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音楽
2016/11/16 19:40

キャンディーズ「インスピレーション・ゲーム」で到達したコーラスグループとしての完成形

ギャランティーク和恵の歌謡案内「TOKYO夜ふかし気分」第3夜

みなさんいかがお過ごしですか? ギャランティーク和恵です。めっきり冷たくなりましたね……。と、ここで早速、アイドルデュオ・キャッツ★アイの「めっきり冷たくなりました」(1977年リリース)という曲を紹介したくなるのですが、あまり話が広がらなさそうなのでやめておきます。

 

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、ワタシは「星屑スキャット」という3人組のグループをやってまして、メンバーは、ミッツ・マングローブさん、メイリー・ムーさん、そしてワタシ、みんないわゆる「女装」スタイルで活動している3人が集まって結成されました。さらに共通していたことは、みんなそれぞれ歌謡曲が好きで、歌うのも好きだったということ。でも、それ以外はみんなバラバラ。見た目も性格も着たい服も好きな男もバラバラ……(いや、むしろ好きな男の話なんか一切しなかったかな)、歌いたい歌だってみんなバラバラでした。

↑星屑スキャット(メイリー・ムー、ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵)
↑星屑スキャット(メイリー・ムー、ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵)

 

最初の頃、新宿2丁目で始めたイベントでは、毎月季節感やテーマを設けていたのですが、「雨」となればミッツさんは城之内早苗さんの「あじさい橋」を歌うし、メイリーさんは三善英史さんの「雨」を歌うし、そしてワタシは渚ゆう子さんの「雨の日のブルース」を歌うわけです。おかげでそんなにケンカすることもありませんでしたが、一度だけ、2月のイベントの時にワタシが南沙織さんの「早春の港」を選んだら、メイリーさんが「それは2月じゃなくて3月に歌うもんでしょ!」と本気で叱られたことは、いまでもトラウマになっています。そのくらい、みんなそれぞれ好き勝手に、でもこだわりを持って選曲していたのです。

 

いまの星屑スキャットをご存じの方は、コーラスグループとしての認識があるかと思いますが、むしろ最初はグループというわけでもなく、好きな格好をして好きな歌を歌う3人という感じでした。しかし活動して1年ほど経った頃、札幌のゲイ・パレードに星屑スキャットを呼びたいというオファーを頂いた時、あ、ワタシたちってグループ扱いなんだ……とその時初めて気付いたのでした。でも、3人で一緒に歌う曲なんていままでやったことはなかったですし、第一、マイクが3本もない小さなクラブで活動してましたから、3人でハモることも当然なかったわけです。そこで参考にしたのが、皆さんにとってもよくご存知の「キャンディーズ」でした。

 

【今夜の歌謡曲】

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(提供:ソニー・ミュージックダイレクト)

03.「インスピレーション・ゲーム」キャンディーズ
(作詞/阿木燿子 作曲/穂口雄右)

 

キャンディーズのデビュー当時の衣装をそのままコピーして作ってもらい、見た目として3人組であることをしっかりアピール。そして、その名もずばり「キャンディーズ」という自己紹介の歌を、そのまま名前の部分だけ変えて歌ったこともありました。ランちゃん→「ミッツ」、スーちゃん→「メイリー」、ミキちゃん→「和恵」という感じで。奇遇にも、どこかキャラクターや見た目が似てるような気がするのです……! 冷静で大人びたランちゃん、ぽっちゃりした体型で愛嬌のあるスーちゃん、細めで縁の下の力持ち的役割のミキちゃん。ね? どうですか? 似てるでしょ(押し付けがましい)?

 

それからたくさん、キャンディーズの曲をカバーしました。有名な曲だと「年下の男の子」「危ない土曜日」「哀愁のシンフォニー」などなど。「銀河空港」「どれがいいかしら」なんて、あまりメジャーではない曲もやりました。「どれがいいかしら」では、男の子を指差して「アッチにしようかな?(ミッツ)」「コッチにしようかな?(メイリー)」「両方にしようかな!(和恵)」(その後ふたりにスリッパで叩かれて)「パッパ〜♪」という宴会芸みたいなことまで挑戦し、キャンディーズの持つ「バラエティ感覚」までも身につけようとしていました。

 

しかしこの「どれがいいかしら」という曲は、いくら冗談みたいな歌だといっても、コーラスワークが複雑で非常に難解なのです。アイドルグループだから、このくらいのハモリの楽曲にしておきましょう、というヌルい感じではなく、まず楽曲ありきでそれにキャンディーズ3人が意地でもコーラスワークで挑む、という感じがします。アイドルというよりは、完全にコーラスグループです。もともとハモリが得意だったワタシたち星屑スキャットは、そんなキャンディーズのコーラスワークを教則本のようにして、ステージの場数を増やしていきました。

 

キャンディーズが解散する1978年4月に行われたファイナルコンサートを収録したLP「CANDIES FINAL CARNIVAL Plus One」が解散後にリリースされたのですが、2枚組のそれにプラスもう1枚、新録されたLPが付いていました。その中の1曲「インスピレーション・ゲーム」は、ワタシにとって、キャンディーズがアイドルから大人として洗練され、解散とともに到達したコーラスグループとしての完成形なのでは、と思っています。いつか星屑スキャットでもカバーしてみたい……そんな気持ちにもなる曲です。これも相当難しそうですけど。

 

星屑スキャットがデビューしたのが2012年。誰かの曲をカバーをしようという話になり、この流れだったら普通「キャンディーズをやろう!」なんて話になりそうですが、ここは3人一致で「キャンディーズだけはやらないでおこう」と決めました。なぜって? それは、侵してはいけない領域だと、ワタシたちなりに判断したからです。キャンディーズファンはいまでもたくさんいらっしゃいますし、みなさんぞれぞれに思い入れもあるかと思います。そんな皆さんにとって美しいキャンディーズの思い出を、女装した妙齢のオジさん3人で汚すわけにはいきませんから……。

 

<和恵のチェックポイント>

1978年にリリースされた2枚組ライブアルバム「CANDIES FINAL CARNIVAL Plus One」に入っている新録LPのなかの1曲。1977年に出したシングル「わな」以降、プロデューサーが酒井政利さんに代わり、大人路線へ脱皮して起用されたのが、酒井さんの右腕でもある作詞家の阿木燿子さん。彼女の描く、女性の持つ強さや潔さ、そして静かな狂気と情念の世界がキャンディーズと化学反応を起こしています。

 

彼との会話が途切れた空白の時間、心の中でひとり連想ゲームをする女。ただそれだけの歌なのに、2人の行き詰まった関係がうかがえてしまう……。そんな状況のなかで、ポツポツと言葉を並べて連想ゲームをする女の静かな狂気にゾクっとします。「その気にさせないで」などを作曲した穂口雄右さんの持ち味でもあるソウルフルなアレンジも絶品。

 

当時の歌番組出演時の映像や、伝説の解散コンサートの全50曲を完全収録した5枚組DVD-BOX「キャンディーズ メモリーズ FOR FREEDOM」も要チェック!

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「キャンディーズ メモリーズ FOR FREEDOM」
2万円(税抜)
DVD5枚組/32ページブックレット付き
※Sony Music Shop、TBSishop専売商品となります

 

【INFORMATION】

「星屑スキャット – BACK IN TOWN 2016 -」
2016年11月19日(土)
時間/14:30(開場) 15:00(開演)
料金/4000円(with 1 drink)

 

2丁目生まれの濃厚三人娘・星屑スキャットが、気位を高くして1年ぶりの里帰り! 家庭を持たない彼女たちのアットホームなステージを、お馴染みのヒット曲とともに至近距離でご堪能頂ける土曜の昼下がりです。

出演/星屑スキャット
ミッツ・マングローブ
ギャランティーク和恵
メイリー・ムー

ご乱心H1_H4
↑星屑スキャットのシングル「ご乱心」(発売中:日本コロムビア)

 

会場/AiSOTOPE LOUNGE
東京都新宿区新宿2-12-16 セントフォービル1F
TEL : 03-6380-1504

JR新宿駅東口より徒歩15分
丸ノ内線・副都心線・都営新宿線 / 新宿3丁目駅C8出口より徒歩3分