デジタル
2019/12/10 20:00

5Gが変える生活の「リアル」ーー 完全自動運転にドローン活用構想を知ろう

社会に大きな変革をもたらすと話題の5G。その影響の大きさゆえ、全体像がつかみづらい部分もあります。改めて、「5G」の基本、そして最新動向をチェックしましょう。

 

「G」が意味するのは「世代(Generation)」

5G(ファイブジー)は「第5世代移動通信システム」の略で、4G LTEに続く次世代の通信規格のこと。単にスマートフォンの通信速度が高速になるだけではなく、自動運転やIoTの発展などにも大きく貢献する点で注目度が高い。日本では19年秋ごろからプレサービスが開始されており、20年春ごろから本格的な提供が始まります。

↑通信規格の歴史を振り返ると、3Gで携帯端末のネット接続が一般化し、4Gで大容量通信が可能に。そして、5Gではあらゆるモノがネットに繋がります

 

高速化のカギは「ミリ波」と「Sub6」

5Gでは2つの周波数帯を新たに使用します。「ミリ波」は直進性が強く障害物に弱いが、大容量の通信に適します。「Sub6」はまとまった周波数帯を確保しづらい反面、従来の知見を生かしやすくなっています。

↑日本では28GHz帯がミリ波、主に3.7 GHz帯と4.5GHz帯がSub-6に相当

グローバルより出遅れたが日本への導入ももうすぐ!

移動通信システムの標準化団体である3GPPによって「リリース15」の標準化が完了し、5Gの初版仕様が確定したのが18年6月のこと。世界的には19年4月に動き出した米国と韓国を皮切りに、すでに各国でNSA構成の5G商用サービスがスタートしています。日本は、同年4月にようやく周波数の割り当てが行われたこともあり、一歩出遅れた形です。だが、19年9月に、ようやく大手キャリアがプレサービスを提供。20年春の商用サービス開始がいよいよ目前に迫ります。

 

従来規格の最大通信速度を振り返ると、携帯端末での通信が一般化した3Gで約14Mbps、大容量化を果たした4G LTEで100Mbps超でした。これらに対して、次なる5Gでは、理論値10Gbps台へと桁が変わります。これはつまり、映画コンテンツを数秒でダウンロードできる時代がやってくるということ。また、5Gでは通信遅延や同時に接続できる端末数なども大きく進化します。スマートフォンの通信だけに限らず、自動車や工場、医療や農業など、幅広い産業分野に大きな影響をもたらすことが期待されているのです。

 

まずはコレだけは押さえておきたい5Gの3つの特徴

5G時代の到来によって起こる進化は大きく3つあります。これらにより、スマートフォン以外のモノによる通信が大きく発展すると期待されます。

 

《超高速通信》 5Gの最大通信速度はLTEの約100倍に相当

5Gにおける最大通信速度は、LTEの約100倍に相当する10Gbps以上が想定されます。容量の大きい映画やアプリを一瞬でダウンロードできたり、4K・8K解像度の映像をライブ配信できたりする未来が期待されます。

 

《超低遅延》 自動運転や遠隔操作に欠かせない要素

5Gにおける遅延速度の目標値は、約1ミリ秒以下であり、これはLTEの約10分の1に相当します。特に、クルマの自動運転やロボットの遠隔操縦といった技術を実現するために、大きく影響する要素です。

 

《同時多接続》 たくさんのIoT端末を安定して接続できる

5Gは1つの基地局に同接続できる端末数がLTEの約20倍になる見込み。その恩恵はスマートフォンにとどまらず、大量のIoT端末が安定接続できるため、これまでにないサービスが登場する可能性が高い。

 

5Gで生活・産業・社会はここまで変わる!

5Gが本格稼働すると、将来的には様々な分野で変革が起こり得ます。ここでは身近な4分野における可能性を紹介しましょう。

 

■娯楽

映画などのダウンロードは一瞬で完了。遠隔地の映像を大画面でライブ中継するコンテンツも増加。

 

コンサートは遠隔からリアルタイムで!

リアルタイム配信される高解像度映像に、解説などの情報を追加して大画面で再生可能に。無線なので野外でも展開しやすい。各社のプレサービスでもこうした試みが実施されています。

 

環境の快適化でeスポーツがさらに普及

高速な有線通信の環境を整えづらい場合でも、5Gの無線通信で理想的なゲーム環境を構築できます。クラウドゲーミングなど、5Gを前提としたシステムも登場しつつあり、屋内外を問わず5Gが活躍します。

 

■産業

重機などの遠隔操縦やセンシングデバイスの大量配置により、リスク軽減や作業の効率化が可能に!

 

建設現場は遠隔操作で無人施工

リアルタイムに送られる高解像度の映像を確認しながら、遅延の少ない遠隔操作が可能になります。従来は人命の危険が伴ったような場面でも、遠隔操作で機械だけを動かして安全に作業を行えるでしょう。

 

農業の水やり・肥料散布はドローンで!

安価なセンシングデバイスを大量に配置したり、ドローンを遠隔操縦したりしやすくなれば、広大な農地を少ない労働力で管理できるようになります。人手不足の農業業界に、大きな変化をもたらしそうです。

 

■社会

災害復旧や医療の現場でも5Gの活用が期待されます。高精度な遠隔作業は僻地の支援にひと役買いそうです。

 

災害支援には不可欠の存在に

高度なIoT化によるセンシングで、災害の予兆や被害状況の把握が容易に。また、高速・低遅延な通信を使った遠隔操作によって、二次災害のリスクを回避しながら、復旧作業を行えるようになります。

 

僻地での医師不足問題を解消!

僻地や災害現場での救急医療では、高解像度映像をリアルタイムに遠隔地の専門医に送り、より精度の高い指示を受けられるように。遠隔施術時に触覚のフィードバックを加えることも期待されている。

 

■交通

法整備の問題はあるものの、5Gが交通にもたらす影響は大きい。MaaSの進化にも期待。

 

クルマは完全自動運転も視野に

前方車両との車間距離を一定に保つような一定条件下での完全自動運転システムはすでに検証されています。将来的には、低遅延の通信によって遠隔運転を行うサービスも現実味を帯びてくるかもしれません。

 

公共交通の姿も激変

5G活用の一例として、配車サービスへの貢献が期待されています。カメラの映像を瞬時に解析して、交通量や道端にいる人の量をリアルタイムに分析・把握できるようになれば、車両手配を効率化できます。

 

5G導入は段階的に行われる

5Gによる社会革新はまだ少し先の話! 期待される「5G」は「SA」になってから

5Gはまず「NSA(non-standalone)」構成で提供されます。これは4G LTEの通信設備を活用する通信方式。大きな変化は大容量通信が可能になることです。将来的にはLTEの通信設備に依存しない「SA(standalone)」構成への移行を見込みます。SAになると、低遅延や同時多接続が実現可能になります。5Gが社会に大きな変化をもたらすのは、SA時代になってからでしょう。

 

2020年 5Gサービス開始時

↑2020年のサービス開始時の状態。5G通信とLTEの基地局が連携するNSA構成で運用がスタートします。この時点ではまだ、5Gのすべてのメリットを享受できるわけではありません

 

2025年ごろ? 5G本格普及期

↑ピュア5GともいえるSA構成の基地局は5Gサービス開始から約1年遅れで登場し、都市部から徐々に展開されます。5Gによる生活の進歩はこのSA基地局の普及にかかっています