学研のメンズ&カルチャー誌の編集者が「欲しい!」と思った商品を、日本のメーカーや職人とコラボしてプロデュース・販売する「ホン・モノ・ケイカク」。今回は、abrAsus(アブラサス)の「薄い財布 イタリアンレザーver.『シエナ』」をご紹介します。
「アーティスト」たちが創る美しき革
ホン・モノ・ケイカクと関わるようになって、素敵な製品を作り続ける何人もの職人さんやデザイナーさんとお会いすることができました。取材を続けるなかで、異口同音、続けざまに発せられて驚いた言葉があります。
それは…
「イタリアンレザーはやっぱり違うね」 という言葉。
評価するポイントやお気に入りとして挙げている素材など、それらの主張には異なる部分もあるのですが、総じて皆さん、「イタリア製の革素材は素晴らしい」とおっしゃるのです。
使う原皮の質がいい、ということがまずひとつ。そして何より、タンナーの鞣しが決定的に違うのだと言います。発色、滑らかさ、しなやかさ、経年変化の良さなど、たしかにイタリアンレザーにしか感じられない「美」があります。ある日本の財布職人さんは「イタリアの小規模タンナーの職人は、職人というより、感覚がアーティストに近い」とその美意識の高さを称えていました。
無数の素材に触れ、加工し、製品として仕上げる作り手の皆さんが惚れ込む、イタリア産の皮革素材。その後、さまざまな素材を手にして筆者の理解が少しずつ深まるにつけ、言われたことの意味が理解できるようになりました。
イタリアンレザーを使用することで、その高い機能性で大きな話題となった「薄い財布」に、フォーマルでも使えるような上品さをプラスしたのが、この「薄い財布 イタリアンレザーver.『シエナ』」です。
透明感ある光沢を持つヌメ革「シエナ」
今回の「薄い財布」には、数多あるイタリアンレザーのなかでも、「シエナ」という革を使用しています。もともとベルトなどに使用される、わりと厚手の革なのですが、それを「薄い財布」に合わせ、薄く剥いて用いています。
シエナは、イタリア・MPG社が提供する植物タンニンレザー。適度な張りとしなやかさのバランスが良く、革内部にまで含浸したオイルが手に吸い付くような独特の肌触りを生むのが特徴です。
折り曲げた部分がやや明るく見えるのは、染みこんだオイルが繊維中を移動し、革色が変わる「プルアップ」という特性です。
また、この革の最大の魅力は、自然な色ムラのある色彩美と発色の良さ、グラデーションのある深い光沢。写真のように、色の濃淡が製品にいい「表情」をつけてくれています。
これと引き換えに、シエナはひっかき傷やアタリと呼ばれる圧迫痕がつきやすいという弱点も持つのですが、それを補ってあまりある色彩と光沢が醸し出す気品が魅力です。
革素材は時と共に、細かな傷や、使用者の手の脂を吸い込むことで、色や風合いが変化していきます。こうしたエイジングもまた、革素材の製品を持つ楽しみ。
シエナの場合、きらきらと革の表面で生まれていた光沢が、少しずつ、革の内側へと沈み込むような落ち着いたものへと変わっていきつつ、革本来が持つ艶やかさを失うことはありません。
このシエナもまた、エイジングの楽しさを持ち味とする革素材のひとつと言えます。
革の折り目や縫い目の部分にご注目。圧力がかかっている部分の色が明るく変わっているのがわかりますか? これは革に染み込んだオイルが繊維のなかを移動することで起こる「プルアップ」という特性。製品の表情を豊かにしてくれます。
おっと。シエナについて語りすぎましたが…次回は、いよいよ「財布のイノベーション」とも言える「薄い財布」の詳しい解説をお届けします!
【仕様】
●サイズ W95×H98×D7mm重さ 50g ●カラー レッド、ネイビー、ブラウン ●価格 17,800円(税込) ●素材 シエナレザー ●備考 カード収納枚数:5枚
【著者プロフィール】
MUN!
自分で使うモノは質実剛健な作りのアイテムを志向する、当店の商品開発サポーター。本業はモノ系、エンタメ誌など、数々の雑誌や書籍で執筆する文筆家。