日本人がロングステイしたい国・地域に関するアンケート調査で11年連続1位に選ばれているマレーシア。経済や観光で高い注目を集めているこの国は、実はB級グルメ天国。「ホーカー」と呼ばれる屋台では、南国の雰囲気を感じながら気取らずに食事をすることも多いのですが、ここでは持ち帰りも可能。日本でテイクアウトする場合は、折り詰めやプラスチック容器などに入れてくれるのが普通ですが、マレーシアではビニール袋が使われます。
日本人にとってはカルチャーショックかもしれませんが、なぜビニール袋が使われているのでしょうか。現地在住の筆者が実際にホーカーに行って説明いたします。
ローカル度が高いほど持ち帰りフードのビニール率がアップ!
マレーシアでは祭りでもないのに至る所で屋台を見かけます。例えば、幹線道路沿いのちょっとしたスペースに店が連なっており、近所の人はもちろん、タクシーやトラックのドライバーまで気軽に立ち寄っては飲み食いしています。少し喉が渇いた、小腹が空いた、時間がないのでパッと食べたいときなどは、自販機やコンビニではなく屋台一択です。
実際に屋台でテイクアウトをしてみましょう。まずはドリンクから。天然の経口補水液とも呼ばれ、二日酔いにも効くと言われているココナッツジュースを頼んでみます。値段は1杯RM3(約84円)。
小刀で勢いよくココナッツを割って、中のジュースをコップにあけ、果肉(パルプ)もスライス。手際よくこれらをカップに一度入れ、ビニール袋へ流し込みます。そして、ここでビニール袋の口をちょっと縛り、赤い紐をしっかりとひっかけ、ストローを挿します。
ビニール袋は思ったよりもずっしりしていて、破けたり穴があいたりしないか心配になります。家に帰って重さを測ってみたら680gもありました。
口は密閉されていません。揺らすと中身がでてきそうな危うい感じがして、長時間の持ち歩きや移動には向かないと思いきや、自転車のハンドルにひっかけたりしたり、クルマのハンドルやバックミラーにぶら下げたりしている人たちを目撃しました。おまけに、赤信号などで止まると器用に飲んでいるのです。
よく見ると、このビニール袋ドリンクには微妙な角度がついていて、中身が出にくく飲みやすいようになっています。適当にビニール袋に入れているようで、実は機能性と安全性が考慮されているようです。
他にもテータリ(マレーシア風ミルクティー)、ジュース各種など屋台で頼む液体系はこの状態で渡されることが多いです。
次はマレーシアの定番B級屋台グルメ。本来なら南国独特の雰囲気を感じながら外で食べるのが醍醐味。地元の方たちは適当に食べたいものを屋台で注文して、適当に周囲にあるテーブルに座って食べています。なので、テイクアウトしたい場合は先にその旨を伝えないと皿に盛られてしまうのでご注意ください。
今回オーダーしたのは、タイ式ご飯の店のチキンチャーハンRM5.5(約154円)。ローカルの屋台で食べるとだいたいこの値段です。
注文を受けるとすぐさま中華鍋で炒め始めます。すぐ後ろに置かれた皿の上に敷かれているのは、そう、縦横30cm四方の正方形のビニールです。ご飯に続いて具材が投入され、香ばしい匂いが漂ってくるまで約2~3分。できあがったチャーハンはそのままダイレクトにビニールの上へ乗せられて、すぐさま四隅をくくって巾着状にして出来上がり。
熱々のチャーハンもやはりビニール袋に入れて渡されるのです。見た目は逆さまにした「てるてる坊主」。コンパクト過ぎてチャーハンを持っていることを忘れてしまいそう。熱でビニールが溶けることもなく、無事に持ち帰ることができました。
慣れると便利なビニール袋テイクアウト
このビニール袋テイクアウトは慣れてくると、いくつかメリットがあることが分かります。まず、ゴミ捨てが楽です。飲食が終わった後、かさばらないのでゴミ箱にさっと捨てられます。また、地元の方たちは自転車やバイクに乗って買いに来ることが多いため、この形状は持ち帰りに非常に便利です。
しかし、ビニール袋の最大のメリットは、自転車やバイクのハンドルにかけやすい点です。米国の情報調査専門シンクタンク「ピュー研究所」のデータによると、2014年のマレーシアの一般家庭におけるバイクの普及率は83%(日本は21%)。バイクや自転車は渋滞の影響を車ほど受けず、道路の舗装状態が多少悪くても走行できるので、たくさんの人たちが乗っています。移動中にサッと飲み食いしたいなら、ハンドル近くに食べ物(または飲み物)があるほうが便利ですので、多くの屋台にビニール袋が選ばれています。
屋台で食べ物や飲み物を頼んでビニール袋に入れてもらい、飲み食いしながらブラブラ歩くと、地元の文化に溶け込んでいる気がすること間違いありません。見た目や盛り付けを重視する日本では恐らく流行ることはないような気がしますが、マレーシアに来たらぜひビニール袋テイクアウトをお楽しみください。