Vol.86-1
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「タブレット市場」。iPadのニューモデル投入で、その優勢は決定的に。今後、各陣営はどう動くのか?
新iPadは安くても必要十分な性能を誇る
現在、タブレットを購入する際のファーストチョイスがiPadであることは間違いない。製品ラインナップとしても、タブレット用アプリケーションの充実度でも、iPadとAndroid、そしてWindowsを比較した場合、iPadが圧倒的に優位である。特に大きいのは、2019年10月に発売された「第7世代iPad」のコストパフォーマンスが圧倒的に優れている、ということだ。第7世代iPadは、最も安価なモデルだと、直販価格3万8280円。この最安モデルでも、現在公開されているiPad用アプリを活用するうえで大きな問題はない。別売のApplePencilやSmart Keyboardを追加しても、上位機種と同じように使える。もちろん、処理速度やディスプレイの画質では上位機種との間には大きな差がある。それでも、「必要十分」な性能を持っているうえに、上位機種同様の周辺機器が使える第7世代iPadは十分に魅力的だ。
こうした状況を加速させているのが、今秋新たに登場したiPadOSだ。機能的に、よりPCに近くなっており、「PCと同じことがまったく同じようにできる」というわけではないが、「PCに求められていることを違う操作性で同じように、しかもあまりアプリを追加することなくできる」ようになった。また、AdobeのPhotoshopなどのように、iPadでPCと同じアプリが使えるといった例も増えている。
一方、Androidは、スマホ向けOSとしては絶好調だが、タブレット向けとしてはいまいち元気がない。購入に値するタブレットの新製品も減っている。OSプラットフォーマーであるGoogle自体が、タブレットの製品化を止めて、Chromebookのひとつである「Pixelbook」に注力しているのが実情だ。
チェックすべき製品としては、低価格モデルがいくつか残るのみ。筆者がオススメできるのも、「Androidベースのタブレット」ではあるが、Google Playを使えないAmazonのタブレットである「FireタブレットHD10」くらいだ。こちらは低価格路線で、スペック的にはさほど優れてはいないが、通常販売価格で1万5980円からと、とにかく安い。一時はディスカウントで1万円を切っていたほどだ。あとは、ファーウェイの「MediaPad」シリーズもコストパフォーマンスに優れている。
Windowsについては、低価格タブレットは「選ぶべきではない」と思うくらい良くない。PCとしても性能十分の高価格な2in1製品は、タブレットとしての使い勝手も悪くないが、やはり軸足はPCとしての利用にある。5万円以下のものは、正直スペックが低く、PCとしての利用価値が低いこともあり、同価格帯のiPadやAndroidットに比べて商品力は劣るだろう。
こうした一人勝ちの状況を反映してか、タブレット用アプリのジャンルでも、完成度はiPad向けが圧倒的に勝っている。
では、なぜiPadの一人勝ちになったのか? 低価格Androidタブレットの状況は変化するのか? そうした部分については、ウェブ版で詳しく解説していくことにしよう。
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