不自由なのが逆にいい! 動画も撮れるチェキ「instax mini Evo cinema」を街中で使ってみた

ink_pen 2026/5/4
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不自由なのが逆にいい! 動画も撮れるチェキ「instax mini Evo cinema」を街中で使ってみた
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旅とお酒とガジェットが好きなライター。シンプルなものが好き。鹿児島を拠点に月に10日は旅をしながら暮らしている。Twitter:@monono_16

最近、為替の影響や部品供給の不安定化といったさまざまな要因が重なり、一眼レフやミラーレスカメラの価格も右肩上がり。かつてのように「趣味の入り口」として気軽に手に取るには、より一層ハードルが高くなりました。

しかもスマホのカメラがここまで進化し、誰でも「失敗のない綺麗な写真」を撮れるようになったいま、あえて専用のカメラを持ち出すには、それ相応の「理由」が必要になります。

そんななかで、富士フイルムが2026年に発売した「instax mini Evo cinema」(以下、Evo cinema)は動画撮影も可能なハイブリッドなチェキ。画質重視の一眼レフとも利便性のスマホとも違う、偶発性に満ちた新しい撮影体験を楽しめるカメラです。

カメラのスペックとしては控えめなEvo cinema

まずはスペックを見てみましょう。

撮影素子:1/5型CMOS原色フィルター
有効画素数:約500万画素
記録画素数:静止画撮影時1920×2560ピクセル、動画撮影/通常時600×800ピクセル、動画撮影/高画質モード(2020のみ)時1080×1440ピクセル
静止画記録方式:JPEG(DCF準拠 Exif Ver 2.3)
焦点距離:f=28mm(35mmフイルム換算)
絞り:F2.0
オートフォーカス:シングルAF、顔認識AF
撮影可能距離:10cm〜∞
シャッタースピード:1/4秒~1/8000秒(自動切り換え)
撮影感度:ISO100~1600(自動切り換え)
動画記録方式:MP4 MPEG-4 AVC/H.264、AAC
動画フレームレート:24p

有効画素数は約500万画素と、最近流行りのオールドコンデジと同程度。後述する「ジダイヤル」を2000~2010あたりに設定すれば、少しローファイな写りを楽しめます。もちろん2026年に発売された最新モデルということもあり、Evo cinemaで撮影した写真はアプリ経由でスマートフォンに取り込むことも可能です。

価格は公式ショッピングサイトで55,000円(税込)。チェキとしては高額な部類ですが、動画も撮影できることを考えると納得できます。

ただ、スペックのみで比較してしまえば、最新のスマートフォンに勝てる要素はありません。ではいったいどこに魅力があるのかを見ていきましょう。

8mmフィルムカメラが現代に蘇ったデザイン

デザインを見るとまず目に飛び込んでくるのは、唯一無二のフォルムです。1965年に登場した8mmフィルムカメラの名機「フジカ シングル-8」を直接的なデザインソースにしたという縦型の筐体を採用。横型のカメラを見慣れた目に、この垂直の佇まいは新鮮に映ります。

↑縦長のフォルムはレトロを感じさせる。

約270gという軽さに対し、外観は金属のような重厚感を持たせており、カバンから取り出すだけで「今日はこのカメラで撮影を楽しむぞ」というスイッチが自分の中で切り替わるのを感じます。

もうひとつ特筆すべきは、物理的な「手触り」です。プリントレバーを引いたときの「カチッ」という明確なクリック感。デジタル機器を操作しているというより、精密な機械を操っている実感を指先に残してくれます。

独自エフェクト「ジダイヤル」を活用した試行錯誤が魅力

Evo cinemaのカギとなるのは、側面に配された「ジダイヤル」でしょう。ダイヤルを回すことで、1930年から2020年までの10個の時代の写りをイメージしたエフェクトを楽しむことができます。

↑本体側面に大きく目立つ「ジダイヤル」。

レンズリングを回すことでノイズやテープ揺れなどのエフェクトを1〜10段階で変えることもできます。ジダイヤルとレンズリングを組み合わせると、100のバリエーションにおよぶ映像表現が可能です。シャッターさえ押せば正解が得られる、現代のカメラとは異なる楽しみを味わうことができます。この試行錯誤や体験が本機の魅力といえるでしょう。

↑レンズの周りのリングは回ルンです。

動画を「手触りのある体験」として残せる

スマートフォンやカメラで撮影した写真を、SNSにアップしたことのある方は多いでしょう。何人に見られたか、いいねは何件ついたか、という数値でのみ価値を図ろうとして、疲れてしまったと感じたことのある人は少なくないはずです。

しかしEvo cinemaを介しては、それとはまったく別の物理的なコミュニケーションも味わうことができます。最たるものが、instax miniシリーズ初となる動画記録機能と、それを物理的なプリントに橋渡しする「QRコード」の存在です。

最大で15秒しか撮影できない短い動画の中からベストな瞬間を切り取ってプリントし、その隅に動画のQRコードを載せてプリント。これを旅先で出会った人や、一緒に出かけた友人・パートナーに手渡すことができるので、手触りのある体験として記憶に残るでしょう。この体験もまた、Evo cinemaの魅力といえます。

↑従来のチェキにもある、自撮り用のミラーは本機にも搭載。

実際に撮影したサンプル写真を見ていきましょう。

↑1955年に開業した浅草地下街。この歴史ある空間に、ジダイヤルを「1950」にセットしてレンズを向けた。

↑せっかくなので、ジダイヤルを「1980」にもセットして撮影。1980年代はまだ東京メトロではなく、営団地下鉄だった時代。過去の「存在しない記憶」を撮影しているようで、不思議な体験になった。

↑続いて、多国籍な活気と昭和のレトロな雰囲気が交差する夜のアメ横で撮影。

最後の1秒に、外国人観光客の男性がこちらに向かってレスをくれました。ジダイヤルで設定した1980年当時は、まだ外国人もいまほど多くは来日しておらず、このようなコミュニケーションは生まれなかったでしょう。

↑喫茶店での一枚は、チェキ特有の甘い描写にピタリとハマり、まるで数十年前に撮られた写真のような錯覚を覚えます。昭和歌謡がかかる喫茶店で、その当時の年代を思いながらジダイヤルをあわせて撮影する、なんて楽しみ方もできるんです。
↑日帰りの小旅行で河津桜を撮影。15秒間の動画として春を記録し、その中から1件のベストショットを選んでプリントした。静止画に印字されたQRコードから動画を見返せる体験は、旅の記憶に「音と動き」という奥行きを与えてくれる。

↑QRコードは写真の上下左右に自由に配置できる。
↑一眼レフほど大きくないので、カフェなどで撮影していても威圧感はほとんどない。最短焦点距離も10cmと、テーブルフォトにも耐えうるスペックなのでシーンを問わずに撮影が楽しめる。

多少の不便さも「味」として捉えるのが吉

もちろん手放しで賞賛できることばかりではありません。

まず、全体的な動作は非常に「もっさり」としています。起動にはそれなりの時間を要し、エフェクトの切り替えにもラグがある。決定的なシャッターチャンスを逃さないためのカメラではないことは、覚悟しておくべきでしょう。

また、バッテリーの持ちには正直面食らいました。フル充電して意気揚々と持ち出した初日のこと。動画3〜4件、写真10件ほどを撮った段階で、突如として電源が落ちてしまったのです。

この日はたまたまシャットダウンしてしまったようで、その後は同様の事象は見られなかったのですが、それでもバッテリーの消耗は激しいことが多いと感じられました。Evo cinemaはUSB Type-Cで充電もできるので、1日しっかりと使い倒すなら、モバイルバッテリーの携行は必須といえるでしょう。

チェキプリントの仕上がりについても、ジダイヤルでノスタルジックな設定を施すと、もともとの甘い写りと相まって、かなり「ぼやぼやっとした曖昧な仕上がり」になります。

↑これを「情緒」と捉えるか、「解像感不足」と捉えるかで評価は分かれるでしょう。
↑印刷して手元に残るというのはやはりいい。

不自由さを楽しむためのカメラ

Evo cinemaは、すべての人にすすめられる優等生ではないでしょう。首から下げるためのストラップ穴がなく、片手が常に奪われるといった不便さもあります。けれど、効率やスペックばかりを追い求める日常において、この不自由さはある種の「余白」として機能します。

このカメラは、正解を美しく記録するための道具ではありません。そのとき、その場所で、私たちが何を感じたかという「気持ち」を表現するための装置です。このユニークな見た目の一台を連れ出すことで、私の旅や日常は、これまで以上に撮影を通して記憶に残るものになるのでした。

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