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2018/9/25 16:00

「日本酒に合う料理」にはそんなセオリーが…! 体験イベントで知る「ペアリング」の喜び

8月4日、二子玉川の蔦屋家電2階のダイニングにて、日本酒ファンに向けて、新たな体験イベントが開催されました。その名も「吟醸酒と調理家電レシピの『完璧なペアリング』体験会」。麻布十番で人気のダイニング日本酒バー『赤星とくまがい』のオーナー、赤星慶太さんを講師に招いた体験イベントで、日本酒の吟醸酒と、これにピッタリ合う3品の料理を楽しむ体験会です。提供される料理の一部はパナソニックの最新調理家電「IHデイリーホットプレート」で調理されます。

 

幅広い年齢層の約30名がイベントに参加

体験会のテーマは、イベント名の通り、「吟醸酒と料理のペアリング」。酒好き、グルメ好きにとっては想像するだけで微笑んでしまうイベントです。しかも、コアな日本酒ファンに評価が高い「赤星とくまがい」が監修するとなれば、これはもう、行かねばなるまい! というわけで、歴史に残る猛暑の中、汗を拭きつつ駆け付けました。

 

イベントの会場は二子玉川の蔦屋家電。本棚や観葉植物が印象的に配置されたスタイリッシュな店内を通って、2階のダイニングへ。今回は1日2回の開催で、各30人ずつが参加します。開始時刻が近づくにつれて、30代くらいから60代くらいまで、幅広い年齢層が集まってきました。参加者は女性がやや多いようですね。

 

調理にはパナソニックの「IHデイリーホットプレート」を使用

また、会場が蔦屋家電ということもあって、体験会で提供する料理は、最新の調理家電「パナソニック IHデイリーホットプレート KZ-CX1」(8月1日発売・実売価格5万6520円)で調理されました。こちらは熱源が二つあり、プレートを外すとIH調理器としても使えるので、その名の通りテーブルの上に置いて毎日でも使うことができるといいます。

↑見た目もスリムなパナソニックのIHデイリーホットプレート

 

さらに、本イベントでは新しいブランド「双円」(そうえん)の酒器を使用。「双円」は気鋭のプロダクトデザイナー、鈴木 健氏が主導して立ち上げたもので、同じ販路、同じブランディングを異業種・異素材でシェアするという画期的な取り組みです。本イベントでは、千葉県のガラスメーカーSghr(スガハラ)のタンブラーが使用されました。

↑参加者が手にしているのが、「双円」のタンブラー。イベント終了後はお持ち帰り頂きました

 

アメリカで20年、日本酒を紹介してきた赤星慶太さんがナビゲート

さて、いよいよイベントのメイン、「無冠帝」と料理のペアリングのコーナーがスタート。日本酒コーディネーター兼ライターの馬渕信彦さんを進行役に、麻布十番の「赤星とくまがい」のオーナー、赤星慶太さんが日本酒と料理のペアリングについて解説します。

↑赤星慶太さん

 

ここで少々、ナビゲーターの赤星さんの紹介を。赤星さんは1998年、地酒のエクスポーターとして渡米。2009年に『Sake Bar KIRAKUYA』をプロデュースし、後に3店舗の酒ソムリエを歴任します。赤星さんは渡米中、ある女性から「この美味しい日本酒と料理に出会わなければ、私は一生、ジャンクフードと炭酸飲料で過ごしていたと思う。本当にありがとう」と涙ながらに感謝されたことが強く印象に残っているそう。以降もこの経験をモチベーションとして、日本酒と料理のペアリングの可能性を探り続け、2015年4月、自らのお店をオープンするため帰国。NYで出会ったシェフの熊谷道弘さんと『赤星とくまがい』を麻布十番にオープンしました。

 

「アメリカで20年、お酒を売る仕事をしてきて、飲み慣れていない人にお酒を伝えるために、料理とのペアリングを考えるようになりました。私が考えるペアリングの基本は『調味料で考えること』。たとえば、刺身にどの日本酒を合わせたらよいかとよく聞かれますが、醤油と合わせればいいんです」(赤星さん)

 

なるほど。お酒は食材ではなく、調味料で合わせるというのは初耳ですね。さて、「そろそろ美味しい匂いがしてきました」との馬渕さんの言葉の通り、ホットプレートで肉が焼けるいい匂いが漂ってきましたよ。

↑IHデイリーホットプレートで調理する「赤星とくまがい」のシェフ、熊谷道弘氏

 

高い志を秘めた菊水酒造の吟醸酒「無冠帝」

続いて、料理とペアリングするお酒のほうを紹介していきましょう。実は、本イベントを後援したのが新潟県・新発田市の菊水酒造。菊水といえば、鮮烈な風味のアルミ缶のワンカップ「ふなぐち菊水一番しぼり」や鋭い切れ味の「菊水の辛口」で有名ですが、今回の主役は吟醸酒の「無冠帝」です。

↑菊水酒造の「無冠帝」。サイズは300mlと720ml/オープン価格

 

本品は1983年に発売。「高品質のお酒をたくさんの方にお届けしたい」との高い志を持ち、酒銘に「無冠の帝王」の意味を込めたといいます。発売から35年、時代によって味やボトルのデザインは変わりましたが、この酒にかける「心意気」は今も変わっていないそう。

↑菊水酒造の長谷川洋平さん

 

菊水酒造の長谷川洋平さんによると、無冠帝を「日々を大切に生きる人々、生き方にこだわる人へのスタイリッシュなお酒」と表現。さらに、辛口で切れがよく、「香りや酸味は穏やかで料理をさりげなく引き立てるので、テーブルをきれいに演出するお酒」と語りました。お話を聞いているうちに、菊水酒造さんのこだわりがひしひしと伝わって来て、「無冠帝」とは実際にどんなお酒なのだろう? と、楽しみになってきます。

菊水「無冠帝」の公式サイトはコチラ

 

「無冠帝」に合うしょうがやおろしポン酢を使った3品の料理が登場

やがて、お皿に乗った料理が運ばれてきました! 料理は以下の3種類です。

【1】「トマトと水牛のモッツァレラ ガリ風味のカプレーゼ」(写真左奥)
【2】「カレー風味のハンバーグ」(写真右手前)
【3】「焼きマシュマロのベリーソースがけ」(写真右奥)

 

赤星さんが、上記3品の料理の狙いを、以下のように解説してくれました。

「『無冠帝』に一番合うと思ったのがしょうがです。しょうがとの相性がいいので、カプレーゼには甘酢漬けにしたガリを使いました。ハンバーグにはおろししょうがとカレーパウダーを入れています。家庭で試すなら、おろしポン酢がオススメ。『無冠帝』の最後の苦みがポイントで、大根と相性がいいんです。『焼きマシュマロのベリーソースがけ』は、マシュマロ、ヨーグルト、ブルーベリーを使用。ヨーグルトの乳酸と日本酒は相性がいいので、そのペアリングを味わってもらえたらうれしいです」

 

いよいよペアリングを実際に体験!

では、いよいよ実際に味わってみましょう。まずは、ブルーのボトルが涼やかな「無冠帝」単体で味わってみます。「無冠帝」が注がれたグラスを鼻に近付けてみると、上立ち香は穏やか。口に含むと、きりっとした味わいが印象的で、しっかりとした旨みがあります。含み香も爽やかですね。

↑料理を味わう参加者

 

続いて、「トマトと水牛のモッツァレラ ガリ風味のカプレーゼ」を味わいました。モッツレラチーズの味がふわりと口の中で広がったあとに、トマトとガリの酸味がじわり。その後に再び「無冠帝」を飲むと、最初より味が引き締まって美味しく感じました。おお、これぞペアリングの妙。料理によって日本酒の味が引き立つとはこういうことだったんですね。

 

参加者の間からも、「ホントだ、しょうがが合う!」という声が聞こえてきます。意表を突かれた素材のペアリングに、会場全体が赤星マジックの術中にはまってしまった模様。

 

続いて、「カレー風味のハンバーグ」を試してみましょう。鶏肉のハンバーグは意外にもガツンとした味わいです。しかし、「無冠帝」を飲みながらいただくと、料理のしつこさが和らぐのがよくわかります。焦げめが甘く感じられ、肉やたまねぎなど、素材のひとつひとつの風味がより美味しく感じられますね。「無冠帝」もすいすいと喉を通り、いくらでも飲めそうな気がしてきました。

↑絶妙なペアリングで、参加者のお酒も進みます

 

最後に「焼きマシュマロのベリーソースかけ」はどうでしょう? 合わせてみると、ヨーグルトとブルーベリーの酸味が「無冠帝」と混然一体となったかのような……。

 

生詰の香りをミントが引き立てる

さらに、赤星さんによると、マシュマロに添えたミントにも意味があるようです。

 

「『無冠帝』は『生詰(なまづめ)』の『吟醸』なので、香りがすっと上がって来るのがポイント。それをミントが引き立てているんです」

↑無冠帝の特徴を語る赤星さん

 

赤星さんが言う「生詰」とは、通常2回行う火入れ(加熱)を1回のみ行う日本酒の種類のこと。フレッシュな香りと味わいがしっかりと残り、かつ火入れによって味が安定します。「吟醸」とは、60%以下に精米したお米を使い、低温発酵させて手間をかけて造ったお酒で、華やかな香り、軽やかな酒質が特徴です。

 

ちなみに、火入れをしない生酒や、先述の生詰は管理が難しいのですが、実は、菊水酒造ではほとんどのお酒を生酒か生詰にすることにチャレンジしているそうです。ここでも、蔵元の味へのこだわりを感じますね。

↑「無冠帝」のラベルに注目。ラベル下部には「吟醸 生詰」の文字が

 

菊水「無冠帝」の公式サイトはコチラ

 

ペアリングの世界を知り、ますます日本酒が楽しくなった

こうして、1時間ほどでイベントは終了。イベント名にある通り、「無冠帝」と3種類の料理との「完璧なペアリング」を堪能させて頂きました。ほかにも、赤星さんは、「日本酒のペアリングでは酸を重視する。酸を覚えるため、毎日7種類の酸を水に溶かして飲んでいたら、次第に酸の違いがわかるようになった」「お酒を料理のソースに合わせれば失敗はない」「日本酒に氷をひとつ落とすと味が劇的に変わる」といった刺激的な知識や、すぐ使えるテクニックも披露してくれました。

「日本酒といえば塩辛」という昔ながらの考え方とはまったく違う世界を見せていただき、まさに、目からウロコが落ちる思い。実際、参加者からは、「ガリがこんなに日本酒と合うなんて知らなかった!」「日本酒と酸の関係が勉強になった。日本酒に合う料理を作るときは、ポン酢や大根おろしをうまく使いたい」「調味料として日本酒を考える、という点がすごく新鮮だった」「お酒と料理のペアリングを考えたことはなかったので、『なるほど』と思うことが多くて、楽しかった」…などなど、みなさん、興奮の面持ちで感動を語ってくれました。

 

【動画】イベント参加者の声

「日本酒と料理のペアリング」というテーマ自体への感心も高かったようで、「料理が味わえなくても話だけでも聞きたい」と、イベントに参加する方も多くいらっしゃいました。最新の調理家電や酒器に触れられた点も斬新で、モノ好きの好奇心も満たす内容。まさに一粒で何度でもおいしいイベントでした。思うに、これは後援が「無冠帝」だからこそ実現できたこと。発売35年であえてリニューアルに踏み切った「挑戦」の気概が、このような斬新なイベントを生んだのでしょう。

 

本イベントに触れたことで、日本酒の世界はまだまだ奥が深い……だから、楽しい。そんな思いを新たにしました。読者のみなさんもぜひ、本稿をきっかけに、日本酒の新たな楽しみ方を探してみてください。

撮影/我妻慶一

 

菊水「無冠帝」の公式サイトはコチラ

 

【「無冠帝」との完璧なペアリングが実現する3品のレシピはコチラ】

その1

トマトと水牛のモッツァレラ ガリ風味のカプレーゼ
■材料(一人前)
【A】
・ミニトマト:1/2個
・モッツァレラチーズ(小):1個
・ガリ:小1枚(約5g)
・大葉:1/2枚

・塩:適量
・こしょう:適量
・オリーブオイル:適量

■作り方
①【A】の材料を、モッツァレラチーズ、ガリ、大葉、ミニトマトの順に重ね、ピンまたは串を刺す。
②上から塩、こしょう、オリーブオイルをかける。

 

その2

カレー風味のハンバーグ
■材料(一人前)
・鶏もも肉(ひき肉):100g
・たまねぎ:50g
・舞茸:50g
・長芋:20g
・しょうが:5g
【A】
・塩:4g
・こしょう:2g
・卵:1/2個
・カレー粉:1g
・醤油:10㏄
・酒:5㏄
・みりん:5㏄
■作り方
①たまねぎ、舞茸をみじん切りにする。
②長芋、しょうがをすりおろす。
③鶏もも肉(ひき肉)と①と②をボールに入れ、【A】を加えて混ぜ合わせる。
④適量を手でこねて、ホットプレートで焼き上げる。

 

その3

焼きマシュマロのベリーソースがけ
■材料(一人前)
・マシュマロ:適量
・ヨーグルト:適量
【A】
・ブルーベリー:200g
・水:100cc
・白ワイン:30cc
・ レモン汁:10cc
・グラニュー糖:40g

■作り方
①【A】の材料を鍋で火にかけて、煮詰める。
②マシュマロの表面を、バーナーで焦がすように炙る。(※バーナーで炙る代わりに、ホットプレートで表面を焼いてもOK)
③マシュマロの上に①のソースをかけ、さらにヨーグルトをのせる。