宮城峡はアプリコットの果実味が絶妙に調和
一方の「シングルモルト宮城峡 アロマティックイースト」については、渡邊さんが解説してくれました。キーとなったのは、アプリコット(杏)を彷彿とさせる、甘く魅惑的な香りを生む酵母。また「シングルモルト宮城峡 アロマティックイースト」では、酵母の種類はスタンダードでありつつも、発酵時に工夫をすることで個性的な香りが出る特性を活用しているそうです。
「スタンダードの宮城峡は、青りんごなどエレガントな果実味が魅力のひとつ。アロマティックというテーマを踏まえ、持ち前のキャラクターをベースに、より個性をお伝えできる味わいをイメージしました。そこで目指したのは、フルーティでありつつもキャラクターが異なる果実感です。そこでひらめいたのが、発酵時の工夫で生まれたアプリコットの香味をもつ原酒。20年以上も眠っていたコレクションから今回抜擢した形となります」(渡邊さん)
とはいえアプリコット香の原酒はキャラクターが非常に立っていて、そのコントロールが苦労点だったとか。あるポイントを超えると宮城峡らしい華やかさが弱まってしまう一方、ポイントを下回れば香りそのものが消えてしまう。このバランスに気を配りながらブレンドをしたと渡邊さんはいいます。
「例えば、樽に関してはユーズドを多めに使っています。そのぶんスタンダードの宮城峡よりも、シェリー樽など香りの強いタイプは多少減らしました。また、ピートの強い原酒を加えてスモーキーさを出しつつ、アプリコットの甘みを引き締めてマスクしすぎないように調整しました」(渡邊さん)
そして今回の「シングルモルト宮城峡 アロマティックイースト」をチェック。なるほど、明るみがあって熟した果実のニュアンスは、確かにアプリコット。その奥には、ほのかにベリーの甘酸っぱさやチョコレートのコクやビターなテイストも感じます。甘みとともにほどよいピートや樽の香りも続き、「シングルモルト宮城峡」より大人な印象を受けました。
アルコール度数が高い理由とペアリングを解説
スペックに関する補足として、「シングルモルト余市 アロマティックイースト」はアルコール度数が48%、「シングルモルト宮城峡 アロマティックイースト」が47%と、スタンダードの45%より少し高くなっています。この理由は、「ノンチルフィルタード」といって、あえて冷却ろ過をしていないから。
多くのウイスキーでは澱(おり)を除去するため冷却ろ過を行いますが、澱は味や香りに厚みをもたせる成分も含んでいて、できれば残しておきたい要素。そこで、アルコール度数を高めて澱を溶け込ませるのです。その最適なパーセンテージが今回の場合、48%と47%だったのです。
最後にフードペアリングについて聞きました。まずは「シングルモルト余市 アロマティックイースト」から。
「余市の原酒自体が香ばしさや穀物の甘みをもっていますので、今回のように華やかなアロマを立たせるうえでは、コクの豊かなナッツがオススメです。フルーツはドライマンゴーを用意しましたが、ほかのドライフルーツでも、またはフレッシュフルーツでもおいしいですね。あとは余韻のビター感、オレンジ系の柑橘感を楽しむにはチョコレートが合うかなと思います」(綿貫さん)
「『シングルモルト宮城峡 アロマティックイースト』は比較的甘みを際立たせているので、しょっぱいおつまみとペアリングすると、その甘みがより際立ちます。サラミやビーフジャーキーは、それに加えオイリーなニュアンスが合うと思いますし、牛脂の甘さはアプリコットの甘さと親和性があります。また、その他のしょっぱい系のおつまみやナッツとも好相性なので、例えば柿の種やピーナッツなどもオススメです」(渡邊さん)
今回紹介した「シングルモルト余市 アロマティックイースト」と「シングルモルト宮城峡 アロマティックイースト」、ともに国内では1万本限定ということもあり、プレミア的な価値が付いていますが、バーなどで飲むことはできるはず。見つけた際はぜひチェックを。そして、2023年にも登場するであろう次回の「NIKKA DISCOVERYシリーズ」も、いまから要チェックです!
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