Vol.77-3
二つ折りスマホが2019年に集中したのには、もちろんそれなりの理由がある。
一番わかりやすい理由は、「二つ折りスマホ作るために必要なディスプレイが作られたから」だ。現在のスマートフォンで使われるディスプレイは、特定のスマホメーカーが作っているわけではなく、専業のディスプレイパネルメーカーが作っている。そして、そのディスプレイに使われる素材は、それぞれの素材メーカーが作っている。どのデバイスもこうした要素が順に組み合わせられて、結果的にひとつの製品になって世に出てくる。
だから今回の場合、「有機ELディスプレイを構成する樹脂素材について、繰り返して折り曲げることに耐えるもの」ができて、「それを使った有機ELディスプレイが量産できる目処がたった」から、ということになるだろう。
そうした情報は、主力スマホメーカーと素材メーカー・部材メーカーとの間で共有されており、相互に相談しあって進んでいる。当然スマホメーカー側から「こういうものが欲しい」という要望が出ることも多く、それを素材・部材メーカーが検討して開発が進む、ということも日常茶飯事だ。
ここで重要なのは、「どこかで新しいデバイスができると、ライバルメーカーの間ではそれを使った機器の開発競争が行われる」ということだ。特に有望なものであるほど、似たタイミングで製品化しようと競争が起きる。今回の二つ折りスマホについても例外ではない。
ただし今回の場合、各社は「まったく同じパーツ」を使うわけではない。そのため、サムスンとファーウェイとでは、ディスプレイを折り畳む方向が異なる。これは、まだどう作るべきか、アプローチすら定まっていない製品を作るうえでのポリシーの違いが現れた部分といっていい。
ただ、まだアプローチも決まっていない製品であるということは、各種部材もほぼ「その製品専用」になってしまう。有機ELディスプレイは、大画面になるとそれだけで高価なものになる。それに加え、オリジナリティの高い部材を多数使って製造することになると、どうしても全体的に高価になってしまう。多数のメーカーが同じパーツを使って作るような世界になれば別なのだが、いまはまだその時期ではないので「高い」のだ。一方で、だからこそ面白く、所有欲をそそる……という部分も確かにあるだろう。
ただ、まだ新しいものだけに、いろいろと懸念も残っている。では、二つ折りスマホにはどんな懸念があるのか? それは次回Vol.77-4で解説する。
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