携わった蒸留所の作。本作は正統派ドライジンをモチーフに、レモンと地元の山椒を効かせた冷涼な辛口だ。
雪原と温泉を思わせる透明感がありながら個性が光る味
「世界最大の蒸留酒の品評会『SFWSC』でのダブルゴールド(2024年)をはじめ、数々の賞を受賞するなど、世界も認めた一本。透明感がありながらも個性が光る味で、ソーダよりもトニック割りが推しです!」(黒田さん)
【鹿児島県】多彩な蒸留酒を手掛ける名手が放つモダンでフレーバリーな味
小正醸造
KOMASA GIN ほうじ茶
3630円
母体は老舗の焼酎蔵であり、ジャパニーズウイスキーの雄「嘉之助」も手掛ける超実力派。「ほうじ茶」以外にも、「桜島小みかん」「苺」があり、どれもモダンな酒質とフレーバリーな香りが持ち味だ。
名産地の茶葉が華やぎ和食にもマッチ
「ベースは米焼酎。日本有数の茶葉の名産地・鹿児島産の茶葉が使われていて、ほうじ茶の香ばしさと、隠し味のひのきによるウッディーなニュアンスが絶妙です。まさに、和食に合うジンですね!」(黒田さん)
【福島県】4種の伝統的なボタニカルが爽やかでやさしい余韻を演出
ナチュラディスティル
naturadistill 固有種蒸溜酒
4980円
かやの実や橘、クロモジ、ニオイコブシといった日本古来のボタニカル4種とジュニパーベリーを使用。柑橘の果実香が中心にありながらも森林の緑を感じさせる自然味は、爽やかでどこかやさしく心地いい。
珍しい製法で生み出した繊細な香りが魅力
「新設蒸留所がつくった1本目のジンで、昨年11月に発売されたばかり。焼酎で採用されることはあってもジンでは珍しい、『減圧蒸留』を採用。淡麗な味を生み出す製法で、繊細な香りが引き出されています」(中島さん)
【北海道】神秘的な積丹ブルーを表現!飲み方で変色する技巧派ジン
積丹スピリット
火の帆 KIBOU BLUE
6380円
蒸留所があるのは積丹岬のすぐ近く。そこから見える、“積丹ブルー”という海をイメージしたのが本品だ。美しい青はバタフライピーという植物によるもので、ソーダやトニック割りで紫、柑橘を搾ると桃色に変化。
北国のボタニカルが生むロマンティックな味
「味わいもロマンティック。赤えぞ松の森林香やオレンジのニュアンス、キタコブシのほのかな甘みで優雅な印象ですが、エゾヤマモモのスパイシーさとエゾミカンのほろ苦さによる、引き締まった余韻も楽しめます」(黒田さん)
【神奈川県】ビールの醸造所やコーヒー焙煎所のシナジーがあふれる独自フレーバー
ナンバーエイトディスティラリー
NUMBER EIGHT GIN Yokohama Dry Gin
4235円
横浜新港8号埠頭のレストラン内に蒸溜所があり、ビールの醸造所とロースターも併設。吟醸酒粕焼酎をベースに8つのボタニカルを使っていて、本品は神奈川みかん、生ホップ、コーヒー豆などの風味が華やぐ。
料理との親和性の高さは飲食店企業ならでは
「『リゴレット』などを運営するレストラン企業が母体。シトラスに、ミントやホップの爽やかさ、コーヒーのほろ苦さが調和した力強くも華やかな味わいです。バランスがよく、料理に合う設計になっているのはさすが!」(黒田さん)