脚本家で映画監督の足立 紳さんが、自身の連載日記をベースに脚本を執筆したドラマ『こんばんは、朝山家です。』。“キレる妻”と“残念な夫”の夫婦が、家族に降りかかるさまざまな難題を乗り越えていくホームドラマだ。そんな朝山家の小学生の息子を受け持つ担任教師役で出演中の影山優佳さんに撮影エピソードなどについて聞いた。
※こちらは「GetNavi」2025年9・10月合併号に掲載された記事を再編集したものです。

【影山優佳さん撮り下ろし写真】
その家族にしか作れない雰囲気や空気感が出る瞬間
──まずは作品の印象を!
影山 ホームドラマなんですけど、いわゆる家族だんらんというお話ではなくて。ちょっとひと癖ある家族というか、常にけんかや問題が絶えない家族のお話です。でもこういう家族ってご近所さんにいそうだし、日本にもたくさんいる気がして。そういう意味では、見ていただくと共感できる瞬間がたくさんあると思いますし、激しくも温かい作品だと思います。
──影山さんが共感したポイントはどんなところでしょう?
影山 朝山家の蝶子ちゃん(渡邉心結)と晴太君(嶋田鉄太)のきょうだいと同じように、私自身にも弟がいます。子供のころは親が自分よりも弟の面倒を見ている気がして、それをうらやましがる蝶子ちゃんの気持ちは理解できます。あとこれは共感というか憧れに近いのですが、けんかし合える家族っていいなと。その家族にしか作れない雰囲気や空気感が出る瞬間だと思いますし、そういう部分もリアルに描かれている作品だなと思います。
──その中で影山さんが演じるのは、晴太君の小学校のクラス担任である木本先生です。
影山 生徒たちみんなを平等に扱わなきゃいけない中で、一人一人の状況に合わせて個別にどう対応していくかというところを、教師として学んでいく役どころです。演じるにあたって教職について調べたのですが、大変なお仕事だなとあらためて感じました。
──お芝居のポイントは?
影山 先生としての威厳を保ちつつ、親しみやすく見えるように……という、そのバランスをセリフでどう表現するかが課題になっています。でも楽しさもあって、小学生のみんなからカメラが回っていない時も「先生」と呼ばれると、かわいくてほっこりします。と同時に、「先生はね…」なんて話していると、私も大人になったなと実感します(笑)。
──子供たちとのお芝居はどうでしたか?
影山 特に印象的だったのは給食のシーンです。生徒たちが「重い~」とかワイワイしながら給食を運んでいて、私が「静かに!」って注意するんですけど。そう言っている間に、晴太君が学校に来るっていう。その一連の流れがすごくリアルで、いい意味で取りつくろわずに自然なお芝居ができました。晴太君役の鉄太君をはじめ、みんなには本当に感謝です。
──鉄太君にはどんな印象を?
影山 いい意味で自分だけの世界を持っていて、かっこいいです。一緒に会話するシーンもあるんですけど、晴太君のうかがい知れない気持ちが木本先生としてなかなか見えない時に、それを頑張ってくみ取りたいとこちらに思わせてくれるお芝居をしていて。かと思えば、感情をそのままこぼしてくれる時もあるんです。そのひとつひとつのお芝居がすごくいいなって、現場ですごく勉強させてもらっています。

当時の私は自分の課題に追われっぱなしで、周りを見る余裕がありませんでした
──ちなみに影山さん自身、小学生のころはどんな子でしたか?
影山 変わっていたと思います。「勉強が好き」って言ってる小学生ってあまりいないと思うので(笑)。運動もそうですけど、興味があることに真っすぐ向かう子でした。習い事も10個ぐらいさせてもらっていて、ピアノ、水泳、習字……と常に何かに追われ続けていたような気がします。多分、学校のテストとかだと“またあの子に負けちゃった”とか“あの子より上だった”みたいなことを考えると思うんです。でも当時の私は自分の課題に追われっぱなしで、周りを見る余裕がありませんでした。
──中村アンさん、小澤征悦さんとのお芝居はどうでしたか?
影山 このドラマは家族の会話がメインで進んでいきますけど、私は基本的にお2人とは1対1でお話しさせていただいていて。学校のシーンを撮影しているときと、楽屋のときの雰囲気がまるで違っていて面白いです。アンさんは普段から家族役の皆さんと気さくに接していらして。この前楽屋に入ったら、鉄太君に「何やってんの!」って言っているアンさんの声が聞こえてきました(笑)。本当に朝山家をのぞかせてもらっている感覚があって、私にとって新鮮で貴重な時間になっています。
──影山家はどんなご家族ですか?
影山 うちはとにかく仲がいいです。自分で言うのも何ですが、私は反抗期を迎えたことがなくて。もしかしたら、これからあるのかもしれないですけど(笑)。私は親に反抗したり、無視したりする勇気がなかったのかもしれません。今振り返ると、そういう尖り方も一度ぐらいしてみたかったな、なんて思います。あと、きょうだいげんかもしたことがないんです。いいお姉さんだったからかな……なんて、そんなことはないですけど(笑)。家族みんな本当に優しくて、とても恵まれていたなと思います。
──先日放送された『ANOTHER SKY』では、親御さんから「あなたは日本にいない方がいい」と言われていたと明かしてましたが(笑)。
影山 そうなんです(笑)。いやもう冗談抜きで、本当に海外行かせようとしてましたから。「カナダとかいいんじゃない?」とか言っていて、“私、カナダなんて一言も言ってないんだけどな~”みたいな(笑)。自分が日本より海外が合ってるなんて自覚は全然なかったですけど、親って子供を客観的に見ているんだなと。日本人は義務教育的なイメージで、ちゃんと「右へならえ」ができたら優秀と見られがちという中で、「優佳は周りに合わせることが得意じゃないでしょ?」と言われて。そのときは「はい」と答えるしかなかったです(笑)。

砥石がダイヤモンドの電動の包丁とぎ器がすごくいい
──影山家ならではの独自のルールみたいなものは何かありましたか?
影山 家族同士の会話が減らないように食事中はテレビはつけないというルールはよくあると思うんです。でもうちの家族はテレビが大好きすぎるので、そんな瞬間が一切なくて。テレビも各部屋に置かれていて、お風呂に備え付けられているテレビが壊れたらポータブルのテレビを持ち込むほどでした(笑)。だから食事中もリビングのテレビがついていない瞬間はなくて、逆にテレビが会話のネタになっていたというか。ただ夕飯のときは教育番組が見たい私と、野球の中継を見たい親とでチャンネル争いがいつも起きていました。ただ主導権は親だったので、すごくモヤモヤしながら我慢していた思い出があります(笑)。
──最後にGetNaviということで、影山さんが今ハマっているものを教えてください。
影山 料理が好きで、普段はハンバーグなどを作っています。最近はだいぶ暑くなってきたので、そうめんを毎日食べたいと思っていて。そうめんにレモンとトマトを合わせたりして、さっぱりしたものをよく作っています。料理で言うと、最近買ってよかったと思うものがあって。砥石がダイヤモンドの電動の包丁とぎ器がすごくいいんです! もっと研ぎたいという欲が出てきて、出刃包丁とフルーツナイフまで買ってしまいました……って、やっていることがちぐはぐなんですけど(笑)。まだフルーツは切れていなくて、ひたすら切れ味だけが増しています(笑)。

こんばんは、朝山家です。
ABC テレビ・テレビ朝日系 毎週日曜日 後10・15~
※TVer、U-NEXT、Prime Videoでも配信中
(STAFF&CAST)
脚本:足立 紳
原案:足立 紳、足立晃子
監督:足立 紳、小沼雄一、安村栄美
チーフプロデューサー: 山崎宏太
プロデューサー:寺川真未、宮本日奈美、加藤伸崇(S・D・P)、坪ノ内俊也(R.I.S Enterprise)
協力プロデューサー 足立晃子
出演:中村アン、小澤征悦、さとうほなみ、小島 健(Aぇ! group)、影山優佳、渡邉心結、嶋田鉄太、土佐和成、佐野弘樹、河井青葉、丸山智己、宇野祥平、松尾 諭 ほか
(STORY)
朝山家は、脚本家として売れている夫の賢太(小澤)、夫のために事務所を設立し社長を務める妻の朝子(中村)、高校1年生の長女・蝶子(渡邉)、小学6年生の長男・晴太(嶋田)の4人家族。賢太が自分の承認欲求を満たすためエゴサーチに没頭する一方で、朝子はそんな賢太を映画監督としてデビューさせるため、家庭と仕事を切り盛りしながら営業にいそしんでいた。
撮影/中村 功 取材・文/橋本吾郎