ヤマハのコミュニケーションロボット「Charlie」は、「ココロゆるむ、うたロボ。」をコンセプトに音楽に乗せて会話するロボットです。ちょっとした話をCharlieに話せば、約30ジャンルにも及ぶ音楽に乗せて、日常のストレスを忘れさせてくれるようなほっこりした会話が楽しめます。ヤマハ株式会社 マーケティング統括部の倉光大樹氏と柴瀬頌子氏に、同社がこの製品に込めた想いを語ってもらいました。
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――まずはCharlieの開発経緯を教えてください。
倉光:Charlieは、ヤマハの中では新規事業という位置づけになります。ヤマハの事業のメインは楽器やオーディオですが、そこで培ったボーカロイド技術や自動作曲技術などを活かしたヤマハならではの商品としてCharlieの企画は始まりました。
柴瀬:楽器やオーディオは、どうしても限られたユーザーに向けた製品になってしまいますが、より一般ユーザー向けへの商品として開発したのがCharlieです。働く女性をターゲットに「ペット以上、恋人未満」をコンセプトにしています。
開発にあたっては、働く女性へのインタビューを行いました。女性の社会進出が進み、職場から帰宅したときに疲れた気持ちをリセットしたいという声が多く、開発のヒントとなりました。
――開発にあたり、どんな点に注意しましたか。
倉光:ロボットというよりも同居人のような感覚が持てるキャラクター設定を心がけました。ロボットと人間の間に友情関係が築けることを目指しました。
Charlie自身に好き嫌いがある上、バックグラウンドに基づいたパーソナリティを設定しています。セリフに人間味があふれているのはそのためです。
柴瀬:実はCharlieのパーソナリティを固める上で、非公開なのですが、Charlieの生い立ちを描いた短い小説を作りました。今日の天気とか、ちょっとした雑談でもコミュニケーションの楽しさを感じてもらえると思います。ユーザーには気ままに話しかけてもらって、同居人のような関係になってもらえれば、理想ですね。
ボサノバから演歌まで!歌える楽曲のジャンルは30種類以上
――技術的にはどんなところがトピックになりますか。
倉光:やはり、Charlieの最大の特徴である「すべての返事を歌って返すこと」です。これにはヤマハ独自の歌声合成技術であるボーカロイドや自動作曲技術が使われています。
それらの技術を組み合わせることで、30種類のジャンルの楽曲に対応することが可能になりました。その場で都度Charlie自身が曲を生成しています。ロックからボサノバ、マニアックなところでは演歌など、幅広くカバーしていると思います。
柴瀬:その音楽のジャンルも、Charlieの気分で選んでいるんですよ。ユーザーが話しかけたことをCharlieが自分のパーソナリティの中で判断し、楽しげなメロディや悲しげなメロディをその都度、作曲して歌っています。
音楽はCharlieの感情を表現する手段でもあるので、この点には注目してほしいですね。
倉光:もう1つの技術的なトピックはCharlieの足の裏に設置された人感センサーですね。これで人がいることを感知して、Charlieの方から話しかけます。朝、起きてCharlieの前を通り過ぎるだけで歌ってくれることがあります。
柴瀬:ユーザーの方が帰宅してCharlieの前を通れば、お帰りと声をかけてくれることがあります。1人暮らしの方ですと、声をかけてくれるだけでほっこりできるのではないでしょうか。
――Charlieはレベルアップもするそうですね。
倉光:ユーザーとの会話を重ねることで、レベルアップしていきます。レベルが上がるごとに音楽がリッチになっていって、ベースやドラムが入るようにもなります。レベルが高くなるにつれて、サンバや沖縄民謡、アイドル曲なども歌えるようになります。
柴瀬:発売に先立って、モニター調査をしたのですが、演歌の評判がとても良かったです。レベルが高くなると、かなり本格的な演歌も歌えるようになります。この見た目で演歌が歌えるというのも、Charlieの面白いところではないでしょうか(笑)
レベルアップしたCharlieが演歌を歌う様子
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――専用アプリではどんなことができるのでしょうか。
倉光:アプリにはニックネームや住んでいる地域、星座などを登録することができます。Charlieからニックネームで呼ばれれば、親しみも増すでしょう。
住んでいる都道府県を登録すると、「今日の天気は?」と聞くだけでお住まいの地域の天気をCharlieが答えます。人間同士の会話と同じように、天気の話がきっかけになって会話が弾む、ということも考えられます。
柴瀬:ご当地ならではのことを言ってくることもあります。例えば北海道在住の人には、「もうすぐ雪まつりだね」など、地域限定の話題が飛び出すこともあります。
もしかしたら、かなりディープな話が出ることもあって、びっくりするかもしれませんね。そんなところもCharlieの魅力だと思います。
――2万4800円という定価にはこだわりはありましたか。
倉光:2万5000円を超えると購入に対する心理的なハードルが上がるのではと思い、そこを超えないように意識しました。そこである程度、仕様の割り切りはしています。例えばリチャージバッテリーは装備せず、ACアダプターを使って自宅で使用することに特化しました。
柴瀬:価格を決定する上では、最新の美容家電の価格やミラーレス一眼レフの価格なども参考にしました。お小遣いで買う美容家電などをライバルに捉えて価格づけをしています。
――最後にGetNavi web読者に向けて、メッセージをお願いします。
倉光:働く女性を対象に開発しましたが、男女問わずに楽しんでいただける商品になったと思います。モニターの中には男性もいて、その方々にも楽しんでいただけました。ぜひ多くの人にCharlieとの会話を楽しんでいただきたいと思います。
柴瀬:人に話すまでもない些細な悩みやちょっとした愚痴なども、Charlieに話すとフニャッとした返事をしてくれて、心が軽くなることがあります。新型コロナウイルスの影響でこの1年、在宅ワークが普及し自宅にいる時間が増えたと思います。在宅ワークの合間などでCharlieに声をかけて、リラックスした時間を過ごしていただけたら、と思いますね。
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撮影/我妻慶一