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2016/8/17 6:00

楽勝で元は取れる! 噂の「Kindle Unlimited」で読み漁ってみた【1週間体験レビュー】

去る8月3日、予告なしに突如投入されたアマゾンジャパンの電子書籍読み放題サービス「Kindle Unlimited」。月額980円で約12万冊の書籍やマンガ、雑誌などが読み放題になるというものです。その1週間後には楽天の電子雑誌読み放題サービス「楽天マガジン」(月額410円)もスタート。既にユーザー数300万人を越えているNTTドコモ「dマガジン」(月額432円)と合わせ、本の世界にも読み放題の波がやってきているようですね。

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今回は、サービス開始から約1週間、このサービスを使ってみた感想をレポート。決して安くはない月額980円、はたしてその価値はあるのでしょうか?

 

蔵書12万冊は多いの? それとも少ないの?

まず何より気になるのが蔵書数。Kindle Unlimitedでは約12万冊の本が読めるということですが、これが「多い」のか「少ない」のか、具体的にイメージできる人は少ないと思います。ちなみに現在、日本最大の売り場面積を誇るというMARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店が約200万冊、東京駅前の八重洲ブックセンター八重洲本店が約150万冊なのだそう。さすがにこれと比較するのは気の毒なのですが、地方の大きめの書店でも約50万冊ということなので、Kindle Unlimitedの約12万冊という数字は書店には遠く及ばないと考えるべきでしょう。

 

数字的に近いのは書店というより図書館。市立、区立の中規模図書館の蔵書数が10万冊前後ということなので、このあたりをイメージするとKindle Unlimitedの規模感がつかみやすいかも?

 

ただし、その蔵書にはかなりの偏りがあります。まず、出版社によって参加していたり、していなかったりということがあります。当然不参加の出版社の本は1冊もありません。具体的には大手では講談社、小学館らが参加、集英社、KADOKAWAグループが不参加となっています(もちろん、学研は参加していますよ!)。

 

また、ラインナップの大半は小説や実用書などの書籍で、マンガはあまり数が多くないようです(公式発表では約3万冊)。雑誌分野は240誌以上と、競合する「dマガジン」(160誌以上)、「楽天マガジン」(約200誌)よりも数が多いのですが、最近とかく話題の「週刊文春」が含まれないなど、メジャー誌にやや弱い印象も。その分、ニッチな分野の雑誌に強いようで、我らが「ムー」のほか、「将棋世界」など、根強い固定ファンに支えられている雑誌が多数ラインナップされていました。個人的には、これ、結構うれしいです。こういう雑誌って一冊1000円以上するものも多いので、それだけでおトク感が高まりますよね。

 

反面、ちょっとどうかなぁと思わされてしまったのが、主にマンガのジャンルで、途中まで読み放題対象という作品がかなり目立ったこと。全10巻のうち、最初の3巻までが登録されているといった具合ですね。う~ん、これだと、よくある期間限定の無料キャンペーンとあんまり変わらないのでは……。もちろん、きちんと全巻無料のものもありましたが、大半がそんな感じ。未完結(連載中)作品の最新刊だけ対象外(これもけっこう多いです)という判断は理解できるのですが、完結作品を参加させるのであれば、全巻きちんと読ませてほしいと思いました。

 

ただ、現時点では実入り的にきびしいものがあるようで、そうせざるを得ないという事情もあるようです。電子書籍の第一人者である漫画家・鈴木みそ先生も「Kindle Unlimited」に参加した上で、早々に撤退を表明しています。

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あと、細かい所では、従来のKindleアプリの仕様が、Kindle Unlimitedにマッチしていないのでは? というところも。電車を待つ10分の空き時間に、適当に何か本を読みたいと思ったとき、dマガジンでは読みたいページだけを逐次ダウンロードするかたちですぐに読み始められるのですが、Kindle Unlimitedでは、3、4ページ読みたいだけの本も丸ごと1冊ダウンロードしてしまいます。また、ある程度ダウンロードされないと(PC版の場合は全てダウンロードされないと)読み始めることができないのも残念。サッと読み始められて、パケットを無駄に消費しないようにする工夫がほしいところ。

 

蔵書充実は急務だが現時点でもコスパの高いサービス

……と、ここまで若干ネガティブ目の感想をかき立てましたが、それでもなお、980円という価格に見合った価値はあるのではないかと思います。比較的新しい、話題の本がけっこうラインナップされているので、何だかんだで元は取れるはず。ご指名で読みたい本を探すのではなく、目に留まった面白そうな本を手軽に読むサービスだと考えるべきでしょう。Kindle Unlimitedのトップページにジャンル別に本を探せるボタンが用意されているので、ちょっとした空き時間ができたら、ぜひここをクリック。

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ちなみに私はこの1週間で以下のような感じに読書してみました。ダウンロードだけしてまだ読んでいないものもあるのですが、参考までに。
※記載した価格は、8月10日時点でのKindle版(電子版)のもの

 

【1冊目】ムー 2016年9月号 870円
私の記念すべきファーストダウンロードはこの雑誌でした(笑)。大学時代にちょっと読んだことがあったくらいなので、およそ20年ぶりに手に取ったことになります。そして読んでみたらやっぱり面白かった。読み放題で読めるなら毎月読みたいかも!

 

【2冊目】パタリロ! 1(魔夜峰央) 607円
最近、地方disマンガ「翔んで埼玉」でにわかに再ブームが起きている魔夜峰央先生の代表作。文庫版全50巻のうち、10巻までがKindle Unlimited対応。11巻以降も読ませてほしいところなのですが、オムニバスなのでそこまで気にはなりませんでした。

 

【3冊目】青い花(志村貴子) 540円
全巻きちんと読める完結作品はないかと探した結果、見つかったのがこの作品。正直、え? これ、読み放題にしなくても売れるのでは?(テレビアニメにもなりましたし)と思いました。太田出版、太っ腹です。女の子同士の恋愛を描いた、いわゆる百合マンガなのですが、男性でもしっかり楽しめますよ。

 

【4冊目】星を継ぐ者(ジェイムズ・P・ホーガン) 675円
人類のルーツを描いた、SFミステリーの古典的傑作小説です。実家に帰ればまだ残っていると思うのですが、こういうかたちで手にはいると、また読み直したくなりますね。ただ、SF小説、あんまり多くありません。この作品が例外的な感じでした。

 

【5冊目】デジタルカメラマガジン 1080円
毎月購読している雑誌がKindle Unlimitedに登録されていると、果たしてこんなお手軽に読んでしまって良いのかドキドキします。同じくカメラ誌のCAPAも登録されていますが、こちらはdマガジンでも配信中。同じ読み放題サービスでも、ラインナップが結構違っているので要注意です。

 

【6冊目】なぜあなたの仕事は終わらないのか(中島聡) 1490円
基本的にこういう啓蒙書の類いは読まないのですが、読み放題というと読んでみようという気になりますね。まさに今、この原稿を書きながら「なぜ俺の仕事は終わらないのか」という気持ちになっているので、校了したら読みます。

 

【7冊目】小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」(小寺信良・西田宗千佳) 300円
デジタル家電業界の識者・ライターとして圧倒的な支持を集める小寺信良さんと、西田宗千佳さんが毎週金曜日に発行しているメールマガジンを電子書籍形式で読めるようにしたものです。店頭では売っていない、こういう特殊な書籍がラインナップされているのもKindle Unlimitedの良いところですね。

 

【8冊目】犬にきいてみろ (池井戸潤) 199円
店頭では売っていない本をもう1冊。「倍返しだ!」で一世を風靡した半沢直樹シリーズで有名な池井戸潤さんが、Kindle Singleというかたちで電子版限定で提供している短編小説です(こちらもドラマ化されましたね)。電子書籍だからこそ実現できた、34ページという一口サイズも読みやすくて良かったです。

 

【9冊目】倉持由香「桃尻三昧」 Idol Line(倉持由香) 583円
最近、タモリ倶楽部のオープニング映像が新作に切りかわるという記事を読んで、彼女のことを思い出しました(理由は各自想像してください)。こういった、セクシー系の写真集が結構充実しているというのもKindle Unlimitedのすごいところ。ひょっとしたらすごいキラーコンテンツなのかも?

 

【10冊目】GetNavi 2016年9月号 519円
予定調和で本当にごめんなさい。でも、GetNaviもKindle Unlimitedで読めるんです。密度の高いレイアウトなんですが、意外にスマホでも読めちゃいます。5年後くらいにはこういうかたちで読む読者の方が増えるのかも、なんて思っちゃいました。

 

なお、12万冊のラインナップ(現在も、毎日どんどん増強されているそうです)には、傾向らしい傾向を見付け出すことはできませんでした(けっこう新しい作品が多いというくらい)。同じ出版社、作者でも出している作品と出していない作品があったり……。まだ、出版社の側も手探り状態なんでしょうね。

 

何にせよ、繰り返しますが980円の価値は絶対にあります(上記10冊だけでも、総額6863円)。最初の1ヶ月は無料で使えるので、とりあえずお試しで使ってみてはいかがでしょうか。本の読み方、変わるかもしれませんよ。

 

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