“顔面凶器”の異名を持つ小沢仁志さんが「還暦記念映画」として、主演のほか、オリジナル脚本・製作総指揮を務めるハードアクション映画『BAD CITY』が1月20日(金)より全国公開。劇中、CG・スタントなしで120人を相手に繰り広げる立ち回りなど、「俳優人生、最後の無茶」に挑んだ彼がアクション映画への熱い思いなどをユーモアたっぷりに語ってくれました。
【小沢仁志さん撮り下ろし写真】
今の時代に合ったアクション映画に、昭和のイデオロギーをブチ込んだドラマ
──小沢さんが主演し、日本映画界におけるガン・アクションの歴史を変えた『SCORE』(1996年)から四半世紀が経つなか、「還暦記念映画」と謳われた本作の企画の発端は?
小沢 『SCORE』のときから、俺がずっと背負ってきている悔しさがあって、それは日本の映画業界では、なかなかアクションというジャンルが定着しない、予算の問題もあって作りづらいということ。それで俺ももう60歳になるから、「そろそろ新たな花火を打ち上げたい!」と思ったのがきっかけ。それで今回は『SCORE』みたいな銃撃戦ではなく、今の時代に合ったアクション映画にして、昭和のイデオロギーをブチ込んだドラマを盛り込むのがいいかなって。そうすれば、年配の人にとって懐かしさを感じられるし、若いやつが観てもかっこいいと思えるし。だから、「還暦記念映画」というのは、後から付いた冠だね(笑)。
──本作では、小沢さん演じる主人公が、いわゆるヤクザや殺し屋ではなく、強行犯の警部役である理由は?
小沢 俺がいつも演じているようなヤクザ役だと、周りからVシネマのように見られてしまう恐れもあったから、あえて変えてみたんだ。あと、日本映画でも韓国に負けない作品を作れるということを証明したかったことも大きいね。マ・ドンソクが主演した『犯罪都市』や『ザ・バッド・ガイズ』などを意識しつつも、リアリティと無国籍感を出してみた。だから、『BAD CITY』にはヤクザも出てくるけれど、メインは警察と韓国マフィアとの戦いになっている。
次世代の人間をしっかり育てたいという気持ちがあったからね
──『SCORE2 THE BIG FIGHT』(1999年)では主演のほか、自ら監督(OZAWA名義)をされていましたが、本作では脚本と製作総指揮のみ。監督は『マンハント』や『ベイビーわるきゅーれ』などのアクション監督で知られる園村健介監督に任せています。
小沢 次世代の人間をしっかり育てたいという気持ちがあったからね。彼はとても優秀で売れっ子のアクション監督だけど、アクションシーン以外に関しては監督に合わせなきゃいけないストレスもあったと思うんだ。だから、彼には自分のやりたいことを思う存分やってほしい気持ちもあった。脚本と一緒に製作総指揮のクレジットも入っているんだけど、監督には現場で一度しか口出ししなかったよ。唯一言ったのは、クライマックスの120人との立ち回りを撮っているとき、時間の都合で次の階段のシーンを欠番(カット)にしようとしたんだよね。だから、「欠番は許さん」と! 園村監督は山口祥行の紹介で繋いでもらったから、ヤマにはしっかりラスボス役で出てもらっているよ(笑)。
──大人気シリーズ『日本統一』主演の山口さんをはじめ、豪華なキャスティングも見どころの1つですね。
小沢 俺はリリー(フランキー)さんと共演するのを切望していたし、(かたせ)梨乃姐の側近には(本宮)泰風みたいな男がいた方がいいと思ったしね。それで刑事役の三元(雅芸)や殺し屋役のTAK∴(坂口拓)は、これからのアクション映画の流れを作っていく人材としては必要で、ちゃんと表舞台でやってほしかったからね。それで、「還暦記念映画」の冠が付いたから、ヒデ(中野英雄)とかカズ(小沢和義)が「1シーンだけでも、エキストラでも出してくれ」と言ってきて(笑)。だから、脚本に役を足したし、あえて観ている人がワクワクするドリームマッチも用意したんだ。今回は、俺にとって「今でも『SCORE』みたいな奇跡を起こせるのか?」というチャレンジでもあったけど、一人一人がとんでもない熱量を出してくれたと思うし、それが画面から溢れ出ているんだよね。
ハリウッドでもできないことをやっている
──そんな濃ゆいメンバーが集まった撮影エピソードを教えてください。
小沢 撮影中は脳内にアドレナリンが出っぱなしで、リミッターがブチ切れていたから、どのシーンが大変とかなかったね。ただ、製作総指揮の立場だから、出演としての出番がない日もリリーさんや梨乃姐に付いて、現場にいたから、休みは撮休の1日だけ。終わっても、あと1週間は動けるかもと思っていたし(笑)。あと、福岡県の人たち、特に中間市は全面協力してくれたのはありがたかったね。デモ隊のエキストラなども地元の人で、市長辞任を求めるプラカードも、皆さんの私物だったりするし(笑)。そこまでお世話になったから、福岡では去年の12月から先行上映しているんだよね。
──この後、全国公開を直前に控えた心境を教えてください。
小沢 1月からの全国公開は、『日本統一』のファンの若いお姉ちゃんも巻き込んで、福岡以上に盛り上がってほしい。東京でのメイン館は『SCORE』が上映されたときと同じ新宿ピカデリーということで、運命を感じているしね(笑)。あと、もう海外の映画祭にも出ているし、海外のマーケットでも売れている。メインのキャストが吹き替えなしで戦うとか、ハリウッドでもできないことをやっているから。どんどん外に出て行って向こうでも受けてほしいし、やっぱり韓国の人にも観てほしい。賞なんて獲らなくていいからさ!
若いお姉ちゃんに恋をし、父親とかに見られないように身体を鍛えること
──撮影現場などに必ず持っていくモノがあれば教えてください。
小沢 台本ケースは必需品だね。二十歳ぐらいのとき、電車で台本を読んでいて、周りにタイトルが丸見えなのが嫌で買ったのが、最初のきっかけ。『日本統一』は3作分が1冊になった分厚い台本だったりするし、雨に濡れても大丈夫な固めのやつの方がいい。今使っているのは5年モノで、あえてシールを貼ったりして、どこにあるか分かりやすくしているね。あと、ジッポーライターはすぐになくすから持たない主義だったけれど、娘たちが「ダディっぽいから」と言って還暦祝いでくれた『紅の豚』のジッポー。紙タバコにジッポーのオイルは最高に合うし、さすがにこれは手放せないね(照)。
──還暦になっても、そのパワフルさを維持できる理由は何でしょうか?
小沢 あと何年生きられるか分からないから、タバコをやめるつもりはないし、夜は炭水化物をあまり食べないけど、食事も好きなものを好きなだけ食べているからね。あとは若いお姉ちゃんに恋をし、一緒に歩いているときに父親とかパトロンに見られないように身体を鍛えること。仕事のために、トレーニングなんてしないよ! 身体作りに関しては、毎日の歯磨きみたいにしないと気持ち悪いから動いているけど。
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BAD CITY
2023年1月20日から新宿ピカデリーほかにて公開
【映画「BAD CITY」よりシーン写真】
(STAFF&CAST)
製作総指揮・脚本:OZAWA
監督・アクション監督:園村健介
主題歌:クレイジーケンバンド「こわもて」(doublejoy international/UNIVERSAL SIGMA)
出演:小沢仁志
坂ノ上 茜、勝矢、三元雅芸
中野英雄、小沢和義、永倉大輔
山口祥行、本宮泰風、波岡一喜、TAK∴
壇蜜、加藤雅也、かたせ梨乃、リリー・フランキー
(STORY)
ある夜、「犯罪都市」の異名を持つ開港市に縄張りをもつ桜田組の組長が死体となって発見された。それは、韓国マフィアの仕業であった。その韓国マフィアの幹部・金数義(山口祥行)が密談していたのは、巨大財閥である五条財閥の会長・五条亘(リリー・フランキー)。五条が無罪となった判決には必ず裏があると踏んでいる検察庁検事長の平山健司(加藤雅也)は、公安0課の小泉香(壇蜜)を使い、秘密裏に特捜班を結成。メンバーは、熊本(勝矢)、西崎(三元雅芸)、野原(坂ノ上茜)、そしてもう一人…ある事件を起こした容疑で拘置所に勾留中の元強行犯警部・虎田誠(小沢仁志)である。
果たして虎田たち特捜班は、五条を検挙することができるのか?
「真の悪の存在」や「裏切り者」は誰なのか?
欲望が渦を巻くこの街で繰り広げられる、欲望の果てに見える景色とは―。
© 2022「BAD CITY」製作委員会
撮影/映美 取材・文/くれい響