Vol.127-2
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはGoogleが発売を発表した「Pixel 7a」。同じタイミングで「Pixel Fold」が出た背景を探る。
Googleは今春、「Pixel 7a」「Pixel Tablet」「Pixel Fold」と、3種の新製品を発表した。この記事が公開される頃、7aはすでに市場に出回っているが、残りの2つはこれから販売……という段階かと思う(※6月2日時点で、Pixel Tabletは6月20日ごろの発売予定で、Pixel Foldは未定)。
Pixel 7aを含む末尾に「a」が付くPixelは、普及型モデルとしてこの数年で恒例になったものの、Pixel Tabletについては昨年発表され、「2023年初頭には発売」とされていた。それが、少し発売時期が遅れてこのタイミングになった、という事情がある。
そういう意味でこれら2機種が出てくることは想定内であり、驚きはなかった。一方、ちょっと意外だったのは、二つ折りスマホであるPixel Foldが出てきたことだ。サムスンの「Galaxy Z Fold」を含め、すでに二つ折りスマホ自身は複数市場に出ている。だが、まだ高価なこともあってか、「広く普及した」というのは難しい、ちょっと微妙な状況でもある。
そんな中で、なぜGoogleはFoldを作ったのか? ヒントは次のコメントにある。
GoogleでAndroidとGoogle Play、そしてWear OSのプロダクトマネジメントを統括するサミール・サマット副社長は、筆者とのインタビューで次のように答えている。
「タブレットには大きな期待を抱いている。タブレットのおもしろいところは、消費デバイスとしてだけでなく、家庭での生産性向上デバイスとしても使えること。Androidにとって、ハイエンドタブレットの分野に大きなチャンスがあり、マルチタスクやプロダクティビティを満たす機能が求められる。近年こうした部分に注力しており、タブレットだけでなく、小型のタブレットになるハイエンド端末“フォルダブル(二つ折り)”端末にも役立っている」
二つ折りスマホは「スマホ」ではあるのだが、大きな画面になるがゆえに、彼らは「ハイエンドタブレットの1つ」としても捉えているわけだ。Androidは特に「12L」以降、タブレットで「横長(ランドスケープ)画面」「複数アプリ同時使用」といった機能の強化を進めている。
タブレット市場は、AmazonのFireタブレットのような低価格製品か、アップルのiPadか、という感じで二分されている。Androidタブレットもハイエンド製品を増やし、ニーズを取り逃がさないことが求められている訳だが、その一角として「ハイエンドスマホであり、コンパクトなタブレットでもある」二つ折りスマホが注目されている、ということなのだろう。
まだ日本ではレビューが行なわれていないものの、Google I/Oを取材した際、Pixel Foldの実機を体験している。横幅がGalaxy Z Foldより広く作られているのが特徴で、結果として「スマホとして使う」よりも「タブレットとして使う」方が似合っているイメージは受けた。Googleがタブレット重視であるならば、そうした印象も間違いはないのだろう。
ではGoogleが発売する新たな「Pixel Tablet」の狙いは何なのか? そのあたりは次回解説していこう。
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