レギュラー番組16本! 売れっ子であり続ける放送作家・飯塚大悟の思考術

ink_pen 2025/8/27
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レギュラー番組16本! 売れっ子であり続ける放送作家・飯塚大悟の思考術
鈴木翔子
すずきしょうこ
鈴木翔子

韓流エンタメ誌の編集者、雑誌『GetNavi』のフード・文房具担当、書籍編集者を経て、フリーの編集兼ライターに。酒好きが高じて時々バーでも働く。趣味は旅先で地元の人と飲むこと。

TBSテレビの『水曜日のダウンタウン』や『クレイジージャーニー』、テレビ朝日の『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん(以下、博士ちゃん)』に『家事ヤロウ!!!』など、人気番組を多数担当する放送作家・飯塚大悟さんに、3回にわたって仕事術をうかがうインタビューも今回が最終回。

どのようにアイデアを出しているの? 仕事のポリシーは? そこには、飯塚さんが引っ張りだこの理由が隠されていました。

台本はあくまで“仮の設計図”。収録でのズレこそが面白さを生む

放送作家が作る台本は、番組の設計図のようなもの。しかし、実際の収録はその通りにいかないことのほうが多く、「むしろその“ズレ”が番組を面白くすることもある」と飯塚さんは語ります。

「台本はあくまで“仮”の設計図であって、収録現場で起きることは常に想定外です。でも僕は、その予測不能な部分に魅力があると思っています」

その一例が、『家事ヤロウ!!!』で行われた、芸人・加藤茶さんのご自宅の密着取材です。

「大御所も大御所なので、番組としては、ものすごく立派な料理など、“豪華な生活”を期待していた部分がありました。でも実際は、奥さんである綾菜さんが加藤茶さんの健康に考慮し、塩分を控えた家庭的な料理を工夫して作られていたんです。食について猛勉強されたのがわかる料理で、減塩でありながらちゃんとおいしさも両立されていて。にもかかわらず加藤さんは、少しでも味を濃くしたいからと、綾菜さんに隠れてこっそり醤油を足してしまうという(笑)。そんなお二人の攻防まで見ることができ、結果的にいい番組になったと思います」

アイデアは無限に出てくるわけじゃない。ただただ地道に捻り出すだけ

こういった番組企画のアイデアはどのようなところから生まれるのでしょうか。飯塚さんならではのアイデア発想術をお聞きすると、返ってきたのは「締切に追われながら、地道に捻り出す日々を積み重ねているだけ」とのこと。

「色々試してみたんですが、アイデアを生み出す魔法みたいなものがあるとは思えなくて…。なので、とにかく締切というプレッシャーで自分を追い込んで、必死にアイデアを捻り出す、それだけです」

さらに、「企画を考えるために、日々行なっているインプットは?」とお聞きすると、「興味のない情報をわざわざ取り入れるということはしていなくて、ただただ仕事をしているだけなんです」ときっぱり。

「というのも僕は、様々なジャンルの番組に関わらせていただいているので、自然と他ジャンルの情報が集まってくるんですよね。だから、たとえば『ヒルナンデス』で得た知識を『水曜日のダウンタウン』に応用したりといったことができるんです。あとは過去に成功している番組を調べて、どうしてそれがうまくいったのかを分析して、突破口を見つけるということはありますね。テレビも歴史が長いので、”まったく新しいもの”ってほぼ存在しないと思っているので、さっきの『子ども×芸人』のようにすでにある掛け合わせを、どうやったら新しくなるかということも試しています」

放送作家は客観視職人。ポリシーは空気を読まずに意見を述べること

各テレビ局から声がかかり、飯塚さんはつねに引っ張りだこの状態。仕事のポリシーとして大切にしているのは、「空気を読まずに客観的に意見を言うこと」だと言います。

「会議中に、微妙な企画案なのに『面白くない』って言いづらい空気になることってありますよね。でも僕は、外部の作家としてテレビ局から呼ばれている立場上、“引いた目線”を番組に持ち込むストッパー役として客観的な意見を言うのが使命だと思っているので、なるべく忖度なく『これヤバくないですか?』って言うようにしています。放送作家って『客観視職人』だと思うので。もちろん実際に言うときは、もう少しマイルドな言い方をしていますが、それでもやっぱり意見を否定されるというのは気持ちいいことではないので、僕が否定をして場が凍ることはあります。ただ、ありがたいことにいまも干されずに声をかけていただけているので、結果としてその意見を必要としてくれる人がいるってことなのかなとは思います」

3度のインタビューを通じて、放送作家の仕事術や番組作りの醍醐味を詳しく教えてくれた飯塚さん。今後どんな面白い番組を手掛けていくのか、楽しみですね!

第1回、第2回のインタビュー記事はこちらから。
放送作家はなにしてる?『水曜日のダウンタウン』などを手掛ける飯塚大悟が語る、仕事の舞台裏と三種の神器

https://getnavi.jp/entertainment/1057929/

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