米国で話題となった書籍「MAKERS」において、著者のクリス・アンダーソンは、「アイデアがあれば、製造に関する専門知識や大がかりな設備がなくても誰もが1人メーカーになれる」時代がやって来ていると述べています。これがいわゆる「パーソナルファブリケーション(個人が自宅の机やガレージでものづくりを行うこと)」という考え方です。
その「1人メーカー」にとって重要な役割を果たすのが3Dプリンターです。この機器によって、デジタルデータを基にして立体物を簡単に造形することができるようになりました。この技術革新が、家内制手工業(生産者が道具や原材料を自ら調達し、家において手作業で生産し、販売する生産形式の一形態)ならぬ「家内制“機械”工業」の実現を後押ししています。
そんな3Dプリンターを開発しているのがアメリカのHP(ヒューレット・パッカード)です。ロサンゼルスで開催された「SOLIDWORKS World 2018」で同社は業務用3Dプリンターシステム「HP Jet Fusion」を新発表しました。
HPは既に3Dプリンターをリリースしていますが、現行モデルでは価格は数千万円台と個人やベンチャー企業には手が届かないものでした。
今回発表された「HP Jet Fusion 300/500シリーズ」の価格は5万ドル(日本円換算約543万円)からとなっており、個人で購入するのは厳しいかもしれませんが、中小規模の企業には手の届く価格帯となりました。
「HP Jet Fusion 300/500シリーズ」には造形色が白黒の「HP Jet Fusion 340/540」と、フルカラーの「HP Jet Fusion 380/580」が存在します。
従来、新製品のプロトタイプを作るには金型から作成する必要がありました。当然ながらそれには時間とコストがかかります。しかし、「HP Jet Fusion 300/500シリーズ」のような3Dプリンターを利用することで、金型を作ることなしにプロトタイプを簡単に作ることができるわけです。
プロトタイプが作れると、ユーザーテストを実施することもでき、市場に受け入れられそうかどうか高い精度で判断することも可能となります。
HPのプレスリリースによると「HP Jet Fusion 300/500シリーズ」は同価格帯の競合他社の3Dプリンターと比べてもだいたい数倍速いとのこと。プロダクト設計→プロトタイプ製作→ユーザテスト→改良→製造のプロセスをグッと短縮できそうです。中小企業に重宝されそうですね。
「HP Jet Fusion 300/500シリーズ」はすでに受注を開始しており、2018年後半に出荷を始める計画とのことです。
(取材協力:ダッソー・システムズ)