コンセプトに応じた「ここしかない!」という蔵元を指名して造る
スペックはシンプルに伝えているとはいえ、商品作りには徹底的にこだわっています。それは「100点を取って当たり前の世界だから」と生駒さん。おいしさやデザインはもちろん、カスタマーサポートやSNSにおける発信、自身の発言を含め、すべてにおいて100点でないと、ラグジュアリーになりえないからだと言います。
「『深豊 -shinho-』は数馬酒造、『百光 -byakko-』は楯の川酒造と、それぞれ蔵元がバラバラであることがひとつの例です。これは商品の企画段階で、目指す味わいの究極をつくりたいから。『百光 -byakko-』であれば、『”上質”を極めた、至高の1本』というコンセプトがあって、上質といえば純米大吟醸の華やかな香りだと。となると、楯の川酒造しかありえないんです。ここは日本で唯一の純米大吟醸酒(精米歩合50%以下が純米大吟醸)だけを造る蔵元ですし、1%まで米を磨いた酒を造った経験もありますから」(生駒さん)
取材などを通じて培った信頼関係をもとに、「あなたでしかこのコンセプトのお酒は造れないんです!」と熱烈にアタック。すると蔵元側も、「うん、それなら造るのは私たちだよね」と納得してくれるとか。
精米歩合18%の純米大吟醸「百光」は「いつまでも飲んでられるヤツ」
こうして造られた「究極の日本酒」とは、いったいどんな味なのか…? 大いに期待が高まったところで、いよいよ試飲! 味についてはGetNavi webの編集者で利き酒師の資格を持つ小林史於がコメント。まずは山形県・楯の川酒造の「百光 -byakko-」からレポートしていきましょう。
「なんだろう、この透明感……。ボディはクリアでふくよか。ヘタな大吟醸だと、最初にイヤミな甘さが来たりするんですが、そんなあざとさは皆無です。そして、梨を思わせる一瞬の香りがまた絶妙で、清涼感を際立たせていますね。最後に上品で淡~い酸味が口の中でたなびいて……日本酒の喜びをじんわりと感じられる味わい。ああ、やばい、これいつまでも飲んでられるヤツだ!」(小林)
「深豊」の鮮烈な味わいに「いますぐ家に持って帰りたい!」
2本目は、石川県・数馬酒造が手掛けた「深豊 -shinho-」を試飲します。こちらは、地域再興の想いのもと、耕作放棄地を開墾して育てられた酒米を使用。精米歩合は70%とあえて米を磨きすぎないことで、米本来の強い甘味と旨味を引き出したとのこと。
「ウマイっ! 味は濃いのに、何でこんなに鮮烈なんだ! ちなみに、『生酛造りの無濾過生原酒』とは、ラーメンでいうと『アブラ多めニンニクマシマシ』みたいなもので、もっとも味の濃い組み合わせ。ともすると重苦しい味わいになることもあるのですが、これは脳天にカーンと高く響くような……。雑味や重さやベタつきはなく、日本酒の良いところだけを凝縮したイメージです。これは好き! いますぐ家に持って帰りたい!」(小林)
まるで天上界の花の蜜――「天彩」はナイトキャップで楽しみたい
3本目は、奈良の美吉野醸造と開発した「天彩 -amairo-」。奈良県吉野の湿潤な気候がもたらす力強い発酵を生かした、濃密な甘みが特徴のデザートSAKEです。
「日本古来の仕込みでうまいお酒を醸すと、近年評判の蔵元さんですよね。期待通りのデキ。天上界の花の蜜をなめたとしたら、きっとこんな味なのでしょう……。甘みが濃密でリッチです。かといってのどにモタつかないしキレもいい。あとは、梅酒を思わせるイメージもあるし、奈良の酒蔵だけに、少しだけ奈良漬けを思わせる要素もあるかと。スイーツと合わせて食後酒として楽しむのもいいですし、ナイトキャップ(寝酒)として一日を振り返りつつ、ナッツなんかをつまみながら飲めたら幸せですね」(小林)