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2020/10/29 19:15

価格、性能も肉薄するiPhone 12とiPhone 12 Proーー「あえてPro」を選ぶべき理由を探った

iPhone 12シリーズ4機種のラインナップの中でも、特に迷いそうなのが「iPhone 12にするか、iPhone 12 Proにするか」の選択です。小型のiPhoneがほしいならiPhone 12 miniが最有力候補になり、大画面や最高峰の性能を重視するなら、iPhone 12 Pro Maxを選ぶことになるでしょう。

↑iPhone 12 Pro

 

今回のiPhone 12は性能上はProとほとんど差がない、これまででもっともProラインに肉薄したモデルです。その中であえて「Proを選ぶ理由」があるのかにフォーカスしてiPhone 12 Proを観察してみました。

↑背面はマット仕上げ

 

仕上げ:渋さとともにギラギラ感も

iPhone 12 ProはiPhone 12と共通のボディ形状を採用しつつ、カラーバリエーションで大きく変化を付けて、差を出しています。ボディはiPhone 4世代のような角張った形状となり、画面枠は若干細くなりました。画面サイズは6.1インチでiPhone 11と同じサイズ。iPhone 11 Proと比べると若干、大型化したことになります。

↑左から、iPhone 11、iPhone 12、iPhone 12 Pro、iPhone 11 Pro

 

カラーラインナップはiPhone 12が11シリーズを、12 Proは11 Proシリーズを踏襲しています。iPhone 12 Proのカラバリの1つ「グラファイト」は、磨りガラス調の背面仕上げが象徴的な渋いデザインです。iPhone 11 Proのミッドナイトグリーンを引き継いだカラーと言えるでしょう。

↑上が、iPhone 12 Pro グラファイト、下はiPhone 11 Pro ミッドナイトグリーン

 

デザインは、iPhone 12にするかそれともProを選ぶか決める上で、重要な要素になりそうです。側面の光沢のギラギラ感が増したことで、iPhone 12 Proのデザインには、角張った形状になったことから光沢処理がより引き立ち、渋みとともに独特のアクの強さも際だつようになりました。

↑MagSafe対応のシリコンケース。iPhone 12/12 Proの両方で使えます

 

ちなみに今回、iPhone 12とProはカメラユニットを除いて同じ形状になっています。そのため、ケースや保護フィルムは両機種で共通のものが使えます。

 

【iPhone 12 Proのデザインをフォトギャラリーで見る】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSでは表示できません。

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ディスプレイの特徴:HDR 10+Dolby Vision対応

今回のiPhone 12シリーズは、4モデルすべてが有機ELディスプレイ搭載となりました。iPhone 12とiPhone 12 Proは同じ6.1インチの「Super Retina XDRディスプレイ」を搭載します。

 

有機ELディスプレイは従来のiPhoneで多く採用されている液晶ディスプレイよりも、画面を明るくできます。黒色表示が美しいことから、ダークモードとの相性も良好です。

↑明瞭に表示するディスプレイ

 

有機ELディスプレイは、以前はiPhone Xのような上位モデルのみの採用でしたが、今回はスタンダードモデルのiPhone 12もサポートしています。iPhone 11 Proと見比べてもあまり違いを感じませんが、iPhone 11からの買い替えなら画面の明るさは印象的に思えることでしょう。

 

ただし、通常使用時の最大輝度が異なり、iPhone 12では最大625ニト、iPhone 12 Proは最大800ニトで表示できます。

 

実際に見比べて見ると、iPhone 12の最大輝度でも、屋内や日陰なら十分すぎるほど明るく感じます。屋外で直射日光に照らされるような環境なら、iPhone 12 Proの最大輝度も必要になってくるでしょう。

 

HDR動画の再生時は、最大1200ニトで表示されます。明るい部分の白飛びや暗い部分の黒潰れを防げるため、特にダークな描写が多い海外ドラマのような映像をくっきりはっきり表示できます。

 

MagSafeワイヤレス充電:カシャとはめて簡単充電

iPhone 12シリーズは新たなワイヤレス充電機構「MagSafe」に対応しました。背面に磁力でくっつくワイヤレス充電器で、高速なワイヤレス充電が可能なiPhone専用アイテムです。MagSafeはMacBookの充電器でお馴染みの名前ですが、iPhoneのMagSafeはそれとは全くの別物。磁石でくっつくという仕組みが同じだけで、互換性はありません。

 

iPhoneの背面にカシャとくっつけてそのまま充電が始まる使い心地は実に軽快でした。脱着の操作はケーブルをつなぐよりも快適に感じます。

 

ただし、アップル純正のMagSafe充電器は税込4950円と高価で、しかも急速充電器は別売となっています。その性能をフルに発揮するには20WのUSB Type-C充電器をつなぐ必要があるため、きちんとした充電環境を揃えるために、iPhone本体代に加えて、ある程度の支出は覚悟しておいた方が良いでしょう。

 

今回のiPhone 12シリーズからイヤホンと充電器の同梱もなくなりました。同時に同梱ケーブルの端子がLightning~USB Type-Cに変更されたため、MagSafeを使わないにしても、持っていないなら新たにUSB Type-C充電器を購入する必要があります。

 

カメラ:動画撮影が劇的に進化。Pro限定の機能も

iPhone 12と共通の進化ポイントですが、iPhone 12 Proでは動画撮影の性能が劇的に強化されています。最大で4K 60fpsのHDR動画を撮影できるようになりました。このHDR撮影では、「Dolby Vision」という映画業界で広く用いられている規格に準拠しています。

↑街中でテストショットしてみました

 

実際に撮影してみても、暗所でのビデオ撮影性能の劇的な向上は確認できました。iPhone 11 Proでは歯が立たなかった夜の街中を撮ってみても、iPhone 12シリーズなら暗い道路や街路樹の色が明確に分かるほどくっきり写ります。日常的に動画を撮る人なら、これだけでもiPhone 12に買い替える価値があるのではないかと思ったほど、HDR撮影機能は印象的でした。

 

iPhone 12 Proで撮影した4K動画。ズーム時のカメラの切り替えも前世代モデルよりスムーズになっています

 

もちろん、静止画撮影の品質も向上しています。動画撮影ほど劇的な進化ではありませんが、特に暗所撮影では明確に進歩しています。たとえば夜景や夕方のシーンでは細部のディテールを潰さず描写します。暗めの室内で食事を取るときも、iPhone 12シリーズの方がシズル感のある写りになります。

 

iPhoneではここ数年、AI技術をカメラに取り入れた「計算写真」のアプローチで写真の画質改善を続けてきました。数世代前のiPhoneから買い替えるなら、「数年でここまで進化したのか」と性能向上を実感できるでしょう。

 

ここまではiPhone 12/12 Pro共通の進化について紹介しました。ここからは、Proのみの機能について見ていきましょう。iPhone 12 Proでは11 Proに引き続き、広角、超広角、望遠の3眼仕様となっています。iPhone 12にはない望遠カメラが差別化のポイントです。

 

35mm換算で、標準画角は焦点距離26mm相当。超広角は0.5倍の13mm相当です。iPhone 12 Proではさらに望遠レンズとして2倍相当の52mmが追加されています。Proラインではデジタルズームも最大倍率が向上しています。iPhone 12が5倍の130mm相当が最大倍率となっているのに対して、iPhone 12 Proは10倍(260mm相当)までズーム可能です。

 

Androidでは“100倍ズーム”を謳うスマホまで存在するのに対して、iPhone 12 Proの10倍は物足りないようにも見えますが、デジタルズームでは画質の劣化が著しいことを踏まえれば、実用性を考えても10倍程度に抑えた方が賢明かもしれません。

 

筆者としては望遠はそこまで重要ではないように思えます。普段良く使う「ちょっとズームしたい」という程度の用途なら3倍くらいまでのズームで十分賄えます。望遠カメラがないiPhone 12でも鑑賞に堪える写真は撮れるでしょう。そうした意味で望遠カメラは、あくまでカメラにこだわりたい人向けの追加要素と言えます。

 

さらに今回、ProラインにはiPhoneで初めて「LiDARスキャナ」を搭載しました。これはiPhone 12 Pro/Pro Max限定の新機能です。LiDARはレーザー光を用いるセンサーで、自動運転車などにも使われています。周囲にあるものの立体的な形状を瞬間的に把握するには欠かせない技術です。LiDARの恩恵は、2つの形で生かされています。ひとつはオートフォーカスの精度向上。周囲が暗い状況下で、フォーカス速度が最大6倍まで改善されるとしています。

 

試用した際には、室内で小物を撮るときにiPhone 12 Proのピント合わせの速さが実感できました。小さなものにピントを当てると、iPhone 12がピント合わせに迷って1〜2秒かかるような状況で、iPhone 12 Proは迷わずキリッとピントを合わせてきます。

↑LiDARはARアプリを動かす際に活躍します

 

LiDARの性能がより求められるのは、ARアプリを使うときです。周囲の空間を正確に認識して、3Dモデルを表示する際に、立体的な空間把握は欠かせません。現在ではARアプリは多くはありませんが、「ポケモンGO」や「マインクラフト Earth」のようなAR対応ゲームや、3Dモデルを作成できるアプリが登場しています。iPhone 12 ProのLiDAR対応によって、ARアプリはより充実していくことになるでしょう。

 

また、2020年末までにはProライン限定の新機能として「Apple ProRAW」が提供されます。ProRAWは写真家にはお馴染み「RAW(ロウ)」と呼ばれるデータ形式です。JPEG写真の前段階の情報量が多いデータを直接編集できることから、レタッチの腕さえあれば自動で生成されるJPEGよりも意図した写真表現にマッチした写真が作れます。以下、iPhone 12 Proの写真作例をご覧ください。※無加工のものになります。

 

【iPhone 12 Proの写真作例をフォトギャラリーで見る】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSでは表示できません。

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パフォーマンス:iPhone 12とメモリ容量が違うが、体感は変わらない

iPhone 12は、これまでで最も「Pro」に近いiPhoneです。中核となるチップセットはシリーズ全4モデルで共通の「Apple A14 Bionic」を搭載しています。iPhone 12とiPhone 12 Proを使い比べたとしても、たとえばブラウザーでのWebサイト表示や、動画再生など一般的な使い方で差を感じることはないでしょう。

 

ただし、ベンチマークアプリを使うと、処理性能に差があることが分かります。筆者が試用したiPhone 12/12 Proではマルチコア処理の性能でProの方が秀でているという結果がでました。

↑ベンチマークアプリ「Geekbench 5」ではiPhone 12 Pro(右)がiPhone 12よりもやや高性能という結果に

 

この結果はメモリ容量の差が反映されているものと思われます。アップルはiPhoneのメモリ容量についての情報を公開していませんが、ベンチマークアプリ「Geekbench 5」の表示をみると、筆者が試用したiPhone 12 Pro 512GB版はメモリ6GB、iPhone 12 256GB版はメモリ4GBを搭載していることが分かります。

 

数字上はiPhone 12と12 Proの間で処理性能の差がありますが、実用上はあまり関係ありません。試用した範囲では、高負荷な3Dゲームを同時に遊んでみても、表示性能は同等程度と感じました。

 

差が出るとすれば、マルチコア処理が重要となる動画編集で待ち時間が変わる程度でしょう。とはいえ、iMovieで1分ほどの4K動画をつなげて書き出し処理したところ、iPhone 12 Proの方が数秒程度高速に処理できた程度にとどまっており、Proの性能が必須と感じるには至りません。

 

5G対応:実感するのはまだまだこれから

5G対応については、「今後に期待」というしかありません。iPhoneを発売する大手3キャリアは、現時点では揃ってきわめて限定された5Gエリアしか持っていません。東京・山手線内に限ってみても、エリアマップ上でも「点」として表示されるような範囲でしか展開していない上、実際にエリアに行っても数メートルずれるとつながらないといったような貧弱な展開状況となっています。

 

5GエリアはiPhone発売を契機に拡大が加速していくものと思われますが、全国どこでも使えるという状況に至るまでには、1年半から2年はかかるものと見ておくのが良いでしょう。

↑5Gスポットを確認

 

なお今回、日本で発売されるiPhone 12シリーズは5Gの中でも「ミリ波」には対応していません。ただミリ波に対応していないことの影響は、そこまで深刻ではありません。ミリ波は高速な通信が期待できる周波数帯ですが、つながる範囲がより狭くなりがちという性質も併せ持っています。5Gがつながらない、という現状は、日本版iPhone 12が対応しているサブ6周波数帯でも同じです。ミリ波の方がよりつながりにくい性質を持つため、対応していたとしても実用に影響するほど改善されるかは疑問が残るところです。

 

いずれにせよ、全国で4G LTEが使えるため、5Gを求めてiPhone 12シリーズを買うという視点は現状必要はありませんが、iPhone 12シリーズでは4G LTEの速度も向上しています。また、大手キャリアが用意する5G向けの料金プランは無制限に近いプランが多く、iPhone 12 Proをバリバリ使いこなすのにも適していますので、そういった点でiPhone 12 Proには優位性があるでしょう。

 

ちなみに、4G LTE契約のSIMでも原則としてiPhone 12シリーズを利用できます。その場合は5Gを利用できず、4G LTEスマホと同様のネットワークで通信可能です。MVNOでもIIJmioやmineoなどがSIMフリー版で動作確認したことを報告しています。ただし、auの4G LTE契約の場合は利用不可で、au 5Gへの契約変更が必要となります。

 

まとめ:あえて「Pro」を選ぶなら…やはりカメラ性能を吟味すべし

iPhone 12と12 Proは、ほとんどの仕様が共通しています。その一方で、価格設定はiPhone 12 Proの方が割高となっています。この2機種の違いはデザイン、カメラ性能や一部の処理のパフォーマンスなど、わずかな差に留まっています。この必要な機能に応じて、選ぶと良いでしょう。

 

【iPhone 12と12 Proで共通の主な特徴】

・高速なA14 Bionicチップセット

・明るいDolby Vision対応のディスプレイ

・四角いボディにリニューアルされた新デザイン

・高速なワイヤレス充電機構MagSafe

・5G網(サブ6周波数帯)の高速通信

・広角カメラと超広角カメラ

・劇的に進化した動画撮影機能

・Apple Pay

・防水、防じん

 

【iPhone 12 Proだけの主な特徴】

・側面がきらめく渋いカラーのボディ

・望遠カメラ

・Apple ProRAW(年内提供)

・LiDARによる高速オートフォーカスと高速AR処理

・マルチコア処理がやや性能高め

 

これらの特徴の中でも、12と12 Proの性能差を確実に感じることができるのは、カメラ関連です。望遠カメラはiPhoneで写真撮影にこだわる人なら有って損はない機能ですし、Apple ProRAWも写真家には期待の機能と言えます。また、ARアプリを使いこなせるならLiDAR搭載のProラインをおすすめします。パフォーマンスの差は大きくはありませんが、特に動画をたくさん撮影する人で、編集もiPhoneでするなら容量大きめで動画処理の性能の高さも期待できるiPhone 12 Proをおすすめします。

 

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