日本時間の15日未明に、アップルはオンラインでスペシャルイベントを開催。「iPhone 13」シリーズ4機種と「iPad」シリーズ2機種に加え、秋に発売予定の「Apple Watch Series 7」が発表された。
毎年恒例となっている9月の新製品発表会だが、今年のそれは例年以上にバリエーション豊富なラインナップを披露した格好だ。
フルモデルチェンジとも言える第6世代のiPad mini
なかでも前モデルから大きな進化を遂げたのが、第6世代の「iPad mini」だ。iPad miniとしては2019年に発売された第5世代から約2年ぶりの登場になり、デザインを刷新。「iPad Pro」や「iPad Air」と同じ、ホームボタンを廃したフルディスプレイのデザインに生まれ変わった。
これにより、ベゼル(額縁)いっぱいまで液晶を広げられるようになった結果、画面のサイズは第5世代の7.9インチから8.3インチへとアップ。また指紋センサーのTouch IDは、昨年発売されたiPad Airと同じトップボタンに統合される形になった。
2年ぶりということもあり、スペックの向上にも目を見張る。チップセットには、「iPhone 13 Pro」/「iPhone 13 Pro Max」と同じ「A15 Bionic」を採用。ギリギリ片手で握れるサイズ感ながら、動画の編集などもスムーズにこなせる高性能を実現した。さらに、通信方式は5Gに対応。
サイズこそ小さいが、機能的にはiPad AirとiPad Proの中間に位置するタブレットとして生まれ変わったというわけだ。
もちろん、「Apple Pencil」はマグネットで側面に装着できる第2世代のもの。また、iPad Proから導入された、超広角のインカメラも搭載し、ビデオ会議の際に自動で被写体にフレームを合わせる「センターフレーム」にも対応する。
廉価版のiPadはディスプレイなどの性能を向上させ、正統進化を遂げた
このセンターフレームは、同時に発表された第9世代のiPadにも共通した機能だ。
ProやAir、miniといった修飾語のつかないiPadは、いわゆる廉価版のシリーズ。販売数量的にもiPadのなかでもっとも多く、同シリーズの代表的なモデルと言える。
そんなiPadも第9世代になり、基本性能を向上させた。ホームボタンのあるクラシックなiPadのスタイルはそのままだが、チップセットはiPhone 11シリーズと同じ「A13 Bionic」になっている。
iPadの性能向上において、よりユーザーの目に留まりやすいのは、ディスプレイだろう。サイズや解像度はそのままだが、sRGB相当の広色域に対応。また周囲の環境に応じて画面の色温度を調整し、自然な見え方を実現する「True Tone」にも対応した。
iPad miniのようなフルモデルチェンジを果たしたわけではないものの、普及促進の役割を担うど真ん中のiPadとして正統進化したと言えそうだ。
第1世代ながら引き続きApple Pencilにも対応し、幅広い用途で利用できる。
iPhone 13シリーズはかつて型番に「s」とついたモデルに近い位置付けの進化
iPhone 13シリーズの進化の仕方も、どちらかと言うと第9世代iPadに近い。かつてのiPhoneは2年ごとにフルモデルチェンジしながら、その間を埋める製品として型番に「s」とついたモデルをリリースしていた。「iPhone 4s」や「iPhone 5s」がそれだ。
2020年に登場した「iPhone 12」は、フレーム部分のデザインを曲面からスクエアへと大きく変え、5Gにも初めて対応したが、iPhone 13はこうした基本部分を踏襲している。その意味では、型番に「s」のついたiPhoneに近いと言えるだろう。
一方で、それぞれの機能には確実に磨きがかかっており、特にカメラ機能は刷新と呼んでいいほどの進化を遂げている。
iPhone 12のときは、最上位モデルとして「iPhone 12 Pro Max」のみセンサーサイズが大きく、手ブレ補正の方式も唯一センサーシフト式を採用していたが、今年は「iPhone 13 mini」を含む「無印」のiPhone 13と、「Pro」の名を冠するモデルでカメラ機能に差をつけてきた。
これにより、iPhone 13 ProとiPhone 13 Pro Maxの差分は、純粋に画面の大きさだけになったというわけだ。
Proの名がつくiPhoneは暗所撮影が強いうえに、マクロ撮影、映画のような撮影などが可能に
iPhone 13 ProとiPhone 13 Pro Maxは標準広角カメラに、画素ピッチ1.9μmのセンサーを採用した。これまでのiPhoneでもっとも画素ピッチが大きかったのはiPhone 12 Pro Maxの1.7μmだったが、iPhone 13 Pro/iPhone 13 Pro Maxはさらに大型化を進めている。
またレンズのF値もF1.5になり、暗所での撮影にさらに強くなった。
これに加えて、望遠カメラは焦点距離が変わり、35mm判換算で77mmに。これによって光学ズームは「iPhone 12 Pro」の2倍やiPhone 12 Pro Maxの2.5倍より高倍率な3倍になっている。さらに超広角カメラもF1.8になったうえに、新たにオートフォーカスが加わった。
また、この超広角カメラはマクロ撮影にも対応。被写体に近づいていくと自動的にマクロモードに切り替わり、物や草花、食べ物などのディテールをクッキリと写すことが可能だ。
さらに、撮影モードには新たに「フォトグラフスタイル」が導入された。これは、単純なフィルターと違い、肌のトーンを一定に保ったままコントラストを高めたり、暖かみを出したりできる機能。機械学習で写っているものを認識できる、iPhoneならではの新機能だ。
動画撮影も大きく進化し、「シネマティックモード」に対応した。フォーカスを合わせる人物をシーンごとにiPhone側で判断して、あたかも映画のワンシーンのように自動で切り替えることが可能。タップしてフォーカスを合わせたあと、編集でピントの合う場所を変える機能も用意されている。
こうした処理ができるのも、最新のiPhoneに採用されたチップセット「A15 Bionic」の高いパフォーマンスがあってこそだ。
ディスプレイは、新たに「ProMotion」に対応し、10Hzから120Hzの間でリフレッシュレートを自動で切り替える。画面の滑らかさと省電力を両立させた機能だが、これを搭載したのもProの名を冠した2機種のみになる。
なお、細かな点では、屋外での明るさが最大1000ニトと、さらにディスプレイが明るくなっているのも特徴だ。
iPhone 13もカメラ機能が大きく進化
一方で、iPhone 13やiPhone 13 miniは、広角と超広角のデュアルカメラを踏襲しながら、センサーサイズはiPhone 12 Pro Maxと同じ1.7μmに拡大した。先に挙げたフォトグラフスタイルやシネマティックモードにも対応するなど、無印のiPhoneとしてはカメラ機能が大きく進化している。
このほか4機種とも、Face ID用のノッチがコンパクト化するなど、正統進化ながら、各機能にはしっかり磨きがかかった印象を受ける。
Apple Watch Series 7はディスプレイの大型化がポイント
これらに加えて、スマートウォッチのApple Watch Series 7も発表された。今年は、投入時期がやや遅れ、iPhoneより後の秋発売になり、正確な日程も公表されていないが、サイズはそのままにディスプレイサイズが大型化しており、印象が変わった。
充電時間も、Apple Watch Series 6比で33%高速化するなど、基本性能も向上した。耐久性も上がり、歴代最高になったという。
新鮮味に欠けるところはあったものの、製品の完成度は高そう
デザインを含めた、フルモデルチェンジを果たしたiPad miniやApple Watch Series 7に対し、基本性能やカメラ機能を向上させたiPhone 13シリーズやiPadは新鮮味に欠けるところはあったものの、いずれの製品も完成度は高そうだ。
特にiPhone 13シリーズのカメラは、画質を向上させただけでなく、シネマティックモードでの動画撮影といった新たな提案があり、ぜひ使ってみたいと思わせる1台に仕上がっている。
Apple Watch Series 7以外はいずれも24日に発売される。発売まで残すところあと1週間。その時が今から楽しみだ。
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