小学校プログラミング必修化にベストマッチするカリキュラムが強み
続いて、「③カリキュラム」については、大きく2つ用意されている。まず、従来からある「Everyone Can Code」だ。これはプログラミングを教えるカリキュラムで、最終的にはAppleが用いているプログラミング言語「Swift(スウィフト)」を習得できるようになっている。
大まかな流れはこうだ。まずはICT機器を利用する前に、ゲームのようなアクティビティを行う。例えば「機械には事細かに指示しないといけない」ということを理解してもらう。
そこからiPadを活用し、「Swift Playgrounds(スウィフト・プレイグラウンド)」アプリを介して、コーディングの概念を学んでいく。キーボードで直接コードをタイプすることはないが、ゲーム感覚で、画面内のキャラクターを操作し、「関数」や「ループ」「条件文」について理解することができる。主な対象は、小学校高学年以上だ。
次の段階では、同じくSwift Playgroundsを用いるが、今度は現実世界のロボットを操作する。原理は同じだが、これを通じてコーディングが現実世界に関与していることに理解が深まっていく。
そして最終的には、Macで「Xcode」(アップル製品のアプリを開発するためのツール)を使い、プロのディベロッパーと同じ環境でコーディングにチャレンジするのをサポートする。
さて、日本においては、2020年度から実施される新小学校学習指導要領において、プログラミング教育が必修化する。3月30日に文部科学省から公表された「小学校プログラミング教育の手引(第一版)」では、その目的が「プログラム的思考を育む」ことにあるとしており、「プログラミングに取り組むことを通じて、児童がおのずとプログラミング言語を覚えたり、プログラミングの技能を習得したりするといったことは考えられますが、それ自体をねらいとしているのではない」とも明記されている。
これはまさにSwift Playgroundsがカバーしている部分であり、相性は非常に良いだろう。もちろん定められた学習指導要領と完全一致する、というわけではないだろうが、クラブ活動や教育課程外の学習活動として、教育現場で運用するメリットは充分にある。
一方、「Everyone Can Create」は今回新たに発表されたカリキュラムで、この秋に登場する。ビデオ、写真、音楽、スケッチという4つのジャンルにおいて、レッスンが用意される。生徒側は、iPadを活用して、製作手順や創造性を学んでいける。
日本の教育事情を踏まえると、こうした創作活動との相性がどこまでよいのかわからない。しかし、動画編集の仕方、写真のレタッチやスライドの作り方、簡易的なDTMの考え方、いわゆる“デジ絵”の書き方など、筆者としては「どれももっと早く学ぶ機会が欲しかったなぁ」と思える内容ばかりだ。
要は、iPhoneやiPadで使える「GarrageBand」アプリを使えば、簡単に作曲が行えるが、「そうした手順を正確に把握している大人はどのくらいいるだろうか?」ということではないだろうか。どことなくプログラミング教育に通ずるものを感じる。スマホを持つことが当たり前になったいまでこそ、子どもに「こんなことは簡単にできる」と知らせる機会を与えるのは意義深い。
余談だが、教師側にもラーニングプログラムが用意されている。こちらは「Apple Teacher」という名称で、iPadやMacの利用方法について学べるようになっている。もし上記のような内容に興味が出てきたら、調べてみるとよい。
最後に
現行の9.7インチiPadは、高いコストパフォーマンスを誇る。そのため、一般市場で注目を浴びているわけだが、一方で前述のような、教育市場における役割・立ち位置についても非常に興味深くはないだろうか。
「ICTを活用した教育」というテーマは既に学校を卒業した大人にとって、馴染みのない部分ではある。しかし、日本がどう変わっていくのか、というテーマは少なからず面白い。
今回、筆者が紹介できた事例や予想は限定的なものだが、これを通じてアレコレと考え、議論してもらうきっかけになれば嬉しい限りである。
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