ZenFone 7シリーズの上位版「ZenFone 7 Pro」をレビューします。SIMフリースマホの雄、ASUSのフラッグシップモデルで、独特のフリップカメラ機構が目を引く一台。3眼カメラになって性能が強化されたうえ、初の5G対応を含め、カメラ以外でもトップレベルの仕様を詰め込んでいます。
自撮りも最強なフリップカメラ
ZenFone 7 Proを語るなら、まずカメラからはじめるべきでしょう。ZenFone 6のユニークな「フリップカメラ」を引き継ぎ、3眼カメラにグレードアップしています。フリップカメラは、回転するカメラユニットによって外側カメラがインカメラを兼ねるという機構です。
フリップカメラは背面にあるため、風景などを撮るときの操作感は他のスマホと変わりません。3眼カメラは広角、超広角、望遠というザ・王道な構成。具体的には以下のような内容です。
・広角 6400万画素 ソニー製IMX586、F値1.8、光学式手ブレ補正
・超広角 1200万画素 ソニー製IMX363 F値
・望遠 800万画素 光学式手ブレ補正
・デュアルLEDフラッシュ
このうち、光学式手ブレ補正についてはZenFone 7 “Pro”だけの仕様。カメラ自体の写りには変化はありませんが、特に暗所撮影や動画などでブレにくくなる効果が期待できます。
↑フリップカメラの挙動
フリップ式のカメラは、カメラ起動中に音量ボタンで自由に回転でき、本体背面の位置から180度まで好きな角度に動かせます。加えて、指定した角度で止めるためのショートカットボタンもカメラアプリ上に用意されています。回転できるカメラはたとえば、小物に寄って撮ったり、ローアングルでの撮影に便利。小さい子どもやペットを目線の位置で捉える時にも使えそうです。
さらにユニークな撮影機能として「オートパノラマ」を搭載しています。これは自動でカメラを180度まで回転しながらパノラマ撮影する機能で、ダイナミックな風景とその場の自分を同時に記録できるというこのスマホならではの機能です。
↑背面カメラが180度回転してインカメラにもなります
動画は最大8K/30FPSでの撮影が可能。4K/60FPS撮影もサポートします。さらに、動く被写体を選んでフォーカスを当て続けるモーショントラッキングといった撮影モードも備えています。
これらの撮影機能は、フリップカメラを180度展開することで、インカメラでもまったく同じように利用できます。ZenFone 7 Proはスマホカメラのレビューサイト「DXO Mark」で「世界で最強ランクの自分撮りカメラ」と認められていますが、これを否定する余地はないでしょう。特に動画撮影の性能が高いため、スマホでYouTubeで配信する人やZoom通話を多用する人などには適しています。
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ハイパフォーマンスでSNSも映像鑑賞も快適
フリップカメラがとにかく目を引きますが、ZenFone 7 Proは現世代で最高峰の性能を備えています。チップセットはクアルコム製のSnapdragon 865 Plus、メモリは8GB(LPDDR5)、ストレージ容量は256GB(UFS 3.1)。メモリもストレージも最新の規格を採用しており、Windows搭載のモバイルノートにも負けず劣らずのスペックです。5GやWi-Fi 6もしっかりサポートしています。
6.67型の有機ELディスプレイを搭載し、解像度は2400×1080ドット。構造上、専用のインカメラが存在しないため、ノッチ(切り欠き)の無いすっきりとした見た目です。DCI-P3カバー率110%という色再現性の高いディスプレイで、HDR 10動画も鮮やかに再生可能。内蔵ステレオスピーカーも迫力のあるサウンドを鳴らします。まるで映画館のように、というと陳腐な表現になりますが、スマホの画面としては最高クラスに迫力のある動画が楽しめます。
さらにディスプレイは90Hzのハイリフレッシュレートに対応しています。ハイリフレッシュレートは、PCゲームではお馴染みの、画面を高速に書き換える仕様ですが、スマホではスクロール操作の滑らかさにその良さが生かされます。目で追っても疲れづらい、滑らかな表示になります。Snapdragon 865 Plusの処理性能の高さもあり、WebブラウジングからSNSまですべてが快適。ただ、気になるのは重さ。230g近くあるため、たとえば、長時間手持ちで映画を観ると腕への負担がそれなりにかかります。
尖った機能を持つスマホだけに、デザインもエッジが効いています。ガラス貼りのツヤツヤした背面に、不敵に輝くASUSロゴ。ゲーミングスマホに通じる独特の格好良さを感じます。厚みがあるものの、背面のフチにかけて湾曲する形状になっており、手への収まりは悪くはありません。ただし、上部に重心があり、背面ガラスが滑りやすいため、ケースなしで片手持ちするのは落としてしまわないかヒヤヒヤします。
ゲーミングスマホ譲りのアシスト機能
ZenFone 7 Proのパフォーマンスと大画面なら、3Dゲームも快適に遊べます。さらに遊びやすくする機能「Game Genie」も搭載しています。ゲーミングスマホ「ROG Phone」を展開しているASUSならではの、本格的なゲーム支援機能です。
Game GenieはAndroidスマホではポピュラーな機能になりつつある、ゲーム中に表示できるランチャーアプリです。通知の一括オフやスクリーンキャプチャー、録画は当たり前に備えています。さらに、ライブ配信機能まで搭載。プレイ中のプレイヤーの顔をインカメラで写しながら、ゲーム画面を配信することまでできてしまいます。
筆者が気に入ったのは、ゲームプレイ中のフレームレートとCPU温度をリアルタイム表示できること。負荷の高いゲームをプレイ中にどのようなシーンでフレームレートが落ちているのか、CPUの状態はどうかを的確に把握できます。
トップクラスの性能を備えているだけに、負荷の高いゲームでも良好なパフォーマンスで動作します。筆者は3Dアクションゲーム『原神』の最高画質設定(60fps・画質カスタム)で試してみましたが、1時間ほどのプレイでもコマ落ちを感じることなく快適に遊べました。ただし、続けて遊んでいるとCPU温度が60度近くになることがあり、手で持っても熱さを感じます。よりゲームプレイに特化したスマホが欲しいなら「ROG Phone」を選んだ方が良さそうです。
5Gだけじゃない。デュアルバンドでWi-Fiも快適
ZenFone 7 ProはZenFoneシリーズで初めて5Gに対応するスマホです。ただし、5Gは大手キャリアでも始まったばかりのサービスでエリアも限られているため、実際には4Gで使うという人が多いでしょう。また、5Gを使う場合は、デュアルSIM(2回線の同時利用)ができないという点もネックになります。
一方で、ZenFone 7 ProにはWi-Fiでも快適に使える機能が備わっています。デュアルバンドWi-Fiとして、2つのWi-Fi周波数帯を同時に利用して通信が可能です。筆者は自宅のLinksys製Wi-Fiルーターで試したところ、自宅の端にありほかのスマホではWi-Fiが届きづらい場所でも安定して通信が可能でした。
スペックには妥協しない人、2台持ちユーザーなら選ぶ価値あり
ZenFone 7 Proは、カメラはとにかく良質のものを用意し、それ以外のスペックもほとんど妥協無く、最上位のものを揃えたというSIMフリースマホです。その点を踏まえれば、直販価格で10万9780円(税込)という価格も割安にすら思えます。また、AmazonなどのセールやMVNO回線とのセット購入割引を活用すれば、さらにお得に購入することもできるでしょう。
気の利いたことに、ZenFone 7 Proには2種類のケースが同梱されています。1つはカーボン風の「Active Case」で、薄く軽い作りながら、背面をしっかりと守ってくれます。このケースには、フリップカメラを物理的にロックするスイッチもあります。もう1つのケースはよくあるクリアケースで、シリコンではなくプラスチック製のカチッとした作りのもの。また、付属の電源アダプターは、30Wの急速充電に対応。USB Type-C充電に対応していれば、ノートパソコンでも充電できる仕様です。付属品もお得感のある構成です。
実用面では防水・おサイフケータイへの非対応と、重さがネックになります。特に重さは、買うときは気にならなくても長期間使ってくるとかならず気になるため、購入の際にはどう使うかよく考慮した方が良いでしょう。たとえば小型スマホと組み合わせた二台持ちで、Zenfone 7 Proではカメラと動画、ゲームを中心に使うなら、その性能を存分に発揮できそうです。
下位モデルZenFone 7との金額差が1万円ほどあるのも悩みどころですが、「とにかくすべての性能が高いSIMフリースマホがほしい」という人なら迷わずこれを選ぶべきでしょう。
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