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ラーメン
2022/3/3 19:30

ラーメン大愛好家のサニーデイ・サービス 田中 貴が語る「おいしさと同じぐらい大切なこと」

自身2作目の著書「ラーメン狂走曲」を2021年12月27日に上梓した、サニーデイ・サービスの田中 貴さん。音楽界屈指のラーメン好きとして知られ、モノ・トレンド情報誌「GetNavi」では2013年からラーメン連載を執筆しています。そのコラムと、新潟のローカル誌「Komachi」で執筆していた「新潟拉麺大学」をまとめたのが「ラーメン狂走曲」。

 

ここでは、田中さんに取材や執筆の日々を振り返ってもらい、エピソードや思い出に残るお店などを教えてもらいました。

 

↑田中 貴さん。サニーデイ・サービスのベーシストであるほか、CSフジ「ラーメンWalkerTV2」のメインMCをはじめ、テレビ・ラジオ出演、ラーメン関連のコラム執筆も多数

 

 

取材NGの店も特別OKで載っている

取材で特に思い出に残っているお店を聞くと「閉店されたラーメン屋さんは、もう味わえないという点でも感慨深いです」とのこと。掲載店には高齢のご主人が営むケースもあり、取材後に引退して閉じたお店も少なくありません。そして、なかには「ラーメン狂走曲」発売後に閉店した老舗も。

 

「『かも屋』(新潟市)ですね。2021年いっぱいで閉店となりました。取材当時で店主さんが77歳でしたから。ほかにも、校了直前の12月5日に閉店されたのが『めん処 くら田』(新潟市)です。こちらも取材時で68歳。ともに残念ですけど、感謝の気持ちのほうが大きいですね。

 

その意味では、店主さんがご高齢で後継者が決まっていないお店は、僕自身機会を見つけては何度も何度も食べに行ってしまいますね。この本に載っているのでいえば千葉県稲毛の『進来軒』や銚子の『中華ソバ 坂本』、東京なら『福寿』や『江戸川ラーメン角久(かどきゅう)』とか」(田中さん)

 

いずれにせよ、長年愛される味わい深いお店が「ラーメン狂走曲」にはあまた掲載されており、それも同書ならではの魅力です。

 

↑「中華ソバ 坂本」の「ラーメン」 撮影/黒飛光樹(TK.c)

 

↑「江戸川ラーメン角久」の「ラーメン」

 

「『進来軒』は基本的に取材NGなんですけど、お店に伺ってお話ししたところ、昔から僕が実際に大好きで何度も訪れていることをわかっていただき取材させてもらえました。その後も、テレビは絶対駄目と仰ってたんですが『田中さんならしょうがないなぁ』と『マツコの知らない世界』に出た際にチラッと紹介させていただきました」(田中さん)

 

「進来軒」は、日本ラーメン史を語るうえで欠かせない「来々軒」の味を唯一受け継ぐ直系店でもあります。詳しくは「ラーメン狂走曲」に載っているので、ぜひチェックを。

 

 

新潟には知られざる名店が多すぎる

「新潟拉麺大学」で紹介されたお店は、「GetNavi」の掲載店以上に老舗が多め。なかには、ラーメン本にはあまり載らないような知られざるお店も。そこには、田中さんのある想いが。

 

「新潟はラーメン文化が根強い県ですから、研究熱心な若手ラーメン職人も多いですし、最新型のラーメンを出す人気店はたくさんあります。『Komachi』の読者さんも、トレンドの味への興味はあるでしょう。でもそれは地元のラーメンガイドブックに載っているでしょうし、僕が東京から行って流行りの一杯を紹介してもあまり意味はないのかなぁと」(田中さん)

 

田中さんは「新潟拉麺大学」を書く何年も前から、新潟中のラーメン店を食べ歩いていました。しかし取材するようになって、より魅力の奥深さを思い知ったといいます。

 

「新潟は“五大ラーメン”も有名ですが、ほかにもそこにしかないウマさのお店があちこちに点在していて羨ましい限り。僕は、読者さんの街にも知られざるオンリーワンのラーメンがあることを知っていただきたかったんです」(田中さん)

 

また「新潟拉麺大学」の取材では、偶然の再会ともいえるエピソードがあったとか。しかも一度ではなかったと田中さんはいいます。

 

「ひとつは『シンポ―軒』(上越市)。僕は2000年ごろ担担麺にドハマリしていて、お気に入りのひとつが代田橋の『萬来軒総本店』でした。そこでかつて働いていたのが『シンポ―軒』のご主人だったんです」(田中さん)

 

↑「シンポ―軒」の「棒々鶏冷やし」

 

「そしてもうひとつは『らーめんの土佐屋』(魚沼市)。ここは1993、4年の僕が好きだった時代、良かった時代の『土佐っ子ラーメン』(環七ラーメン戦争をにぎわせた有名店)で腕を振るっていた方のお店だったんです。

 

ともに当時のおふたりと面識はなかったんですが、僕が店のことをよく覚えてたので、話すとかなり盛り上がりましたね。東京の修業先は現在閉店していますが、それぞれがレジェンドの良さを継ぎつつ、独自の味へ進化させた名店。おすすめです!」(田中さん)

 

↑「らーめんの土佐屋」の「背脂ラーメン」

 

「シンポ―軒」も「らーめんの土佐屋」も、自家製麺で個性的。特に新潟在住の方は要チェックです。

 

 

おいしいうえに「これはいいねぇ」がある

環七ラーメン戦争が話題に出たところで、気になる質問をひとつ。2015年発売の前著書「サニーデイ・サービス 田中 貴 プロデュース ラーメン本 Ra:」の付録CDとして音源化され、7年の歳月を経て配信&7インチ盤リリースが決定した「きみとラーメン」の歌詞の一節「環七歩くぼくらの今日の日は~」や「このへんの店もだいぶ変わったね~」は、何かのエピソードが関係しているのでしょうか?

 

↑「サニーデイ・サービス 田中 貴 プロデュース ラーメン本 Ra:」より。ラーメン好きの豪華ミュージシャンによるバンド名は「田中 貴と前後関係。」

 

「『きみとラーメン』は僕が曽我部(サニーデイ・サービスの曽我部恵一)に、ラーメンをテーマに書いてとお願いしたんですけど、特にエピソードや元ネタがあるわけではないんです。確かに環七のラーメン店もけっこう入れ替わりましたけどね。まあでも、曽我部なりに世界観を表現してくれたんだと思います。けっこう、ラーメンで曲を作るとどこかひょうきんな感じになりがちなんですけど、『きみとラーメン』はそんなこともなく、理想的なイメージに仕上がりましたね」(田中さん)

 

配信と7インチ盤には同時収録されていた、矢野顕子のカバー「ラーメンたべたい」も含まれます。リリース日など、詳しくは田中さんのTwitterなどをチェックしてください。

 

そして最後に、書籍の帯に書かれた興味深いメッセージについて。「この本はラーメンガイドブックではありません。ただおいしいだけのラーメン店を知りたいなら、ほかの本をご覧ください。」の、真意を聞きました。田中さんにとって、“ただおいしいだけ”ではないラーメン店とは?

 

「もちろん、おいしさは大前提。そのうえで、『これはいいねぇ』ってのがあるんです。個性があっていいとか、歴史を受け継いでいていいとか。僕はそこに惹かれますし、それがどういいのかをつづっています。まあ、僕の基準でしかないんですけどね」(田中さん)

 

その店がどんなおいしさなのか――。より深掘れば、スープにどの食材を使っていて、麺の小麦はどこで太さや加水率はどれぐらいなのかといった情報は、インターネットで検索すればラーメンマニアがいくらでもアップしている時代。

 

もちろん田中さんも自ら食べて味もスペックもインプットしていますが、田中さんが伝えたかったのはそれ以上のこと。ただ修業先を書くのではなく、先代や師匠から何を教わり、どう表現しているのか。店主はどんな経緯で創業し、どんな哲学をもってラーメンを作っているのか。そういった、検索しても出てこないエピソードや店主の横顔が「ラーメン狂走曲」にはちりばめられています。

 

同書を読めばきっと、絶品ラーメン店のおいしさの理由がもっとわかるはず。とにかく「いい」本であることは間違いありません!

 

 

撮影/我妻慶一(人物、「江戸川ラーメン角久」)

 

 

 

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