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2019/6/21 22:00

「純米酒部門1位」の蔵元が、なぜ「苦しかった…」と語ったか? 「SAKE COMPETITION 2019」で垣間見えた日本酒作りの難しさ

「作」のうまさには酵母の分析が必要不可欠

名門の上位ランクインが目立つ一方で、昨年の純米酒1位だった福島の宮泉銘醸(代表銘柄は「寫楽(しゃらく)」や「會津宮泉」)、「東洋美人」で知られる山口の澄川酒造場、「あたごのまつ」や「伯楽星」で有名な宮城の「新澤醸造店」などの実力派は10位圏外に。コンペの上位常連でも、毎年受賞できるわけではないのがわかります。そんななか、不変の強さを見せたのが「作」(ざく)で知られる清水清三郎商店(三重)です。

↑清水清三郎商店株式会社の内山智広杜氏(左)と清水慎一郎代表(右)

 

今年は「作 朝日米」が純米大吟醸部門の1位、「作 智」がSUPER PREMIUM部門の3位、そして同蔵の「鈴鹿川 純米吟醸」が純米吟醸で3位に。昨年は純米吟醸部門で「作 恵乃智」が1位になるほか全3銘柄がTOP10入りしましたが、いい酒造りの秘訣とは何でしょうか?

 

「秘訣に関しては正直わかりません。ただ、とにかく杜氏の内山と一緒に、どうやったらいい酒が造れるのかを試行錯誤しながらやっています。また、酵母の分析には力を入れていますね。酵母にどう働きかけたら、どんな酒ができるのか。逆に、この酒の味はどの状態の酵母からできたものなのか、と。米も大事ですけどね。今回純米大吟醸部門の1位を受賞した朝日米は岡山原産の古い品種です。酒米としてはあまり注目されてきませんでしたが、そのぶんこの米でいい結果を出せたのは個人的にうれしいです」(清水代表)

 

受賞したのは「龍」の名を冠した最高峰のお酒

今回、最後に紹介するのは入手困難酒の代表「十四代」で知られる高木顕統(あきつな)さんの声。1994年に誕生した「十四代」はいまの日本酒ブームの源流を生んだ銘柄で、それまで淡麗辛口が主流だった日本酒の流れを大きく変えました。また、蔵元(経営者)と杜氏(醸造責任者)を兼ねた蔵元杜氏の先駆けでもあります。

↑高木酒造株式会社の蔵元杜氏・高木顕統(あきつな)さん

 

高木酒造は今回、720mlでの小売価格が1万円以上であるなどのエントリー資格があるSuper Premium部門で「十四代 龍泉」が1位を受賞。登壇時には「2012年、2013年に純米大吟醸部門で受賞することができましたが、それ以降は受賞できずに苦しみました。いただいた受賞トロフィーを自分の父に持って帰ることができ、少しは親孝行ができたのかなと思います」とコメント。また、個別のインタビューでは、受賞した「龍泉」について以下のように語ってくれました。

 

「うちは、『龍五郎』(たつごろう)という名を代々襲名する家系で、親父が十四代目の龍五郎で、僕が十五代目の龍五郎なんです。とにかく『龍』に強い思い入れがあるんですね。そして、泉はお水やお酒の意味。ですから龍泉というのは非常に特別な意味を持っていて、うちの最高峰のお酒になっています」(高木さん)

 

高木さんは酒の造り方に関しても言及。そもそも毎年「今年の作品です」と提案するため造り方も若干変えていくそうですが、その年の米に合わせて、酵母の配合具合や麹菌の温度のかけ方などを調整するとのこと。また、今年の米に関しては、「産地や収穫時期によってバラツキがあった」とも。たとえば有名な酒造好適米である「山田錦」は同じ10月でも初旬は硬く、寒くなる下旬は柔らかいなどの違いがあったそうです。そのなかでのSuper Premium部門1位受賞ということで、実力の高さを改めて示した形になりました。

 

最後に高木さんは、フードペアリングについてコメント。「日本酒はすべての料理にマッチすると思います。でも、その日本酒の地元の料理に合わせると、もっとおいしい」とも。なお、今年は「おつまみグランプリ」が同コンペで初開催され、84点の中から千葉県の「九十九里浜蛤酒蒸し」が1位を受賞しました。こちらもぜひ試してみましょう!

↑今年初開催の「おつまみグランプリ」で1位になった、株式会社正上(千葉県)の「九十九里浜蛤酒蒸し」

 

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