マジメに働いているのに報われない! チームビルディングのプロが組織のイヌたちに贈る「すこやかに働くための“役割分担”のヒント」

ink_pen 2026/1/6
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マジメに働いているのに報われない! チームビルディングのプロが組織のイヌたちに贈る「すこやかに働くための“役割分担”のヒント」
水谷花楓
みずたにかえで
水谷花楓

出版社勤務、受付嬢、社長秘書を経て、フリーライターに。男・女・女の3児の母。子育てメディアをはじめ、美容、健康、旅行、ビジネスなど多ジャンルの媒体で記事を執筆する一方、企業の広報業務なども行っている。

「会社への不満やモヤモヤを解消するには、組織内に共存する『イヌ』タイプと『ネコ』タイプがうまく役割分担をすることが重要です」。楽天大学の創始者として5万社の成長を支援してきたチームビルディングのプロ・仲山進也さんは、そう語ります。

前編の記事では、イヌとネコがすこやかに働くためのヒントについて伺いました。後編では、楽天創業期からのメンバーで、同社唯一の兼業自由・勤怠自由な正社員でもある仲山さん自身のエピソードを交えながら、会社の成長ステージにおけるイヌとネコの役割分担についてお伝えします。

著:仲山進也
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「イヌの皮をかぶったネコ」ってどういうこと?

――私たちは「イヌ」タイプと「ネコ」タイプの2種類に分かれる、とのことですが、改めてそれぞれの特徴から教えていただけますか?

「イヌは『社命を第一に考え、組織に忠実に働く人』のこと。ネコは『価値を第一に考え、自分に忠実な働き方をする人』です。ちなみに、本来はネコなのに、イヌとして働いている状態を『イヌの皮をかぶったネコ』とか『隠れネコ』と呼びます」

――なるほど、イヌの皮をかぶったネコ! ちなみに、仲山さんご自身は……

「ネコですね、イヌ成分は低めのタイプ。僕が最初に入ったのが大手の電機メーカーだったんですが、言われたことをちゃんとやっていたのでイヌとしてふるまっていたつもりです。ただ、上司から『仲山、また口がとんがってるぞ』と言われてました。納得いかないことがあると顔に出ちゃってたんですね」

――「イヌの皮をかぶりきれていないネコ」だったわけですね(笑)。どういう感じのモヤモヤを抱えて仕事をされていたのでしょう?

「自分なりに工夫してやりたいタイプなのですが、分業化が進んだ大きな会社だと、全体像がわからないから、工夫したつもりのことが『余計なことをするな』と言われたりします。いま思えば、当然なんですけど(笑)。それで全体像が把握できる小さな会社で働いてみたいと思って転職した先が、社員20人の楽天でした」

組織の成長ステージによって入れ替わる、ネコとイヌが輝くタイミング

――転職後は、心地よく働けましたか?

「はい、ネコ全開で(笑)。同僚も僕と同じように、大きめの会社に入ったもののしっくりこず、イヌの皮をかぶりきれなかった人たちの集団だったように思います。楽天市場の立ち上げ期で、カオスな状況をみんなで試行錯誤しながら『どうすれば、お客さんにもっと喜んでもらえるかな』と言いながら、毎日わちゃわちゃしていました」

――ということは、多くのスタートアップ企業は、ネコ中心に運営しているのでしょうか?

「それは成長ステージによって変わります。いわゆる成長カーブ(Sカーブ)の導入期では、わちゃわちゃしながら商品・サービスをブラッシュアップしていく段階で、それが得意なのはネコタイプです。

↑企業が成長するフェーズによって、それぞれの活躍の場が訪れる。

それが軌道に乗ると成長期に入って、急に伸び始めます。業務量が急増するので、いままでのオペレーションが回らなくなってしまい、トラブルが起こり始めます。人が足りないので採用するから、新人が増えます。

そのあたりで、誰かが『そろそろマニュアルをちゃんとつくったほうがよくない?』と言い出すわけです。でも、ネコタイプはマニュアル嫌いなので、『いままでもマニュアルなしで臨機応変にやってきたから、それでよくない?』とか言いがちですが、ネコがそのまま主導権を持ち続けて進むとどこかで特大のトラブルが起こりかねません。

そこで活躍するのが、イヌタイプの人です。マニュアルを整備して、ミスなく運用するのはイヌの得意技なので。実際、僕が楽天で体験したのは、会社が成長期に入った頃に“イヌタイプ”の人たちが入社し始め、社内の仕組みを整えてくれたことでした。それによって、アクセルをベタ踏みした状態で成長期を進んでいくことができたように感じています。つまり、ネコからイヌへのバトンリレーがスムーズに行くためには、『お互いの強みに応じた役割分担が大事だよね』という相互理解のある組織文化をつくることが重要なのです。

こうしてイヌがオペレーションを整備することで成長期を乗り越え、成熟期になると、衰退しないためには『次のS字の波に乗り換える』ことが大事になります。いわゆる新規事業の立ち上げです。これはネコの得意技なのですが、ここでイヌが主導権を持ち続けてしまうと、『これでミスをしないで成功できるのか』とか『新規事業チームは数字をつくらずに遊んでいるだけだ』とか『社内ルールと違うやり方をしているのはけしからん』みたいに、Sカーブ乗り換えにブレーキを踏みまくることになってしまいます。

――イヌとネコの視点があるだけで、新規事業がうまくいかない理由が明白になりますね! 

「そうなんです。ほかにも、イヌのエースを新規事業のリーダーにしてしまってうまくいかないパターンもありますね。そういう意味で大事なのは、『イヌとネコは強みが違うので、評価基準は会社として統一するのではなく、2つあってもいいよね』という共通理解をつくることです。

僕はこれまで、組織内ですこやかに働くコツを『ネコの立場』で語ることが多かったのですが、イヌとネコの相互理解が進まなければ組織全体としてはうまくいきません。今回の新刊、通称『ネコトレ(ネコ的思考・行動トレーニング)本』がその一助となるために、一緒に働く人たちで読書会というか読み合わせをして、話し合う機会をつくっていただけるとよいのではないかと思っています」

答えを提示せず、お題を出す。仲山流・ネコトレの極意

――いまうかがったヒントのほかにも、仲山さんの新著には全部で25のネコトレが紹介されています。いずれも明確な答えが書かれていないのが印象的でした。なぜ、読者にお題を与え続けるのでしょうか?

「イヌタイプの人は、正解や具体的なやり方の指示を求めたがる傾向があります。でも、ポチ川(書籍内の主人公)の悩みごとは、マニュアル的な正解がないものばかりですよね。だから、『なぜ答えを教えないのか』の回答としては『答えがわからないから』となります(笑)。ただ、『考え方』次第で状況は変えられるので、その考え方をお伝えしつつ、実践しやすいお題の形にしてお渡ししています。

――たしかに、ネコトレのお題には、『自己紹介で会社名を名乗るのをやめてみる』『メールの宛名を“様”ではなく”さま“にする』といった実践しやすいものが多いですね。あれらのお題は、最初から決まっていたものなんですか?

「いえ、『GetNavi web』の連載を進めるなかで、担当編集さんたちと『このお題だと抽象的すぎて実践しにくそう』などと話し合って考えました。毎回、このミーティングが楽しかったんですよ!」

――最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

「今回は組織で働く前提でお話ししましたが、ネコトレは会社員だけでなく、フリーランスや自営業、学生など、社会に属するすべての人に当てはまると思います。イヌとネコの相互理解が進むと、世の中はもっとおもしろく、もっとスムーズに物事が進んでいくと思っているので、今回の著書が、その一助になればとてもうれしいです」

(撮影:泉山美代子)

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