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2022/12/26 20:30

大食い女王・もえあずが語る。『元祖!大食い王決定戦』のスゴすぎる舞台裏と、新たな大食い業界とは?

アイドルグループ「エラバレシ」のメンバーとして活躍しながらも、「元祖!大食い王決定戦」で3連覇を成し遂げ、圧倒的な大食い女王となった、もえのあずき。通称・もえあず。彼女はいかにして、大食い女子界のトップスターにまで上り詰めたのか。実はきっかけは、つんく♂主催の『アイドル大食い選手権』だったとか…!その秘密を存分に語ってもらう。

 

また、最近は、YouTubeでの「大食い動画」ブームもある中、新型コロナの影響もあり『元祖!大食い王決定戦』ほか大会が少なくなってきている現状もある。大食い界の今後についても、展望を聞いた。

 

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:kitsune)

もえのあずき:東京・秋葉原にある「AKIHABARAバックステージpass」から生まれたアイドルグループ「エラバレシ」のメンバー。大食いアイドルとして多くの番組で活躍し、テレビ東京「元祖!大食い王決定戦~爆食女王戦~」にて3連覇を果たした爆食女王

 

危険すぎて制限時間短縮? 初出場から過酷な大会を経験
「炎天下の中、アツアツのカレーパンを食べました(笑)」

――もえあずさんが、初めて『元祖!大食い王決定戦』に出場されたのは、いつでしょうか?

 

もえあず 2013年の男女混合戦です。当時はまだ、大食いの大会については何も知らない状態だったのですが、テレビに映れるぞ! という気持ちで大阪予選に出場しました。通常の場合、予選の制限時間は45分というルールがあるのですが、その日は真夏日で、さすがに猛暑すぎて危険だということで30分勝負になったんです。しかも、その炎天下の中、アツアツ揚げたての黒ニンニクカレーパンを食べました(笑)。

 

――初出場からなかなかハードでしたね……!

 

もえあず すごいことさせるな~と思いました。結果は、ギリギリ本選に出場できない4位だったんですが、テレビに映れたので、それだけで満足でしたね。その時は、大会でこれ以上勝ち進めるなんて思ってもみませんでした。

 

――つづいて出場した2014年『元祖!大食い王決定戦 全国縦断 新女王発掘戦』では、3位という結果を残して、話題になりました。

 

もえあず 私、その時かなりのラッキーガールだったんです(笑)。予選の食材が、青森の郷土料理・鱈のじゃっぱ汁だったんですが、私が世界一好きな「白子」が入っていて! それで1位通過できて。ここぞという時に、好きなものが出てくるので、ラッキー!と思っていたら決勝までいけちゃいました♪

 

――それは、すごいです。出場初期から結果を残されていたので、大会を研究したり、調整して臨んでいたのかと思っていました。

 

もえあず 実はそんなことなく、大食いチャレンジもやったことがないくらい、何も知らなくて……。 本当に「テレビに出たい」「もっと映りたい」という気持ちだけで、勝ち進めました。ありがたいことに、その大会で認知してくれた方が多くて、その後は大食いのお仕事ももらえるようになりました。

 

――お仕事として「大食いチャレンジ」や「デカ盛りグルメ」を食べる機会が増えていったかと思いますが、回数を重ねて気づいたことなどはありますか?

 

もえあず いろいろな食材を食べるようになって、だんだんと時間配分が分かってきましたね。最初は1皿何秒で食べて、後半はペースが落ちるけど何秒を守ろう……といったマラソンを走るような感覚で食べることにしているんです。

 

――なるほど。出てきた食べ物によってペース配分を判断しているんですね。

 

もえあず 本番は、直前になるまで食材が分からないんですが、1回はこの食材くるかな、とか、揚げ物が来たらどうするか、ラーメンは必ずくるから……とか事前に予想を立てるようにはしています。

 

「調整はあまりしない」タイプ。
大会期間中は〝アルコール禁止〟のルールもあるけど……

――大会に向けて調整はするんですか?

 

もえあず 調整はあんまりしない方ですね。実は、海外大会などで数日遠征に行く時は、大会の最終日しかお酒飲んではいけないという、ちょっとしたルールがあるんですよ。パフォーマンス力が落ちる可能性があるからなのか。でも、そこはマイルールで、ちょっぴり飲んだりしていました(笑)。

 

――もえあずさんは、お酒お好きですもんね!

 

もえあず 好きなんです~。だから、そのほうが、緊張がほぐれて自分としてはよかったので。なので、そういった意味で、精神面の調整はしていましたね。

 

――ちなみに、本番中のメンタルの調整や、やる気を保つ方法は何かありますか?

 

もえあず 方法とは少し違うかもしれませんが、オーディエンスの味方を増やすことは大切だと思っていました。「もえあず、がんばれ!」という空気に持って行きます。

 

――どのようにその空気を作っていたんですか?

 

もえあず 試合中にマイクを向けられたら、しっかりコメントをしたり、声援に答えたりしていました。「がんばれ!」と言ってもらえるとやる気も出て、嬉しいです。男女混合戦だと女子1人の試合などもあって、けっこう応援してもらえました♡

 

大食いとアイドルの両立、一番キツいのは……
「筋肉がついて、顔が四角くなっちゃって……」

――もえあずさんは、男女混合戦でも度々好成績を残していらっしゃいますよね。それでも、男女差を感じる部分は何かありますか?

 

もえあず 喉や顎の力の差はあるので、不利ではありますよね。顎と嚙む力、もしくは噛まなくても飲み込める強靭な喉があれば、強いと思います。海外の強い選手は、塊のままスルスルとステーキを飲み込んじゃいますから。

 

――すごいですね……。もえあずさんはどちらのタイプですか?

 

もえあず 私は噛まないと飲み込めないので、とにかく噛みまくります。テレビでは、なぜか顎弱いキャラになっているんですけど、実際にはそんなに弱くないと思っていますよ(笑)。ただ、大会に向けて顎を鍛えようとすると、顔の形が変わっちゃうんですよね。

 

――え! そんなにすぐ変わるものなんですか。

 

もえあず 変わります~。エラのあたりに筋肉がついて、顔全体が四角になってしまうんですよ。当時はめっちゃ鍛えていましたけど、アイドルとしてのお仕事もあるので輪郭が変わるのが、すっごく嫌で……!

 

――大食いとアイドルを両立するうえでは、そういった悩みもあるんですね。

 

もえあず どちらのお仕事も大好きなので、それ自体は苦ではなかったのですが、顔が変わってしまうのは辛かったです(笑)。でも、自分を〝広告塔〟だと思っていたので、私が少しでも売れたらグループも売れるぞ! と考えて両立できるようにしていました。

 

伝説の大食い女王・赤坂尊子に弟子入りも。
優勝した瞬間、「売れた!と思いました!(笑)」

――爆食女王に輝いたのは2015年の『元祖!大食い王決定戦〜新爆食女王襲名戦〜』ですが、その時は勝算はありましたか?

 

もえあず 自分でも内心は勝てるか不安な大会でした。でも、ちょうどそのころに、デカ盛り系のお仕事をたくさんやっていて、知らず知らずのうちに大食いの実力がついていたのかもしれませんね。最後は、計量(お皿に残っている量の差)で優勝することができました。

 

――優勝した瞬間のお気持ちは覚えてますか?

 

もえあず 優勝はもえあず! となった瞬間に、「売れた!」と思いましたね(笑)。全然レベルは違うと思うんですが、M-1で優勝した芸人さんの気持ちのような!

 

――あはは! それは優勝した方にしか分からない喜びです。

 

もえあず 人生が変わりましたね。実は、その大会の前に、元祖大食い女王の赤阪尊子さんに弟子入りしていたんです。当日は、赤阪さんとのツーショットを待ち受けにして臨んだので、そのおかげかもしれません。

 

――赤阪さんとは、どのようなトレーニングをされたんですか?

 

もえあず なぜかプールで泳がされました(笑)。私がカナヅチだと言ったら、精神力を鍛えなきゃいけない、というお話で。めちゃくちゃ辛かったんですよ~。それとラーメン10杯チャレンジなどの練習もしながら、ご指導いただきました。

 

――赤阪さんからは、何かアドバイスはありましたか?

 

もえあず 「結局辛いのはみんな一緒だから、辛い時にもう一歩進むんや。アカンと思っても、ぐっとこらえてもう一口行くんや。そこが差や」と言われました。

 

――素敵なお言葉です。

 

もえあず かっこいいですよね。大食いだけでなくて、その後の人生のいろんな時に思い出しています。生き方のアドバイスとしても、本当にありがたいお言葉をいただけたと思います。

 

名実況MC・中村有志との思い出。
試合後にも選手たちの食欲が止まらず……「もう勘弁してくれ!」

――その後、もえあずさんは『女王戦』で3連覇を成し遂げます。プレッシャーを感じることはなかったのですか?

 

もえあず 2回目以降は「負けられない」という気持ちで臨みました。その時は、YouTubeなどもまだ流行していなくて、お仕事や招待イベントで大食いできる機会が、普通の方より多いことも自信につながっていましたね。勝てると思ってやっていたんです。

 

――さすがです! ちなみに、2回目の「爆食女王」に輝いた大会では、司会の中村有志さんが勇退されましたよね。

 

もえあず 有志さんにも、本当に感謝しかないですね。選手のみなさんのニックネームをつけたり、キャラ付けをしてくれることで大会を盛り上げてくれていたので。それに、いつも選手のことを尊重してくださる方でした。大食いができる人って、一般の方からしたら、ビックリ人間的な部分もあると思うのですが、そこを変わり者扱いせず、いつも新鮮に驚いてくれて「すごい!」とたくさん褒めてくださいました。

 

――中村さんの実況でさらに大会が面白いものになっていたと思います。

 

もえあず そうなんです。試合中、食べていると無言になる時間が大半なので、そこをどうエンターテイメントにするかは、司会の方のお力があってこそだと思いますね。

 

――中村さんとの思い出は何かありますか?

 

もえあず 海外の大会などで、打ち上げに行くことがあるんです。選手のみんなは、試合後でも永遠と食べ続けているので、いつも有志さんは「もう勘弁してくれ!」って言っていました(笑)。

 

――あはは! 司会を勇退されたあとは、お会いになりましたか?

 

もえあず MAX鈴木とアンジェラ佐藤さんと大食いイベントに出た時に、司会をやっていただきました。やはり有志さんに実況してもらうと、闘っていた現役時代が蘇ります。会場もいつも以上に盛り上がっていましたね。

 

――大食いの大会は、MCの方の存在も重要なんですね。

 

つんく♂主催の『大食いアイドル選手権』で、もえあず覚醒!
「つんく♂さんがいなかったら、私は存在してなかったと思います」

――そもそもなのですが、もえあずさんが大会などに出場する前から、たくさん食べるタイプだったんでしょうか?

 

もえあず 食べる方だと思っていましたが、自分はずっと世の中によくいる「私食べられます!」とアピールする女の子と同じレベルだっと思っていたんです。まさか全国大会レベルだとは思っていなくて(笑)。

 

――他の人より食べられると気づいたのはいつですか?

 

もえあず つんく♂さん主催の『大食いアイドル選手権』で優勝した時ですね。そこで〝自分は意外と食べられるんだ〟ではなくて、〝本当にみんな食べないんだ!〟って思いました。カルチャーショックでした(笑)。みんな実際は食べられるけど、女の子だから「もうお腹いっぱい」って言ってるんだと。いまだに疑ってますよ。牛丼一杯でお腹いっぱいだなんて!

 

――!(笑) あと一口が食べられないって言う方とか、いらっしゃいますよね。

 

もえあず そうそう! 何が出ても一口残してるのとか、みんな食べられないアピールしてるんだと信じていました。世の中の人は、みんな我慢して生きていると思っていて、食べられるけど「お腹いっぱいです。ごちそうさま」っていう〝儀式〟的なことなんだと。それが礼儀だと思っていました……。

 

――『大食いアイドル選手権』で他人より食べられることに気づいて、その後、本大会に挑戦したという流れでしょうか。

 

もえあず そうですね。つんく♂さんに「本家に出れるよ」と言っていただいたんです。あのお言葉がなかったら「大食いアイドルもえあず」は誕生していなかったですね。

 

――さすが、つんく♂さんですね。すごい。

 

もえあず その後、テレビに出始めてからも「歌を続けなさい」って言ってくださったのも、つんく♂さんでした。「いろいろ言われるかもしれないけど、歌手を続けるのが大切だ」と助言していただいたんです。そのお言葉があって、今もアイドルとして歌えていて、それが幸せなことなので、本当につんく♂さんには感謝しています。

つい最近も「元気?」って連絡してくださって。たくさんのアイドルの方を抱えている中で、いまだに私のことも気にしてくださって…。嬉しいです。

 

――見守ってくださってるんですね。

 

もえあず アイドルのオーディションを受けたのも、つんく♂さんプロデュースという文字があったからなので、つんく♂さんがいなかったら、私は存在してなかったと思います。

 

新たな世代の大食いスターが発掘されてほしい……
「大食い〝ブーム〟で終わらせたくない!」

――最近の大食い界の状況についてもお話をお聞きできればと思います。ここ数年、コロナの影響などもあり、各種大会が減っているように感じますが、YouTubeの大食い動画は依然人気を集めていますよね。何かお考えはありますか?

 

もえあず そうですね。大人数で食事する、というのはなかなか難しいことなんだと思います。ここ数年は、私も海外の大会などにも行けませんでしたので。また、SDGsの流れもあり、とにかくただただ量で競うだけでない大食いの見せ方が求められている気はします。

 

――時代の流れもあるんですね。

 

もえあず 逆に、大食いYouTubeで人気の方が増えているのは、「個人で楽しくたくさん食べる」ことに注目が集まっているんだと思います。デカ盛り系のグルメが話題になるのそうですよね。

 

――大食いジャンルの幅が広がっているとは思いますが、『元祖!大食い王決定戦』やイベントの今後というのはいかがでしょう。

 

もえあず 大会はやってほしいな、とイチファンとして思っています。まず、新人さんが出る機会がなくなってしまうので。どんどん新たなスターの方に挑戦してもらえる環境があるといいな、とは思っていますね!大食いがひとつのコンテンツとして、ずっと盛り上がっていくには、新陳代謝が必要ですから。

 

――新たな世代の選手は見たいですね。

 

もえあず 大食い〝ブーム〟で終わらせたくないんです。さらに言えば、スポーツ、音楽、お笑い……などと一緒に〝大食い〟というジャンルで肩を並べるくらいになりたいと思っています!

 

――〝新たな世代のもえあず〟さんが出てくる可能性もありますね。

 

もえあず え~! すごい新人さんは大歓迎です。でも、可愛さでは勝ちたいな~♡なんて。

 

――次世代大食いアイドル対決楽しみにしています! では、最後に、もえあずさんの今後の目標について教えてください。

 

もえあず まず「世界のもえあず」になることが目標です。大食い、アイドルはもちろん、お着物の資格を持っていたり、日本酒が大好きだったりするので、そういったいろいろな分野から日本の良さを世界に伝えられたらいいな、と思っています。

 

――海外イベントなどが再開したら、もえあずさん一人で日本フェスができそうです(笑)。

 

もえあず やりたいです! 大食いの大会に出て、ライブをやって……とセットで遠征するのは夢ですね。そのためにも、2023年は、YouTubeなどを使って積極的に世界に発信していきたいです。

 

――応援しています。本日はありがとうございました。